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2025年10月

2025年10月27日 (月)

囲み取材

感想戦後、服部七段に囲み取材が行われました。

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――熱の入った感想戦でした。どのような感じの検討でしたか。

服部 手将棋だったので、指していたときはわからない変化が多かったです。途中は少し指せると思った局面があったのですが、検討するとそんなことはなくて難しい将棋でした。最後も自分としてはスッキリとした勝ちを見つからなかったので、感想戦をしてみると、対局中はもう少し冷静にならないといけないと感じました。△5二玉とされたときに、局面は勝ちと思ったのですが、スッキリとした勝ちが見えずに焦った部分もありました。感想戦で▲9八玉という手を指摘されて、普段ならそういう手は好きなので思い浮かぶはずなのですが、視野に入っていなかったので冷静になれていなかったと思います。

――新人王戦決勝三番勝負を経験している服部七段でも、そういうところで冷静になりきれないところが勝負にはあるのですね。

服部 その前が負けにしたと思って、そこから逆転したと感じた局面でもあったので気持ちが落ち着いていなかったと思います。△5八銀から5三で馬を抜かれる手順を軽視していて、優勝を逃してしまったかなと思っていました。そのあと▲4三歩と垂らしたあたりは逆転したと思ったのですが、スッキリとした勝ちが見えませんでした。それで焦ってしまったところはあります。

――3回目の優勝でした。新人王戦では4人目になります。

服部 特に意識はしていませんでした。今期で最後の出場なのでいい将棋を指したいという気持ちがトーナメントの途中からも思っていました。

――服部七段にとって「いい将棋」はどういうものでしょうか。

服部 最後の最後までどちらが勝つかわからない将棋が個人的に好きですね。
 
――勝負ごとではありますが、勝ち負けがわからない勝負のほうが好きですか。

服部 そうですね。逆転勝ちも多い棋風でもありますし、好きですね。

――対局を拝見していると、受けが強くて相手に攻めさせるけど受けつぶして、最後は寄り切るような将棋に見えますが、理想の将棋の形はありますか。

服部 本音をいえば、切り合って1手勝ちするのが理想と思いますが、自分の場合は手厚く受ける将棋が多いかもしれません。

――先ほど、いい将棋はどちらが勝つかわからないとおっしゃっていましたが、本局はいかがでしょうか。

服部 本局は途中までずっとわかりませんでしたし、充実している時間は長かったです。ただ、読み抜けもあったのでそこは残念でした。

――1回目や2回目の優勝と感情は違いますか。

服部 やはり1回目優勝のときよりは落ち着いたのかなと思います。

――第2局からすぐに本局を迎えました。本局に向けて、どのように過ごされていましたか。

服部 第2局は早い段階でこちらがバランスを崩してしまいました。本局に向けて、均等の取れた将棋を指せるようにと思っていましたが、斎藤六段は幅広い作戦家ですので、相手についていく感じで指せたらと思っていました。

――3回目の新人王になりました。その間、服部さんほど勝たれていると、タイトル挑戦がなかったのも意外な感じもします。

服部 1回だけ叡王戦で挑戦者決定戦にいきましたが、もう3年前になります。そこからは、なかなかタイトル戦の上位に行けていません。逃した直後にまたチャンスはくるかなと思いましたが、なかなか本戦に進むのも難しいです。なんとか竜王戦や順位戦はクラスが上がっているので、もう1歩頑張りたいです。

――駆け出しのころはAIをあまり使っていないと聞きました。研究の仕方は変わりましたか。

服部 プロになって2、3年目から使うようになりました。公式戦や練習将棋などで自分の指した将棋で気になったところや弱点の補強に使うようにしています。

――新人王戦を最高の形で卒業されて、今後の目標をお願いします。

服部 3年前の初優勝のときと同じく、まずタイトル挑戦を目標にしていて、順位戦でB級1組にいるのでA級昇級を狙えるようにと思っています。

――タイトル戦の常連の棋士とご自身の間で、超えられないものは結果だけでしょうか。

服部 タイトル常連の棋士やA級棋士とは、読みの精度が足りていないと感じます。

――ここ2年ほどで、定跡だけでなく手将棋になる潮流も強くなっていると思います。服部七段はどう感じていますか。

服部 ここ1、2年で雁木などが増えてきたように感じます。見ていて楽しいですし、やっていても楽しいと感じる一方で、力戦だけでなくて研究勝負もあるので難しい時代になったと思っています。

――体力のある将棋というイメージもあります。体作りも継続されていますか。

服部 対局がない日は5キロくらい走るようにしています。遠征のときは走りませんが、研究会のあとなどに走っています。

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以上で本局の中継は終了となります。第57期新人王戦もご注目ください。
(銀杏)

感想戦(2)

Dsc_0861(佐々木八段も検討に口を挟む)

Dsc_0880(対局者に笑顔が見られるようになった)

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Dsc_0891(感想戦は1時間以上行われて、18時18分ごろに終了した)

(銀杏)

感想戦(1)

Dsc_0811(感想戦を佐々木勇気八段が見にきていた。佐々木八段は昨日にA級順位戦を戦ったばかり)

Dsc_0822(佐々木八段は第45期で準優勝)

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(銀杏)

終局直後

終局直後にインタビューが行われました。 (銀杏)

Dsc_0807(インタビューを受ける両対局者)

――2連覇、3回目の優勝となりました。いまのお気持ちをお願いします。

服部 終わったばかりであまり実感がわいていないところです。3回目の決勝で、1回目や2回目と比べて緊張が少ないのかなと思ったのですが、将棋盤の前に座ると3局とも緊張感がありました。やはり、何回出ても慣れないものだなと思いました。

――手に汗握る状況が続いた将棋だったと思います。服部七段から見て、今日の一局を振り返っていかがでしょうか。

服部 力戦で一手一手が難しい将棋でした。▲4五銀(35手目)と打って動いたときは△3三銀で収まるような感じで考えていたのですが、長考されていたので△6五歩とされるのかなと。激しい変化になるので、そこからは引き返せない戦いになって▲4五銀が軽率だったのかと後悔みたいなものはありました。終盤は馬を抜かれたあたり(88手目△5三竜で後手が先手の馬を取った)は負けにしたと思いました。△5二玉(100手目)のところはうまい手があれば先手が勝てるのではと思いました。ただ、△7七歩(104手目)に▲同桂では変調な気はしていました。

――終盤まで勝ちが見える感じではなかったのですね。

服部 そうですね。最後の最後までわかっていなくて。むしろ、△9四金(112手目)に最初は焦っていたくらいです。△7七歩を取る組み立ては違うなと思ったのですが、どう指すべきかわからず、終始難しいと感じていました。

――最後の新人王戦で、有終の美を飾られました。そのあたり、どのように感じていますか。

服部 途中で昇段して最後の新人王戦になったので、できる限り対局したいと思っていました。決勝にこられて斎藤さんと3局指せたのは充実した時間だったと思います。反省点のある将棋もありましたが、全体的には自分の力を出しきれたと思っています。

――今後の抱負をお願いします。

服部 3年前に初めて新人王を取ったときに、次はタイトル挑戦といったのですが、いまだに叶えていないのでタイトルを挑戦したいです。
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(終局から時間がたっていないため、服部七段の表情が硬い)

Dsc_0784(インタビューを終えて、グッと口を結ぶ)


――いまのお気持ちをお聞かせください。

斎藤 馬を取って抜け出したと思った直後に読みがすっぽ抜けたところがあって。△6五桂(90手目)がよくなかったと思うのですが、もう少し腰を落ち着けるくらいの気持ちの余裕が欲しかった気がします。残り時間が10分くらいあったので、もう1回読みを入れ直す必要があったと思います。精神的な甘さが出てしまったところは残念でした。

――斎藤六段は年齢の点で今回の新人王戦が最後でした。

斎藤 最後ですので、盛り上げていきたいと思っていたので、服部さんと3局指せたことは充実感があってよかったと思っています。決勝まで戦えたのは今期の成績からすると、新人王戦に星が集まってくれて集中できて指せていたのかなと思います。ただ、最後の最後に悔いが残るところがあるので、実力が足りなかったかなと感じています。
――斎藤六段にも今後の抱負をお願いします。

斎藤 課題が多く残る将棋になってしまったので、決勝で戦った3局を含めて、内容をしっかりと反省して、棋力向上に努めていけたらと思っています。

Dsc_0790(斎藤六段は終盤のミスを悔やんでいた。惜しくも初優勝ならず)

服部七段が3回目の優勝を果たす

第56期新人王戦決勝三番勝負第3局の▲服部慎一郎七段-△斎藤明日斗六段戦は、16時42分に123手で服部七段の勝ちとなりました。消費時間は▲服部2時間43分、△斎藤明3時間0分。
三番勝負は服部七段が2勝1敗で制して、昨年に続いての優勝。新人王戦史上4人目となる通算3回目の優勝を果たしました。四段昇段後に新人王戦に5期参加して3回優勝は快挙といえます。(銀杏)

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先手も嫌らしい形に

20251027_108図は108手目△9五桂の局面。いよいよ最終盤戦です。堅陣だった先手玉にも王手がかかって、嫌な形になってきました。スパートをかけて、どちらが先にゴールテープを切るか。(銀杏)

斎藤六段が秒読みに入る

20251027_91図は91手目▲8七玉の局面。ここで斎藤六段は持ち時間を使いきって秒読みに入りました。△6九角で詰めろをかけましたが、▲7九銀打と固められて後続手が難しいです。局面は先手よしとなったようで、佐藤紳七段は「斎藤くんがピンチですね」と話します。斎藤六段としては、うまい手段をひねり出せるか。(銀杏)

Dsc_0349001(終盤に入り、服部七段が一歩抜け出した)

迫力ある終盤戦

20251027_75図は75手目▲7五角の局面。ここから△5八銀▲同金△4九飛▲5九歩△5八と▲同玉△4七角成▲6八玉△5九飛成▲7七玉△5三竜と進みました。技の掛け合いが延々と続いている印象です。斎藤六段の残り時間が10分程度とあって、△5八銀から△5三竜まで1分30秒ほどで進みました。互いに盤に近づいて考え込む、迫力ある終盤戦です。(銀杏)

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Dsc_0739(検討する佐藤紳七段も険しい表情だ)

強い手

20251027_61図は服部七段が61手目に▲3五角と出た局面。一例として、△6五飛▲2六飛△5七歩成の攻め合いが調べられています。一見、後手が勝っていそうに思えますが、実際は先手が▲7六歩と催促すると、後手から有効な攻めが難しいようです。控室では佐藤紳七段が▲3五角の深い読みに感心しています。図で長考する斎藤六段は残り30分を切りました。(銀杏)

Dsc_0588(強手でポイントを稼ごうとする服部七段)

対局者のおやつ

14時ごろに、対局者におやつの「生チョコのロールケーキ」が出されました。飲み物は、服部七段が「棋の音スカッシュ(グリーン)」、斎藤六段は「棋士カプチーノ」でした。いずれも「棋の音カフェ」のものです。 (銀杏)

Dsc_0714(対局者のおやつの「生チョコのロールケーキ」)

Dsc_0677(服部七段の飲み物は「棋の音スカッシュ(グリーン)」)

Dsc_0479(斎藤六段の飲み物は「棋士カプチーノ」)

Dsc_0719001 (撮影用のおやつは立会人の佐藤紳七段が食べた)

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