*第57期決勝三番勝負第3局 Feed

2026年11月 5日 (木)

囲み取材

感想戦後にあらためて囲み取材がありました。
以上で今期新人王戦の中継を終わります。
ご観戦いただきまして、ありがとうございました。

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――この三番勝負で努力したこと、心がけたこと。

永井 この三番勝負は、前期の三段リーグが終わってから始まったので、ここにすべてを懸けるくらいのつもりで。対局前日は8時間寝たりとか、直前まで研究したり、毎日のルーティンをちゃんとやることを心がけました。気持ちとしては、ここに人生を懸けるくらいのつもりでした。

――あらためて新人王戦優勝について。

永井 実感は湧いていませんが、人生でいちばんうれしい気がします。

――強豪の藤本七段を破っての優勝だった。

永井 藤本先生は順位戦でB級1組に所属されていて、七段ということで、奨励会員の自分からすると雲の上の存在。ただ、自分としては、指すからには勝つんだ、という気持ちでやっていました。藤本先生に勝てたのは自信になります。

――この優勝で三段リーグの次点も付与される。

永井 次点はのどから手が出るほど欲しかった。三段リーグで3位でも上がれる権利を得たということは、これから戦っていく上でも精神的に全然違ってくる。本当に大きなことでうれしいです。

――囲碁の新人王戦優勝者について。

永井 16歳の女性の方(栁原咲輝二段)ですよね。

【囲碁新人王に栁原二段|しんぶん赤旗】
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik26/2026-10-28/2026102801_03_0.php

――今期は囲碁(女性棋士の優勝は2人目)と将棋(奨励会員の優勝は2人目)で歴史的な優勝者が並んだ。

永井 歴史的と言っていただけるのはありがたいこと。この優勝をきっかけに飛躍できればと思います。

――将棋のどんなところが好きか。

永井 勝っても負けても全部が自分のおかげ、自分のせい。他人とか運がまったく絡まないところです。

――師匠の神谷広志八段もリアルタイムで観戦していて「心臓に悪かった」と話していた。

永井 自分も心臓に悪かったです(笑)。見ていただいていたのは知りませんでした。また、いいご報告ができるように精進したいと思います。

――今日の夕飯はどうするか。

永井 決めていませんが、このあと誰かお祝いに来てくれるかもしれないので、それを楽しみに。

――藤本七段とはネット将棋を指しているとか。いつごろからか。

永井 藤本先生がまだ四段で、自分が二段から三段に上がったときだと思います。三段リーグが始まる前でした。知人を通じて、自分からぜひ教わりたいと、お声がけさせていただきました。

――永井三段との練習将棋について、藤本七段は「(永井三段の周到な準備で)悪くすることも多い」と話していた。

永井 うまくやれた記憶もあるのですけど、そんなにいいときばかりではなくて。自分はそのときの気持ちの入り方によって、内容の精度がブレるのですけど、藤本先生はどんなときでも強くて精度が高いので、すごいなと思っています。

――本局の最終盤、控室では「入玉宣言もあるか」と話されていた。

永井 入玉宣言はずっと考えていたんですけど、△4一金と指されて竜を逃がさなければいけなくなり、そのことに必死で、その瞬間からは宣言は考えなくなりました。

――終盤は膝のあたりをたたく場面もあった。

永井 自分が膝をたたくときは、誤算があったり、ミスがあったりしたときですかね。でも無我夢中だったので覚えていません。無意識でやったのだと思います。

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――決勝の相手が藤本七段と決まった後の過ごし方。

永井 自分が決勝進出を決めて、その1週間後くらいに藤本先生が相手と決まりました。三段リーグの対局もなかったので、藤本先生のことだけを考える日々が続いていました。

――実際に藤本七段が相手と決まって、どう思ったか。

永井 周りからしたら「終わった」と思われているんだろうな、と思ってはいたんですけど。僕は奨励会員で、向こうはB1で七段ですから。でもそのほうが燃えるタイプなので、むしろワクワクしていました。

――三番勝負には、とっておきの研究をぶつけたのか。

永井 とっておきというか、普段の延長線上というか。2局目は自分の準備が甘くて、先手番の利がない感じになってしまい、1局目もよくなかったので。本局だけが唯一、序盤の準備が生きたのかなと思います。

――今期の三段リーグも始まり、現在は3勝1敗の成績。

永井 全勝するつもりだったのですが、4日前のリーグで大逆転負けをしてしまい、次の日は立ち上がれませんでした。本当にショックだったんですけど、切り替えて過ごしていました。

――どのようにして切り替えたのか。

永井 自分も教えてほしいくらいなのですが、布団にくるまっていたら前に進まないので、とりあえず起きる。外に出て散歩する。興味のあるマンガを読む。それくらいかなと思います。時間が忘れさせてくれるのではないかと。自分は立ち直りが遅くて、半日は引きずっています。

――藤本七段に勝てた理由。どの部分で上回ったと思うか。

永井 藤本先生が強いということは、対局中にも感じていました。水面下での読みの精度も高くて、紙一重の差だったと思っています。本局でいえば、決断よく指して時間を残していこうというのが、結果的に終盤で時間を残せてよかったと思います。自分が上回っている感触はなくて、一生懸命にやった結果かなと思っています。

――今期の王位戦七番勝負第1局は、永井三段の地元の浜松市で行われた。おすすめの浜松グルメは。

永井 浜松というか静岡ですけど「さわやか」のハンバーグ。それは静岡に来たら絶対に食べないといけないもの。食べないと人生損しています。「五味八珍」のラーメンやギョウザもおいしい。あとはうなぎパイくらい。

――本局の終盤は冷静に指せば勝てると考えていたか。それとも焦りもあったのか。

永井 全部ありました。藤本先生は普段か指していただいているので、投げないのは分かっていましたし、最後まで絶対に指してくると思っていたので、あきらめてもらえるまで指すしかないと思っていました。

――今年の浜松将棋まつりでは、神谷八段と藤本七段の席上対局があり、藤本七段が勝った。ある意味では今回の優勝は「恩返し」でもある。

永井 席上対局のことは聞いていました。でも藤本先生が浜松に来ていただけたことのほうがうれしいです。

(牛蒡)

感想戦

総手数は249手。新人王戦史上、歴代3位となる長手数の熱戦でした。
過去のベスト3は以下。段位は当時のもの。

2015年 343手 ▲牧野光則四段-△都成竜馬三段 本戦 先手勝ち
1974年 272手 ▲青野照市四段-△吉田利勝六段 三番勝負第1局 持将棋
2010年 243手 ▲千田翔太三段-△宮本広志三段 本戦 先手勝ち

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(牛蒡)

終局直後

永井大三段が優勝。三段としては2013年の都成竜馬三段(当時)以来、2回目の快挙です。藤本渚七段は2023年に続いて2回目の準優勝。七段のため、今期が最後の新人王戦でした。永井三段には、今期三段リーグ終了後(降段点を取らないことが条件)に次点が付与されます。

Dsc_1020(永井三段。積極的な攻め、しっかりした受け、入玉模様と多彩な指し回しだった)

――いまの気持ち。

永井 ずっと分からない感じだったので、勝ててホッとしています。

――初出場で初優勝となった。今期全体を通して得たものは。

永井 新人王戦の持ち時間は3時間。奨励会は1時間半。倍の時間で指させていただけたのは貴重な経験でした。

――トーナメントのどのあたりから優勝を意識したか。

永井 もちろん開幕時点から優勝したいなという気持ちはありましたが、本当に優勝を意識したのは決勝に進んだときでした。

――今後の目標。

永井 やはり三段リーグを抜けること、プロになることが目先の目標です。その先は、まだ実力が足りていませんが、ここ3年から5年の間で、タイトルを獲れるような棋士になりたいです。

――奨励会員の優勝は2人目。プロに勝って頂点に立ったことについて。

永井 奨励会員は出場できる棋戦が新人王戦と加古川青流戦しかなく、ありがたい機会でした。その機会を生かして頂点まで駆け上がれたのはよかったかなと思います。

――師匠の神谷広志八段も注目していた。

永井 自分が結果が出ないときも師匠は何かおっしゃるわけではないのですが、何も言わないことが自分に対する信頼なのかなと思っています。昔から温かく見守っていただいているので、ひとつこうして結果を出せたのはよかったと思います。師匠には感謝しています。

Dsc_1017(藤本七段。敗勢でも「あわや」の局面を作った)

――三番勝負を振り返って。

藤本 1局目に負けてしまったことで、ずっと追いかける感じになりました。永井さんとはネットとかで指す機会があり、序盤の準備でリードをされることも多かったので、なるべくそうならないようにしたいと思っていたのですが、本局は特に序盤で作戦負けになったんじゃないかと思っていて、そこから差を詰めるどころか、広がっていったというか。ずっと苦しい勝負になってしまったかなと思います。

――最後の新人王戦となった。今後の目標。

藤本 こういう形で卒業というのは、挑むチャンスがなくなったということで、すごく残念な気持ちです。でも、これからも対局はたくさんあるので、一局一局、結果を出せるように頑張るしかないかなと思います。

――執念を感じる最終盤だった。

藤本 最後は投げ場を失ったというか、棋譜を汚してしまったという意識があって、永井さんには申し訳ない気持ちがあります。入玉できて自玉が詰む感じではなくなったので、できる限り、あきらめずにやろうかと思っていました。最後はもしかしたら相手の飛車が詰むかもしれない形になり、そこだけに懸けて、という感じでした。でも最後はハッキリ足りない感じになってしまいました。こうなってしまう前に、うまくやらなければいけなかったと思っています。

Dsc_1029(インタビューに答える永井三段) 

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(牛蒡)

永井三段が第57期新人王に

20261105_249▲永井-△藤本戦は249手で永井三段が勝ちました。終局時刻は17時25分。消費時間は、▲永井3時間0分、△藤本3時間0分。
永井三段はシリーズ成績を2勝1敗とし、第57期新人王に輝きました。奨励会三段の新人王戦優勝は、史上2人目となる快挙です。

(玉響)

最後の勝負、竜の詰めろ

261105_220図の局面は、無条件計算で先手が35点、後手が19点。後手が大駒(5点)を取れば24点に達するところまできました。そして△3二銀(図)は竜の詰めろ。「どう対応するんだろう」と北浜八段。竜を引くことになるとは思いますが、それで絶対に捕まらない、とは言いきれないようです。まさか……が、あるのでしょうか。

(牛蒡)

200手

261105_200200手に到達しました。盤上と手駒を無条件に計算(例えば取られそうな1三歩も後手の駒とカウント)すると、先手は37点、後手は17点となります。後手はまだ7点たりません。途中、△8三金(190手目)で△8二銀を狙うなど、藤本七段は技を駆使していますが、永井三段もワナにはまることなく、正確にしのぎました。大量リードを生かして着実に逃げ切ろうとしています。

(牛蒡)

最後は相入玉か

261105_169先手は▲9一角成(図)で上部開拓を始めました。いよいよ相入玉になりそうです。後手の点数は、敵陣に入った駒と手駒を合わせても、持将棋の24点に10点は足りません。先手玉を寄せるのも難しい状況です。

261105_169_2(上図から少し進んだ局面の天井カメラ映像)

(牛蒡)

藤本七段の粘り

261105_105s1図から△1四玉▲9六歩△1八角成▲9五歩△1七馬。さらに▲1九歩△同馬▲3八銀△2二飛成▲2三歩△同竜▲2九桂△同馬▲同銀△同竜……。▲1九歩以下の攻防は、先手が▲2一竜を狙い、後手がそれを防ぐという攻防です。藤本七段は粘り強く指しています。261105_125sさらに進んで2図。いまだに後手は▲2一竜を許していません。ただし、その代償に角は1枚失いました。永井三段は後手の粘りに手を焼きつつもリードは維持しています。1八の歩は寄せの拠点になり得ます。北浜八段は「将棋がうまい」と、両者の指し回しにうなっています。

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(牛蒡)

先手勝勢

261105_105▲6二と~▲5一と~▲5二と。先手がじっくりと、と金を使って図の局面。やや重い攻めでしたが、どうやら間に合いそうです。この間に飛車を取られ、攻防に△2九飛も打たれましたが、北浜八段いわく「後手は戦力不足」。先手勝ちの流れに変わりはないようです。戦力不足ということは、後手が入玉しても点数不足に陥る、ということでもあります。

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(牛蒡)

決めに出る

261105_91永井三段は竜を逃げずに▲4二香成(図)で寄せに入りました。以下(1)△6二銀は▲2三桂成△同 玉▲3一成香△7三銀▲2六銀で上から押さえつけられて後手が苦しかったでしょうか。実戦は(2)4二同銀左で辛抱しました。これには▲2三桂成のほかに▲3一銀もありそうです。

Dsc_0744_2(藤本七段は逆転を目指し、△4二同銀左の変化にアヤを求めた)

(牛蒡)

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