【斎藤慎八段の談話】
――△5五歩(22手目)と仕掛けられた辺りまでについて。
斎藤 あまり前例のない将棋になるかと思っていました。▲6六歩(21手目)と突いたので、△5五歩と来られるのは覚悟していて。なんとか収まるように、読みを入れる展開になったかなと思います。
――▲4五歩(59手目)△同歩▲4四歩で先手がペースを握ったように見えた。
斎藤 細いですけど、ギリギリつながるんじゃないかなと思っていて。正確に指せば、いい展開があるかなと。
――一局全体を通して。
斎藤 5筋の折衝がどのように収まるか、ずっと分からなくて。(25手目で)▲6七金右と▲6七金左はどっちがいいか、そもそも▲6六歩(21手目)と突かないほうがよかったかなとか。序盤に結構難しい箇所が多かったと思うんですけど、持久戦になってからは少し落ち着いて攻めの形を作れたので、そこからまずまず、攻めをつなげることができたのかなと思います。
――挑戦を決めた感想について。
斎藤 今期の叡王戦は段位別予選からでしたので、なかなか遠いところだなとは思っていました。比較的、持ち時間の短いなか、ある程度、覚悟してというか、決断して進める将棋が続けられたのはよかったのかなと思います。
――今期本戦を振り返って。
斎藤 本戦から持ち時間が各3時間と変わるので、(各1時間の)予選とはまた全然違うようなところで。当然ながら強い棋士しかいないといいますか、ずっと厳しかったと思います。普段は長考することが多いですが、チェスクロック形式の3時間という少し短めの持ち時間というのを意識して、ある程度で指さないとなっていうのはずっと思いながらやっていました。
――五番勝負で戦う伊藤匠叡王について。
斎藤 伊藤叡王は最先端の研究が深い一面と、中終盤力がほかの棋士以上のものを持たれているのは、昨年の叡王戦でもよく分かるところなのかなと思います。大変強い棋士だなと思います。
【糸谷八段の談話】
――△5五歩(22手目)と仕掛けた辺りは。
糸谷 5筋を突いてしまうのは悪いクセでした。自分は5筋を過大評価しているクセがありまして、本局も難しいか、ちょっと悪いかで収まるかなと思ったんですけど、組み上がってみると、こっちがしんどい将棋になってしまったかなと。△5三銀(18手目)から本譜のように進めたのは少し無理があったかなと思います。
――その後、▲4五歩(59手目)から4筋を攻められる展開になった辺りは。
糸谷 組み上がった形はだいぶ手損していて厳しかったです。5筋から行くんだったら、もうちょっと頑張って▲6七金右(25手目)辺りのところで攻めていかなければいけなかったかなと。いったん後退して、立て直す形にしたのがよくなかったかと。
――一局全体を振り返っては。
糸谷 仕掛けが軽くなって手損してしまったので、そこがよくなかったかなと思います。最後は攻め倒されたというか。きれいに決められてしまいました。
――今期の叡王戦を振り返って。
糸谷 本田奎六段、鈴木大介九段、藤井聡太竜王・名人と強豪ばかりの相手で、これまでは先攻する展開になったのですが、本局は攻めが軽くて、受けに回る展開になってしまったという感じですね。