2024年10月21日 (月)

服部六段インタビュー

20241017img_3431(感想戦終了後、囲み取材が行われた)

―― 2度目の新人王戦優勝を決めて、最初のときと何か違う点は。
服部 最初は1局目も2局目も緊張していたが、今回は気負わず、伸び伸びと指せた。ただ、2局終えてみて、今回もまだ優勝した実感は湧いていない。

―― 勝負師にとって逆転勝ちが多いのは大事な要素のひとつ。逆転を勝ち取るために心がけていることは。
服部 決勝三番勝負に限ったことではなく、今期の準決勝や準々決勝も、逆転の内容だった。苦しくなったとき、すぐに土俵を割らずに粘り強く指すことを意識している。なおかつ、相手が嫌がりそうな手を見つけながら、気持ちを切らさないように戦っている。ただ、どうしても精神的には苦しい戦いが多い。序盤からリードして勝ちきれる将棋を目指したい。

―― 今年度の勝率は9割を超えている。成績についてどのように感じているか。
服部 勉強法を変えたわけではない。一局ずつ丁寧に指すよう心がけている。昨年は体調管理でうまくいかない部分があった。対局の次の日でも研究会などを入れていたが、今年は反省して、しっかり休む日を作っている。2023年度の成績は7割に届かなかった。今年は勝率にこだわっていきたいと思っている。

―― 冨田誠也五段とコンビを組んで、Mー1に出られたことでも話題になった。
服部 漫才をやっていて将棋に負けていたら、周りからもいろんな意見が出る。だからこそ、盤の前に座ったら「勝たなければいけない」と気持ちになった。気持ちの部分で、それが好調の要因となっている部分もあるかもしれない。

―― タイトル戦に出るための課題について。
服部 各棋戦では本戦の上位に食い込めておらず、課題は多い。まずは本戦に出場できるようにしたい。

―― 出身の北陸地方は災害が重なり、まだ現場は苦しい状況が続くと報道がある。そのことに対する思いは。
服部 「地元にタイトルを」という思いは常にあって、それが今期、頑張りたいと思った要因のひとつ。自分が将棋を指して、少しでも喜んでもらえたらと思う。
20241017img_3453(大名人の掛け軸を背に、取材に答える)
20241017img_3461(回答中は表情を緩めた)


以上で第55期新人王戦決勝三番勝負の中継を終了します。来期、新人王に輝く精鋭棋士は誰でしょうか。今後の新人王戦にもご注目ください。ご観戦、誠にありがとうございました。

(武蔵)

感想戦

20241017img_3399(服部六段はペースを握ってから、一気に寄せきった)

20241017img_3394(高田五段は顔をしかめる場面もあった)
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20241017img_3410(時間をかけて局面を検討する)
20241017img_3426(感想戦終盤には、服部六段に笑顔が見られた)

(武蔵)

終局直後インタビュー

20241017img_3379(勝った服部慎一郎六段は、2期ぶり2度目の優勝を決めた)

□優勝を決めた服部慎一郎六段のインタビュー
―― 連勝で2度目の優勝を決めたいまの心境は。
服部 全体を通して、厳しい戦いが続いた。その中で優勝できて、結果だけはうれしく思う。

―― 本局を振り返って。
服部 後手番の待機策を選んだが、序盤はよくわからない局面が続いた。中盤も少し苦しいか、後手番なら仕方がないか、という難しい戦いだった。

―― 千日手かという局面から、一気にペースを握ったように見えた。
服部 後手番でうまくいっているかどうかわからず、千日手は仕方ないと思っていた。△7四桂(142手目)と金取りに打って攻めが続く形になったが、、自玉に王手を続けられながら、上部を開拓される可能性もあって、ペースは握ったようでも難しいと感じていた。

―― 今後の抱負は。
服部 まだタイトル戦に出られていない。まずはタイトル戦の出場を目指して頑張りたい。

―― 新人王はタイトルホルダーとの記念対局がある。それに向けての意気込みは。
服部 前回の記念対局は持ち時間を余して、完敗の内容だった。今回はじっくり時間を使って、いい勝負になるように調整したい。

20241017img_3382(高田明浩五段は連敗で退いた)

■敗れた高田明浩五段のインタビュー
―― 決勝三番勝負を戦ってみて。
高田 2連敗は仕方がないが、中終盤で形勢を離される展開が続いた。中盤力の向上が課題と感じた。

―― 千日手になりそうな局面があった。打開した局面について。
高田 序盤はよくなっているとまではいかないまでも、ペースは握れていると思って打開したが、千日手が妥当だった。それでも互角と感じていて、少し無理をしたのかもしれない。それでも、どちらがいいとはいいきれない局面だったと思う。

―― 今後に向けての抱負は。
高田 いままで大舞台に出たことがなかった。今回は2連敗だったが、いい経験をさせてもらえた。またこのような大舞台に戻ってこられるように、精進したい。

20241017img_3385(感想戦前に両者はインタビューを受けた)

(武蔵)

服部六段が2度目の優勝を決める

Shinjin202410210101_158

決勝三番勝負第2局、▲高田-△服部戦は158手で服部六段の勝ちとなりました。終局時刻は15時37分。消費時間は▲高田2時間42分、△服部2時間13分(チェスクロック使用)。三番勝負は服部六段が2勝0敗で制し、自身2度目の新人王戦優勝を達成しました。

(飛龍)

終局近し

20241021150玉頭を押さえる銀打ちで、先手玉に△7六桂▲7九玉△8八金までの詰めろをかけました。実戦は▲7七金と受け、△9七角▲7八玉△7七銀成▲同玉△7六歩で、後手の攻めが止まりません。後手が勝ちに近づいています。
Img_3378(検討には、日本将棋連盟専務理事の脇謙二九段が加わった)

(武蔵)

4階の対局室

関西将棋会館での対局は、本局が指される5階「御上段」「御下段」「芙蓉」の各間のほかに、4階でも行われる場合があります。ふたつの部屋の名は、将棋駒の書体の名称で共通しています。

Img_3217(4階対局室前の廊下。手前は「錦旗」の間)
Img_3218(奥は「水無瀬」の間。阪急電鉄京都本線「高槻市駅」から京都方面に2駅進むと、同駅が存在する)
Img_3219(水無瀬の間では2局が指される)

(武蔵)

反撃

20241021140先手が千日手を打開し、ねじり合いが続く中盤戦。服部六段は△8六金と捨てて反撃に出ました。▲同金△7四桂まで進みます。以下☗7五桂には☖5二玉と逃げます。2筋の歩は五段目に伸びて、後手玉は逃げ道が広いです。検討でも△7四桂に対する有効な手段が見つかっておらず、後手が指しやすくなったという評判です。
Img_3277(鋭く反撃に出た服部六段)

(武蔵)