(勝った伊藤匠叡王)
■勝った伊藤匠叡王の談話
── 相掛かりの出だしから、両方の端歩を突き捨てる展開になりました。
伊藤 後手陣が不安定なうちに▲7五歩(31手目)から動いていこうと思ったのですが、かなり指しすぎだったような気がしていました。
── ▲5八玉(57手目)に45分ほど使っています。この辺りの形勢判断は。
伊藤 △6三金(56手目)に対して何か手段がないかと思っていたのですが、考えても何も見つからなくて、その辺の見通しも甘かったと感じています。本譜は苦しい展開になったと感じていました。
── その後、▲5五香(71手目)と打って秒読みに入り、成香を引いていく展開になりました。
伊藤 駒を取らてしまいそうで結構苦しく、どれだけ粘れるかという展開だと思っていました。
── 局面が好転したと思ったのは。
伊藤 ▲3一角(127手目)と打てたあたりは指しやすくなっていそうな気がしました。
── 勝ちを意識したのも、そのあたりですか。
伊藤 いや、まだ分からないところも結構あったのですけど、最後▲5五桂(141手目)~▲2一馬が詰めろになったので、その辺りで勝ちになったかなと思いました。
── 一局を振り返って。
伊藤 先手番ながら苦しい展開にしてしまったので、そこは課題が残ったと思うのですが、秒読みに入ってからは辛抱強く指すことができたかなと思います。
── 成香が活躍する将棋でした。
伊藤 そうですね、なかなか六段目まで成香がくるのは珍しい形かなと思ったのですけど、形勢は苦しそうなので辛抱強く指そうと思っていました。
── 防衛に王手をかけました。次局に向けての意気込みを。
伊藤 次は少し間が空くと思うので、もっと中盤戦の精度を上げられるようにやっていきたいと思います。
(敗れた斎藤慎太郎八段)
■敗れた斎藤慎太郎八段の談話
── ▲7五歩(31手目)に対する△同歩に時間を使われました。この辺りの構想は。
斎藤 持久戦を目指そうかなと思っていたところで、▲7五歩を突かれてしまったので、結構激しい将棋になり、そこからはずっと分からなかったですね。ずっとまとめにくい将棋だなと思っていたので、こちらはこちらで悪くてもおかしくないのかなと思いながら指していました。
── △3四飛(48手目)~△5四飛~△3四歩の順で、角を使う目途が立ったところは。
斎藤 7四の歩を除去するのが難しいので、基本的にはよく分からない感じでした。△3五歩(58手目)で飛車の可動域を広げて、その辺りはまあまあ互角ぐらいにまとめているのかなと思っていました。
── そのあと形勢を損ねたと思った局面があれば教えてください。
斎藤 秒読みに入った直後は選択肢が多かったような気がして、△6四桂(78手目)とか△8四歩(80手目)とかで、ほかの手をやりたかったのですけど。それか、成香にすごい活躍されてしまったので、▲9三香成(73手目)に△8一歩と打っておくんだったかなと。色々と迷って悪いほうにいってしまったかなという感じでした。
── 一局を振り返って。
斎藤 主導権を取られそうな将棋とずっと思っていたのですけど、まずまず、まとめていたような気がします。ちょっと中終盤の精度を欠いてしまったのが、かなりの反省点になりますね。
── 次局に向けての意気込みを。
斎藤 少し期間も空きますし、課題を解消というか、中終盤の大事なところで間違えてしまった気がするので、次局はいい将棋が指せるように準備したいと思います。
(終局直後の様子)
(書き起こし=夏芽)