囲み取材
感想戦後、服部七段に囲み取材が行われました。
――熱の入った感想戦でした。どのような感じの検討でしたか。
服部 手将棋だったので、指していたときはわからない変化が多かったです。途中は少し指せると思った局面があったのですが、検討するとそんなことはなくて難しい将棋でした。最後も自分としてはスッキリとした勝ちを見つからなかったので、感想戦をしてみると、対局中はもう少し冷静にならないといけないと感じました。△5二玉とされたときに、局面は勝ちと思ったのですが、スッキリとした勝ちが見えずに焦った部分もありました。感想戦で▲9八玉という手を指摘されて、普段ならそういう手は好きなので思い浮かぶはずなのですが、視野に入っていなかったので冷静になれていなかったと思います。
――新人王戦決勝三番勝負を経験している服部七段でも、そういうところで冷静になりきれないところが勝負にはあるのですね。
服部 その前が負けにしたと思って、そこから逆転したと感じた局面でもあったので気持ちが落ち着いていなかったと思います。△5八銀から5三で馬を抜かれる手順を軽視していて、優勝を逃してしまったかなと思っていました。そのあと▲4三歩と垂らしたあたりは逆転したと思ったのですが、スッキリとした勝ちが見えませんでした。それで焦ってしまったところはあります。
――3回目の優勝でした。新人王戦では4人目になります。
服部 特に意識はしていませんでした。今期で最後の出場なのでいい将棋を指したいという気持ちがトーナメントの途中からも思っていました。
――服部七段にとって「いい将棋」はどういうものでしょうか。
服部 最後の最後までどちらが勝つかわからない将棋が個人的に好きですね。
――勝負ごとではありますが、勝ち負けがわからない勝負のほうが好きですか。
服部 そうですね。逆転勝ちも多い棋風でもありますし、好きですね。
――対局を拝見していると、受けが強くて相手に攻めさせるけど受けつぶして、最後は寄り切るような将棋に見えますが、理想の将棋の形はありますか。
服部 本音をいえば、切り合って1手勝ちするのが理想と思いますが、自分の場合は手厚く受ける将棋が多いかもしれません。
――先ほど、いい将棋はどちらが勝つかわからないとおっしゃっていましたが、本局はいかがでしょうか。
服部 本局は途中までずっとわかりませんでしたし、充実している時間は長かったです。ただ、読み抜けもあったのでそこは残念でした。
――1回目や2回目の優勝と感情は違いますか。
服部 やはり1回目優勝のときよりは落ち着いたのかなと思います。
――第2局からすぐに本局を迎えました。本局に向けて、どのように過ごされていましたか。
服部 第2局は早い段階でこちらがバランスを崩してしまいました。本局に向けて、均等の取れた将棋を指せるようにと思っていましたが、斎藤六段は幅広い作戦家ですので、相手についていく感じで指せたらと思っていました。
――3回目の新人王になりました。その間、服部さんほど勝たれていると、タイトル挑戦がなかったのも意外な感じもします。
服部 1回だけ叡王戦で挑戦者決定戦にいきましたが、もう3年前になります。そこからは、なかなかタイトル戦の上位に行けていません。逃した直後にまたチャンスはくるかなと思いましたが、なかなか本戦に進むのも難しいです。なんとか竜王戦や順位戦はクラスが上がっているので、もう1歩頑張りたいです。
――駆け出しのころはAIをあまり使っていないと聞きました。研究の仕方は変わりましたか。
服部 プロになって2、3年目から使うようになりました。公式戦や練習将棋などで自分の指した将棋で気になったところや弱点の補強に使うようにしています。
――新人王戦を最高の形で卒業されて、今後の目標をお願いします。
服部 3年前の初優勝のときと同じく、まずタイトル挑戦を目標にしていて、順位戦でB級1組にいるのでA級昇級を狙えるようにと思っています。
――タイトル戦の常連の棋士とご自身の間で、超えられないものは結果だけでしょうか。
服部 タイトル常連の棋士やA級棋士とは、読みの精度が足りていないと感じます。
――ここ2年ほどで、定跡だけでなく手将棋になる潮流も強くなっていると思います。服部七段はどう感じていますか。
服部 ここ1、2年で雁木などが増えてきたように感じます。見ていて楽しいですし、やっていても楽しいと感じる一方で、力戦だけでなくて研究勝負もあるので難しい時代になったと思っています。
――体力のある将棋というイメージもあります。体作りも継続されていますか。
服部 対局がない日は5キロくらい走るようにしています。遠征のときは走りませんが、研究会のあとなどに走っています。


