第41期決勝三番勝負第1局 Feed

2010年10月 7日 (木)

第23期新人王、来訪

昼休みの控え室に、佐藤秀司七段がフラリ。田中九段が佐藤七段をつかまえて、「過去の新人王です」とアピール。佐藤七段は第23期の新人王。かくいう田中九段も第12期の新人王だ。

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(佐藤七段(左)と田中九段(右)。新人王二人のツーショット。貴重です)

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昼食休憩時の控え室

12時20分頃、控え室に青野照市九段と飯島栄治六段がやってきた。飯島六段は中継の様子を眺め、「へー、ここで中継してるんですか」と一言。青野九段は第5期、第10期の新人王。継ぎ盤の前に座り、これまでの手順を並べながら検討を行っていた。

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(意見を交わしながら検討する新人王コンビ、青野九段(左)、田中九段(右))

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(青野九段は第5期、第10期に新人王を獲得している)

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(昼食休憩までの棋譜用紙)

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昼食休憩時の対局室

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(昼食休憩時の盤面)

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(阿部四段の王将。「静山作」と彫られている)

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(加來アマの玉将。駒の書体は「錦旗(きんき)」)

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昼食休憩に入る。再開は13時より

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図の局面で加來アマが12分考え、昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲阿部59分、△加來48分。昼食の注文は両者ともになし。対局は13時より再開される。

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「加來さんにしてはおとなしい将棋だねえ」

控え室を伊藤真吾四段が訪れた。写真をお願いすると、「写真ですか。いいですよ」と照れ笑いを浮かべる。カメラ目線でもいいですよ、とさりげなくお願いすると、快く応えてくれた。控え室にはさらに片上大輔六段が来訪し、田中九段と三人で検討を開始。片上六段は継ぎ盤を見て、「加來さんにしてはおとなしい将棋だねえ。まだ歩が四段目にいるよ」と話した。

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(伊藤真吾四段)

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(継ぎ盤を挟む伊藤四段(左)、田中九段(右))

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(片上六段。加來アマとは三段リーグ時代に対戦経験もある)

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11時30分頃の対局室

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(カメラによる対局室の様子。阿部四段はかれこれ10分近く、棋譜用紙を確認している)

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「しんぶん赤旗」新人王戦特集記事

本棋戦の主催である「しんぶん赤旗」のホームページでは、今回の新人王戦に関する特集記事を読むことができる。ここではその中から、両対局者のコメントに触れてみよう。

【加來博洋赤旗名人の話】
「新人王戦は、これまですべての対局が苦戦の上での逆転でした。準決勝も内容が良かったということはなく、決勝まで残れたことを、とても幸運だと思っています。阿部四段の将棋は攻守のバランスが良く、細かな所へ視点が行き届いたきめが細かい将棋だと感じています。3番勝負には落ち着いて臨み、とにかく目の前の1局1局に集中したいと思います。今はそれだけです」

【阿部健治郎四段の話】
「今期勝率トップには自分でも驚いています。今も5連勝中でコンディションはベストの状態です。加來さんには奨励会の三段リーグで3回あたって3回とも負けました。リーグを突破できなかったのが不思議なくらい強かった。新人王戦のたたかいぶりを見ても神がかり的な勝利をあげています。私にとっても今回は大きなチャンス。そうめったにめぐってきませんから、それをつかみたい。3連敗したのは過去のこと。それにとらわれず全力を出し切りたい」

このほか、特集記事にはこれまでの新人王戦の経緯と、観戦記者の蝶谷初男さんによる見どころも紹介されている。一読すれば、新人王戦をより楽しめること間違いなしだ。

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(対局開始直前の阿部四段(左)、加來アマ(右))

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田中寅彦九段による、形勢判断のポイント

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図は11時頃の局面。ここで立会人の田中寅彦九段が、形勢判断のポイントを説明してくれた。「こういうときは手数を数えるといいんですよ。1、2、3、……後手の方が1手多く指してますね。ということはちょっと後手が得してるんですが、その得した1手が桂跳ねだからね。形を決めてるから、微妙なところですね」。
加來アマの玉がなかなか動かない、という話になると、「形を決めないというのは、無限の可能性があるんですよ」と答える。そして「しかし加來さんは新人らしくない指し回しですねえ!」と感心したように言った。

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(田中九段)

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10時30分頃の対局室

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(カメラによる対局室の映像。加來アマが盤面に覆いかぶさるようにして考えている)

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加來アマ、4手目△3三角戦法を採用

定刻になり、互いに一礼。先手の阿部四段はひと呼吸おいてから▲7六歩を着手。加來アマは△3四歩と応じ、▲2六歩△3三角(図)と進んだ。
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この△3三角は後手番の有力戦法で、居飛車・振り飛車の両方に変化できる幅の広い指し方。定跡とは離れた戦いになりやすく、力戦形を得意とする加來アマが用意してきた作戦だろう。佐藤五段は「プロでは一時期流行して下火になって、また最近復活の兆しの見える戦法です。後手は居飛車、振り飛車両方の可能性があります。先手の指し手によっても展開が変わってきます」と解説している。
図からは▲3三同角成△同桂と進む例が圧倒的に多い。序盤早々桂を跳ねる形になるのがこの戦型のポイント。桂跳ねを手得として生かしたい後手と、悪形としてとがめたい先手。両者の思惑が交錯する。加來アマの工夫を凝らした作戦と、阿部四段の対応に注目だ。

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