(勝利を収めた上野四段)
――本局が棋士として初の公式戦だった。
上野 デビュー戦がこうした新人王戦決勝という大きな舞台で、皆さんから注目されることは分かっていたので、気合が入っていました。一局を通じて集中して指せていたかなと思います。
――序盤、時間に余裕を持って指していた。研究の形だったか。
上野 練習将棋でも経験のある形だったので、そこは決断よく指せていました。優勢かは分からないですが、想定していた形のひとつでした。
――対戦相手について。
上野 藤本さんの強さはよく分かっていますし、練習将棋でもよく指す相手なんですけど、こうした大きい舞台で指せることはうれしいことだと思っています。
――若手の頂上決戦。藤井聡太竜王・名人を追い掛ける存在としてどう考えているか。
上野 藤井先生にはまだまだ及ばないところがたくさんありますので、追い掛ける存在としてより一層頑張らなければならないという気持ちです。
(敗れた藤本四段)
――本局を振り返って。
藤本 対戦相手の上野さんは兄弟子で、強いということもよく分かっていたので、見られて恥ずかしくない将棋にしようと思っていました。ただ、序盤で少しよいと思っていた局面が、実際に進んでみるとあまりよくないような気がしてきて。形勢も時間も離されてしまったのはよくなかったです。
――次局に向けて。
藤本 次は先手番になります。厳しい勝負になると思いますので、しっかり準備して臨めればと思っています。
――対戦相手について。
藤本 上野さんは自分が小さいときから指していただいた方で、本当にまったく勝てなかったので、ずっと強いという印象です。
――若手の頂上決戦。藤井聡太竜王・名人を追い掛ける存在としてどう考えているか。
藤本 追い掛ける……といってもいまのままでは離され続けるだけな気がするので、ちょっとでも差を縮めていきたいと考えています。
(虹)
決勝三番勝負第1局、▲上野-△藤本戦は115手で上野四段の勝ちとなりました。終局時刻は16時37分。消費時間は▲上野2時間47分、△藤本3時間0分(チェスクロック使用)。上野四段はプロデビュー戦を白星で飾り、優勝まであと1勝に迫りました。
(飛龍)
終盤入り目前、ここで桐山九段に現局面までを振り返っていただきました。
「上野さんの矢倉に対し、藤本さんは雁木に組むと早々に桂跳ねで攻めていきました。上野さんは▲桂△金交換で駒損になりましたが、後手陣にキズが多いことから自信を持っていたのではないでしょうか。47手目▲3七歩の局面に注目していましたが、藤本さんは受けずに△4六歩から攻め続けていきます。51手目▲6八角といったん引いたあと、その角を切ったというのが面白い構想でしたね。それで上野さんがリードをしたと思います。以降はそのリードを保ちつつ進めているという印象です」(桐山九段)
棋士室に来訪している東和男八段と古森悠太五段に見解を尋ねました。
「どちらかといえば先手持ちです。駒割りは2枚換えで、手番を握っています。▲4四歩と打てるのもポイントです。後に▲3六銀と引いて2筋攻めを見ることもできそうです。先手のほうに有力手が多そうですね」(東八段)
「代えて▲5六銀と引くようでは変なので、金打ちだと思っていました。4五銀がいなくなると△4七角の王手金取りが生じますので、その点には注意です。△7三角と引かせれば後に▲7九玉と寄れるようになりますし、それで陣形がしっかりとします。先手は攻めに専念できそうで、現局面は先手を持ってみたいです」(古森五段)