2022年4月 2日 (土)

囲み取材

感想戦後に出口六段の囲み取材がありました。

Dsc_2279 (質問に答える出口六段)

――本局の感想。

よく勝てたなという内容でした。最初から難しい展開になってしまい、自分の実力では読みきれない局面が多々あったのですが、最後まで粘り強く指すことができました。

――終盤では(一分将棋にもかかわらず1~2秒の)ノータイムで指す場面もあった。

△5七飛のあたりは勝ちだと思っていたんですけど、服部さんも最後は粘り強いので。(先手玉は)詰むのだろうなと思いながらも、いけなかったことが多かったですね。

――タイトル初挑戦と六段昇段が決まった。

私は棋士生活4年目に入ったんですけど、これといった実績を残せていなかったので、一つ、タイトル挑戦という結果を得られたのは、自分にとって大きなものだと思っています。

――タイトル戦では藤井聡太叡王と戦う。

挑戦者になって、やっとスタートだと思うので、目の前の一局に集中して自分が成長できるようなシーズンにしたいと思います。

――第49期新人王戦(2018年)の決勝三番勝負で藤井叡王に敗れたあと、「また強くなって戻ってきたい」と話していた。

新人王戦は一瞬で負けてしまったので。新人王戦の舞台に(再び)立つことはできなかったんですけど、タイトル戦という、もっと大きな舞台で藤井さんと番勝負ができるということは、ひとつ成長できたと思います。(藤井との新人王戦は出口が)三段だったので緊張がすごかったんですけど、今日は服部さんとは普段から知っている仲でもあって、落ち着いてできたのかなと思います。

――五番勝負の意気込み。

全力を尽くして頑張っていくので応援よろしくお願いします。

Dsc_2295 

――今期の叡王戦全体を振り返って。

予選から相手が強くて激戦ばかりでした。どちらが勝つのかわからない将棋をすべて制してこれたのは自信になりました。

――キーとなった対局。

黒田さん(尭之五段)との予選は二転三転して。互いに一分将棋で無我夢中で指しました。それを制すことができて、気持ち的に手が前に延びるようになったと思います。

――飛躍の要因。

棋士になって3年、水に慣れたことが大きかったと思います。最初のほうと比べると、すごく緊張するようなことはなくなりました。

――環境の変化(1年前に北村桂香女流初段と結婚)はどのような影響があったか。

私生活では食事面とか寝る時間とか、健康に気を使うようになりました。将棋に関してはそれほど変わりはありません。

――モチベーションについては。

妻が対局を頑張っていると、自分も頑張らないといけないと思います。「観る将」ではないですけど、妻の将棋を見て応援することが増えました。そういった新しい見方ができるようになった気がします。

――北村女流初段と一緒に将棋の研究をすることはあるか。

妻の研究に加わることはあります。二人でやっているときもあります。

――井上慶太九段門下は強豪が多い。自分もタイトル戦に出なければ、といった思いはあったか。

そうですね、そんなに……。目の前の一局に集中していたら挑戦できたといった感じでした。逆にそれくらいの気持ちがよかったのかなと思います。

――藤井対策について。

対策といえるかわかりませんが、自分の力が100パーセント出るような形を目指したいと思っています。きっちりとした対策は今後考えていきます。

――強豪を倒してプロ4年目にタイトル挑戦を決めた。

3月は初めて経験する日程でした(対局数はかなり多かった)。そこを乗りきれたのは大きかったと思いますが、実感がわかないというのが正直なところです。ただ、自分は棋士になるのが遅かったので、普通の人よりも早い段階で活躍しなければいけないとは思っていました。

――プロになる前後のときから「タイトル戦に出たい」という気持ちはあったか。

そんなにすぐ挑戦というのは、自分の中ではあまり考えていませんでした。去年まではベスト8が自分の壁だったので、とりあえずはベスト4を目標にしていました。これからはタイトルに挑戦してもおかしくない人だと思われるように活躍していくことが大事かなと思っています。

Dsc_2322(マスクを外して記念撮影)

――師匠の井上慶太九段には報告するか。

昇段したときはいつも報告しているので電話しようと思います。

――本局は先に時間を使いきって苦しい将棋だったか。

正直、激戦だなという気持ちでやっていたので、勝ってる負けているとは、そんなに考えていませんでした。その局面でいちばんいい手は何かと考えていたので。難しい局面が続いているという認識でした。

――千日手模様になったが、成算があって打開したのか。

読み抜けがなければ勝ちだと思っていました。もともと勝ちの流れかなと思っていたのですが、あのあたりから「挑戦者になる」という気持ちがふわふわしてきて(同一手順を繰り返して)時間を稼いでしまいました。そのあとハプニングがあって、服部さんが少しかわいそうだとは思いました(記録係が不在で指せない時間帯があった)。しょうがないですけども。

――いま好調だという認識はあるか。

いつも同じような気持ちでやっています。自分は連敗連勝型のタイプで、今年度もけっこう連敗してしまい、課題を払拭できていません。それもあって調子がいいとは思っていませんでした。

――本局の前に師匠からアドバイスはあったか。

まるで何もありません(笑)。師匠も気を使われたのかなと思います。

――藤井叡王の強さについて。

よく考えて集中されて、目の前の一局に全力を尽くされているのが強いところだと思います。

――タイトル戦ではどのような将棋を見せたいか。

どちらが勝つのか分からない将棋をお見せできたらと思います。

――本局のポイント。

△5四桂を打ったところは、さすがにちょっと勝ちだと思っていました。狙っていた手でした。服部さんはちょっとうっかりした様子でした。ずっとお互いの玉の距離感が難しく、(△5四桂のあとも)中段玉で読む量の多い将棋だったので、時間が少ないというのがネックでした。

――△5四桂について。

△5四桂は詰めろで、かなり保険もかかっている手です。先手の竜の横利きを止める、△6六金もある、飛車も取れると3つくらいの意味があって、一気に3手くらい指せるならさすがに勝つかなと思いました。