2022年5月24日 (火)

Dsc_2055(花束を手に記念撮影に応じる藤井叡王)

Dsc_2107(主催の不二家からペコちゃん人形が贈呈された)

Dsc_2125(記者の質問に応じる藤井叡王)

【藤井聡太叡王インタビュー】
――叡王初防衛おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをお聞かせください。
「本局は中盤から終盤にかけて苦しい戦いが続いて、最後も負けになったと感じたので実感に関しては全くありませんし、今日の将棋も振り返ってどうだったかなと思っているところです」

――藤井叡王はタイトル戦など終わったときに、ご自身の課題をお話しされることが多いと思います。これまで公式戦で会心の出来と感じたことはあるのでしょうか。
「もちろんそう思えるときが全くないわけではないのですが、振り返るとここは少ししっかり指せていなかったと思えるポイントは常にあるので……。一局指すごとに課題というのはあるのかなと思います」

――タイトル戦の連勝記録13連勝は歴代2位となりました。タイトル戦での強さについてご自身ではどのように考えていますか。
「少しタイトル戦の番勝負に星が集まっているところがあるので……。もちろん大きな舞台で結果が出せていることはうれしいんですけど、それ以外の対局も含めてより内容、結果ともに向上させないといけないなと思っています」

――これから棋聖、王位、竜王、王将としばらくは防衛戦が続きます。現状維持を目指した戦いが続き、タイトルを取っていくといった戦いがない中で、モチベーションが低下するということはないでしょうか。
「棋聖戦から防衛戦が続いていくことになりますが、タイトル戦で防衛か挑戦かということはそれほど大きな違いがないかなというふうに思っているので。大きな舞台で続けて対局していけるということをモチベーションのひとつにしてやっていければなと思っています」

――3月の順位戦後は他の対局がそこまで多くはないと思いますが、どのようにコンディションを整えていましたか。
「3月から4月にかけては対局が少なかったんですけど、序盤の定跡の見直しなどをしていました」

――大盤解説会場で出口六段が泣いてられたのを横で見ていたと思います。どのような気持ちになりましたか。
「今日の将棋は特に中盤はこちらがずっと苦しい展開が続いていたので、出口六段からするとそういうふうに思われるのも自然というか。自分であってもそう思うところがあるのかなと」

――今回の防衛でタイトル獲得が8期になり、木村義雄十四世名人や加藤一二三九段に十代で並びました。
「加藤九段や木村十四世名人の頃はタイトルの数が全く違うので、並んだという気持ちは全くありませんし、昔の棋士の棋譜を見て勉強になるところもあるので、そういったところをまた学んでいけたらと思います」

――これまでのタイトル戦では渡辺明名人や豊島将之九段など、ご自身よりもタイトル戦登場回数が多い棋士と戦ってきました。今回は初めてタイトル戦に出られた出口六段が相手ということで、これまでの経験が生きたなと思われたところはありましたか。
「今までのタイトル戦は自分よりキャリアが上の棋士との対戦ばかりだったので、今回は今までとは少し違う状況でしたが、出口六段とは新人王戦の決勝でも対戦しました。棋士になる以前にも練習将棋を指していただいたこともあるので、自分としては自然に番勝負に臨むことができたのかなと思います」
(共同記者会見より)

Dsc_1918(対局室に戻って感想戦が始まる)

Dsc_1935(一瞬のチャンスをつかんだ藤井叡王)

Dsc_1981(感想戦で水面下の変化を検討する出口六段)

Dsc_1938_3(感想戦では笑みも見られた藤井叡王)

Dsc_1978(出口の初タイトル戦は3連敗で幕を閉じた)

Dsc_1815(立会人の石田和雄九段が本局の感想を語る)

Dsc_1844(大盤解説で解説を務めた高見七段が両対局者に感想を聞く)

Dsc_1836(真っ直ぐ前を見つめる藤井叡王)

Dsc_1868_3(ファンに向けて本局の感想を話す藤井叡王)

Dsc_1883(終盤でチャンスが訪れていたことを語る出口六段)

Dsc_1894(感想を語っているうちに悔しさがこみ上げてうつむく)

Dsc_1618(叡王初防衛を果たした藤井叡王)

【藤井聡太叡王インタビュー】
――一局を振り返って。
こちらが攻めを呼び込む形で戦いになって、飛車を目標にしてやっていければと思っていたんですが、△7五飛(64手目)と浮かれたときいい手段が見つからなくて。本譜では苦しくしてしまったのかなと思っていました。こちらの駒が連係しない形なので、少しまずいかなと。もう少し違う指し方のほうがよかったのかなとは思います。
――一分将棋になって終盤はどのように形勢判断を見ていましたか。
△6五角(82手目)と打たれて厳しいかなと思っていて。そのあとはどうやって勝負するのかというのを考えていたんですが、最後まで苦しい局面が続いたかなと思います。
――▲6五香(95手目)はギリギリの着手でした。
ちょっと形勢が厳しそうかと思っていて。ただ他に手がわからなかったので仕方ないと思って指しました。
――勝ちになったのはどのあたりですか。
最後、▲3五桂(105手目)と打って詰んでいそうかなと。
――3連勝での防衛について。
このシリーズは相掛かりの将棋になって、中盤で長考した場面が多かったんですけど、それでもなかなか判断がつかないところもあったので、そのあたりが課題だと感じました。
――タイトル戦での連勝記録が羽生善治九段に並ぶ13連勝で歴代2位となります。
本局も負けの局面があったと思うので、あまりそのことに気にせず、また来月から棋聖戦と王位戦が始まっていくので、それに向けてしっかり調整していきたいです。
――主催の不二家さんのおやつはいかがでしたか。
また前期と違ったお菓子を用意していただいて、今回もとても美味しくいただきました。
――叡王戦ではこれまで防衛した棋士がおらず、藤井叡王が初防衛になりました。
それも意識していたと言うことではないのですが、ひとつの結果が出せたことはうれしく思います。

Dsc_1705(終盤でのチャンスをつかめず3連敗を喫した出口六段)

【出口若武六段インタビュー】
――本局を振り返っていかがでしたか。
序盤は失敗してしまったかなと思っていて。ちょっと玉を寄られて銀を上がられて(▲6八玉~▲7八銀・47手目)みると、どんどん行く展開とかにはならなくなってしまったので、ちょっと苦しい展開かなと思ったのですが。さすがに歩も取れて飛車も引けたのでペースが来始めたのかなと思ったのですが、最後ちょっと着地がひどかったかもしれないです。全体的には自分の実力だったのかなという感じがします。
――タイトル初挑戦を振り返って。
徐々に慣れてきたといった面はあったかなと思っていたんですけど、今日の将棋を負けてしまったというのはすごい悔しいという気持ちがあります。1局目と2局目は内容があまりよくなかったという面でも、もう一回鍛え直して上に上がっていければと思います。

Dsc_1750(終局直後の様子)

20220524_109▲藤井-△出口戦は、藤井叡王が109手で勝ちました。終局時刻は18時18分。消費時間は、▲藤井4時間0分、△出口4時間0分。
勝った藤井叡王はシリーズ成績を3勝0敗とし、叡王位初防衛を決めました。

(玉響)

出口六段が持ち時間を使いきって前述したA図(1図)の変化に踏み込みました。

20220524o1図以下、▲2一飛△3一金打▲1一飛成△5二銀▲6五香△4七銀成▲7五角△4三玉▲3一角成(2図)と進みました。

20220524r藤井叡王も持ち時間を使いきって、両者一分将棋のせめぎ合いになりました。一進一退の激しい寄せ合いが続きます。

20220524l△6五角に対して藤井叡王は▲7八銀(1図)と引きました。以下△7七歩には▲同玉(2図)と応じたのです。

20220524m

2図から△7六歩▲6八玉△4七角成▲同金△3八銀(A図)の筋が挟撃形になるため怖そうに見えますが、そこで▲2一飛のような攻め合いでいけるとの読みかもしれません。

20220524n2図で出口六段が手を止めています。いよいよ最終盤に突入します。

20220524j▲6五桂に対して後手は△9二角(1図)と打ちました。6五の桂が移動すれば△4七角成▲同金△3八銀の両取りが掛かります。△9二角に実戦は▲7四歩△4二玉▲7三歩成△6一金▲7四歩△7三桂▲同桂成△6五角(2図)と進みました。

20220524k先手は歩切れのため8七の銀取りを受けるには▲7六桂と打つことになりそうですが、△7五歩で後手が攻めきれるかどうか。先手は▲2一飛と打ち込む手がありますが、△3一金▲1一飛成△2二銀と竜を追い払う順があります。肝心の形勢は何ともいえず、難解な終盤戦が展開されそうです。

Dsc_1258(汗を拭って対局再開を待つ藤井叡王)

本局は三井ガーデンホテル内にある「柏の葉カンファレンスセンター」で行われています。つくばエキスプレス(TX)の柏の葉キャンパス駅から徒歩2分の好立地にあり、朝から地元住民や学生・生徒の行き来が途絶えません。以前はゴルフ場だったそうで、学園都市化が話題を呼んだ街として知られています。

Dsc_1487(三井ガーデンホテルの外観)

Dsc_1473(左が三井ガーデンホテル、右がカンファレンスセンター)

Dsc_1517(おしゃれなカンファレンスセンターの案内表示)

Dsc_1522(この奥に対局室と大盤解説会場がある)

柏市は千葉県の北西部にある中核市で、人口は千葉県内5位の約43万人を誇り、首都圏の代表的なベッドタウンとして知られています。柏の葉エリアはスマートシティの先駆けとなり、つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅周辺には研究・教育施設が集約しています。公共団体や企業、大学が連携して学園都市化が進む。柏市はつくばエクスプレスやJR常磐線で東京へのアクセスがいいこともあり、住みやすい街として人気を博しています。また、高齢化率が40%を超える豊四季台団地では柏市、東京大学、UR都市機構による共同プロジェクトが始まり、超高齢化や長寿社会への取り組み「柏プロジェクト」が注目され、健康都市連合の加盟都市になりました。

Dsc_1499(つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅)

Dsc_1514(つくばエクスプレスの路線図。世界が誇る秋葉原から未来都市のつくばを結ぶ)