囲み取材
感想戦後にあらためて囲み取材がありました。
以上で今期新人王戦の中継を終わります。
ご観戦いただきまして、ありがとうございました。
――この三番勝負で努力したこと、心がけたこと。
永井 この三番勝負は、前期の三段リーグが終わってから始まったので、ここにすべてを懸けるくらいのつもりで。対局前日は8時間寝たりとか、直前まで研究したり、毎日のルーティンをちゃんとやることを心がけました。気持ちとしては、ここに人生を懸けるくらいのつもりでした。
――あらためて新人王戦優勝について。
永井 実感は湧いていませんが、人生でいちばんうれしい気がします。
――強豪の藤本七段を破っての優勝だった。
永井 藤本先生は順位戦でB級1組に所属されていて、七段ということで、奨励会員の自分からすると雲の上の存在。ただ、自分としては、指すからには勝つんだ、という気持ちでやっていました。藤本先生に勝てたのは自信になります。
――この優勝で三段リーグの次点も付与される。
永井 次点はのどから手が出るほど欲しかった。三段リーグで3位でも上がれる権利を得たということは、これから戦っていく上でも精神的に全然違ってくる。本当に大きなことでうれしいです。
――囲碁の新人王戦優勝者について。
永井 16歳の女性の方(栁原咲輝二段)ですよね。
【囲碁新人王に栁原二段|しんぶん赤旗】
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik26/2026-10-28/2026102801_03_0.php
――今期は囲碁(女性棋士の優勝は2人目)と将棋(奨励会員の優勝は2人目)で歴史的な優勝者が並んだ。
永井 歴史的と言っていただけるのはありがたいこと。この優勝をきっかけに飛躍できればと思います。
――将棋のどんなところが好きか。
永井 勝っても負けても全部が自分のおかげ、自分のせい。他人とか運がまったく絡まないところです。
――師匠の神谷広志八段もリアルタイムで観戦していて「心臓に悪かった」と話していた。
永井 自分も心臓に悪かったです(笑)。見ていただいていたのは知りませんでした。また、いいご報告ができるように精進したいと思います。
――今日の夕飯はどうするか。
永井 決めていませんが、このあと誰かお祝いに来てくれるかもしれないので、それを楽しみに。
――藤本七段とはネット将棋を指しているとか。いつごろからか。
永井 藤本先生がまだ四段で、自分が二段から三段に上がったときだと思います。三段リーグが始まる前でした。知人を通じて、自分からぜひ教わりたいと、お声がけさせていただきました。
――永井三段との練習将棋について、藤本七段は「(永井三段の周到な準備で)悪くすることも多い」と話していた。
永井 うまくやれた記憶もあるのですけど、そんなにいいときばかりではなくて。自分はそのときの気持ちの入り方によって、内容の精度がブレるのですけど、藤本先生はどんなときでも強くて精度が高いので、すごいなと思っています。
――本局の最終盤、控室では「入玉宣言もあるか」と話されていた。
永井 入玉宣言はずっと考えていたんですけど、△4一金と指されて竜を逃がさなければいけなくなり、そのことに必死で、その瞬間からは宣言は考えなくなりました。
――終盤は膝のあたりをたたく場面もあった。
永井 自分が膝をたたくときは、誤算があったり、ミスがあったりしたときですかね。でも無我夢中だったので覚えていません。無意識でやったのだと思います。
――決勝の相手が藤本七段と決まった後の過ごし方。
永井 自分が決勝進出を決めて、その1週間後くらいに藤本先生が相手と決まりました。三段リーグの対局もなかったので、藤本先生のことだけを考える日々が続いていました。
――実際に藤本七段が相手と決まって、どう思ったか。
永井 周りからしたら「終わった」と思われているんだろうな、と思ってはいたんですけど。僕は奨励会員で、向こうはB1で七段ですから。でもそのほうが燃えるタイプなので、むしろワクワクしていました。
――三番勝負には、とっておきの研究をぶつけたのか。
永井 とっておきというか、普段の延長線上というか。2局目は自分の準備が甘くて、先手番の利がない感じになってしまい、1局目もよくなかったので。本局だけが唯一、序盤の準備が生きたのかなと思います。
――今期の三段リーグも始まり、現在は3勝1敗の成績。
永井 全勝するつもりだったのですが、4日前のリーグで大逆転負けをしてしまい、次の日は立ち上がれませんでした。本当にショックだったんですけど、切り替えて過ごしていました。
――どのようにして切り替えたのか。
永井 自分も教えてほしいくらいなのですが、布団にくるまっていたら前に進まないので、とりあえず起きる。外に出て散歩する。興味のあるマンガを読む。それくらいかなと思います。時間が忘れさせてくれるのではないかと。自分は立ち直りが遅くて、半日は引きずっています。
――藤本七段に勝てた理由。どの部分で上回ったと思うか。
永井 藤本先生が強いということは、対局中にも感じていました。水面下での読みの精度も高くて、紙一重の差だったと思っています。本局でいえば、決断よく指して時間を残していこうというのが、結果的に終盤で時間を残せてよかったと思います。自分が上回っている感触はなくて、一生懸命にやった結果かなと思っています。
――今期の王位戦七番勝負第1局は、永井三段の地元の浜松市で行われた。おすすめの浜松グルメは。
永井 浜松というか静岡ですけど「さわやか」のハンバーグ。それは静岡に来たら絶対に食べないといけないもの。食べないと人生損しています。「五味八珍」のラーメンやギョウザもおいしい。あとはうなぎパイくらい。
――本局の終盤は冷静に指せば勝てると考えていたか。それとも焦りもあったのか。
永井 全部ありました。藤本先生は普段か指していただいているので、投げないのは分かっていましたし、最後まで絶対に指してくると思っていたので、あきらめてもらえるまで指すしかないと思っていました。
――今年の浜松将棋まつりでは、神谷八段と藤本七段の席上対局があり、藤本七段が勝った。ある意味では今回の優勝は「恩返し」でもある。
永井 席上対局のことは聞いていました。でも藤本先生が浜松に来ていただけたことのほうがうれしいです。
(牛蒡)











▲永井-△藤本戦は249手で永井三段が勝ちました。終局時刻は17時25分。消費時間は、▲永井3時間0分、△藤本3時間0分。
図の局面は、無条件計算で先手が35点、後手が19点。後手が大駒(5点)を取れば24点に達するところまできました。そして△3二銀(図)は竜の詰めろ。「どう対応するんだろう」と北浜八段。竜を引くことになるとは思いますが、それで絶対に捕まらない、とは言いきれないようです。まさか……が、あるのでしょうか。
200手に到達しました。盤上と手駒を無条件に計算(例えば取られそうな1三歩も後手の駒とカウント)すると、先手は37点、後手は17点となります。後手はまだ7点たりません。途中、△8三金(190手目)で△8二銀を狙うなど、藤本七段は技を駆使していますが、永井三段もワナにはまることなく、正確にしのぎました。大量リードを生かして着実に逃げ切ろうとしています。
先手は▲9一角成(図)で上部開拓を始めました。いよいよ相入玉になりそうです。後手の点数は、敵陣に入った駒と手駒を合わせても、持将棋の24点に10点は足りません。先手玉を寄せるのも難しい状況です。
(上図から少し進んだ局面の天井カメラ映像)
1図から△1四玉▲9六歩△1八角成▲9五歩△1七馬。さらに▲1九歩△同馬▲3八銀△2二飛成▲2三歩△同竜▲2九桂△同馬▲同銀△同竜……。▲1九歩以下の攻防は、先手が▲2一竜を狙い、後手がそれを防ぐという攻防です。藤本七段は粘り強く指しています。
さらに進んで2図。いまだに後手は▲2一竜を許していません。ただし、その代償に角は1枚失いました。永井三段は後手の粘りに手を焼きつつもリードは維持しています。1八の歩は寄せの拠点になり得ます。北浜八段は「将棋がうまい」と、両者の指し回しにうなっています。
▲6二と~▲5一と~▲5二と。先手がじっくりと、と金を使って図の局面。やや重い攻めでしたが、どうやら間に合いそうです。この間に飛車を取られ、攻防に△2九飛も打たれましたが、北浜八段いわく「後手は戦力不足」。先手勝ちの流れに変わりはないようです。戦力不足ということは、後手が入玉しても点数不足に陥る、ということでもあります。
永井三段は竜を逃げずに▲4二香成(図)で寄せに入りました。以下(1)△6二銀は▲2三桂成△同 玉▲3一成香△7三銀▲2六銀で上から押さえつけられて後手が苦しかったでしょうか。実戦は(2)4二同銀左で辛抱しました。これには▲2三桂成のほかに▲3一銀もありそうです。
