(終局直後の対局室。まずは報道陣からのインタビューに応じる)
◆伊藤匠七段の談話
――本局は角換わりになりました。相手の永瀬九段は昼食休憩までほとんど時間を使わずに指し進めてきましたが、序盤の駒組みはいかがでしたか。
伊藤 ▲7九玉(61手目)と引かれたときに△8六歩からの一歩交換が通るかという将棋で。本譜はかなり激しい展開になったんですけど、こちらとしても、この将棋を選んだ以上は仕方がないのかなと思って指していました。
――昼食休憩辺りの形勢判断はいかがでしたか。
伊藤 △2二角(82手目)と打ってしまうと、先手玉を捕まえる形も難しくなるので、あまり成算はありませんでした。
――飛車角交換になってから、反撃に出ました。中盤の展開はいかがでしたか。
伊藤 判断が難しい将棋だと思っていたんですけど、少しずつこちらが駒得の形になってきて、少しペースをつかめていてもおかしくないかなという気はしていました。
――終盤は相手に入玉されるかどうかということになりました。どのように局面を判断していましたか。
伊藤 △2六歩(104手目)で、(自身から見て)左辺から寄せていく方針を採ったんですけど、上部脱出を止められるかが分からないまま指していました。
――叡王挑戦が決まりました。五番勝負の抱負を聞かせてください。
伊藤 タイトル戦で結果が出ていないので、もっとよい内容の将棋を指せるように頑張りたいと思います。
◆永瀬九段の談話
――昼食休憩まではほとんど時間を使っていませんでしたが、予定の進行だったのでしょうか。
永瀬 そうですね。▲2一飛(81手目)までは予定で、△2二角も考えたことがあったんですけど、▲2五桂は変だったかもしれないので。駒損ではあるので、その辺りの判断が難しい将棋という認識でした。
――休憩が明けての中盤の進行はいかがでしたか。
永瀬 △4九桂成(92手目)とされた局面が、一直線の変化では分が悪いような気がしたので、形勢としては自信がない展開になってしまったかなと思って指していました。
――終盤の進行はいかがでしたか。
永瀬 基本的には、全然駄目なのかなと思って指していました。
――最後は入玉を目指しましたが、成算はいかがでしたか。
永瀬 難しいところがあればと思ったんですが、的確に捕まえられてしまったので、もう少し……ただ、全体的には厳しいのかなと思っていました。
――今期の叡王戦全体を振り返って、いかがですか。
永瀬 前期と同じく、挑戦者決定戦まではいきましたが、そこであと一歩が出ていない状況なので、何とかしてきたいです。