2023年5月22日 (月)

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12時、西山女流三冠が約7分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲西山女流三冠39分、△加藤女流三段1時間19分。昼食の注文は西山女流三冠が豚しゃぶ〈梅しそ〉弁当(鳩やぐら)、加藤女流三段がA定食のライス半分(紫金飯店)。A定食は「鶏肉の甘辛黒胡椒炒め」です。対局は12時40分に再開されます。

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西山女流三冠が好調に攻めています。7筋の折衝から▲9五角(39手目)と端に出た手がよく利いていて、▲5二歩(43手目)と垂らした局面は驚いたことに、次の▲5一歩成を受ける適当な手段がありません。加藤女流三段は2筋が壁になっているのも苦しい要素です。

西山女流三冠は女王・女流名人・女流王将の三冠を保持。今年2月に女流名人を獲得して女流三冠に復帰して以降、負けなしの13連勝で本局を迎えます。本棋戦では初参加となった前期で予選を突破し、挑戦者決定戦に進む活躍を見せました。今期は予選で島井咲緒里女流二段に勝ち、室谷由紀女流三段に敗れて再挑戦トーナメントに回り、塚田恵梨花女流初段(現女流二段)、中井広恵女流六段、川又咲紀女流初段、香川愛生女流四段、山根ことみ女流二段に勝って予選通過。本戦で甲斐智美女流五段に勝ち、前期に続いて挑戦者決定戦進出を決めました。初挑戦を目指します。

加藤女流三段は第3期に里見清麗を3勝2敗で破って清麗を獲得しました。前期は里見女流四冠(当時は女流王座・女流王位・女流王将・倉敷藤花の四冠を保持)の挑戦を受けて失冠。再出発となった今期は予選で佐々木海法女流1級、加藤結李愛女流初段、北村桂香女流二段、清水市代女流七段、石本さくら女流二段、甲斐女流五段に勝って6連勝で予選通過。本戦で鈴木環那女流三段に勝って挑戦者決定戦に進みました。本局に勝てば里見清麗と3期連続の五番勝負になります。

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両者の対戦成績は西山女流三冠10勝、加藤女流三段9勝。ともに奨励会在籍時代の成績を含みます。タイトル戦はこれまでに3度戦い、2014年の第4期リコー杯女流王座戦五番勝負は加藤女流三段が女流王座獲得、2018年の第11期マイナビ女子オープン五番勝負は西山女流三冠が女王奪取、2020年の第13期マイナビ女子オープン五番勝負は西山女流三冠が女王防衛。2022年の第12期リコー杯女流王座戦挑戦者決定戦では加藤女流三段が勝って挑戦権を得るなど、直近では加藤女流三段が3連勝中です。

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戦型は西山女流三冠の先手中飛車と加藤女流三段の居飛車で対抗形に進んでいます。10時半ごろ、西山女流三冠が▲7五歩(33手目)と攻めました。狙いとして△7五同歩なら▲7四歩△6五桂▲9五角、△7五同銀なら▲同銀△同歩▲5五角といった順があります。直前に▲1八香(31手目)と上がって穴熊に囲う姿勢だっただけに意外なタイミングでした。加藤女流三段が△7三桂(32手目)と跳ねて桂頭の弱点が生じたことを見越して積極的に動いています。

対局室となる特別対局室に、まず9時37分ごろに西山女流三冠が入室。加藤女流三段は9時55分ごろの入室でした。西山女流三冠が駒箱を開けて、二人が駒を並べていきます。振り駒が行われ、歩が3枚出て西山女流三冠の先手に。定刻の10時に対局が始まりました。

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大成建設杯第5期清麗戦は里見香奈清麗への挑戦権を懸けた戦いがいよいよ大詰めを迎えます。挑戦者決定戦に勝ち上がったのは西山朋佳女流三冠と加藤桃子女流三段。西山女流三冠が清麗初挑戦を決めるか、加藤女流三段が復位を目指すリベンジの舞台に立つか。
対局は5月22日(月)、東京・将棋会館で10時開始。持ち時間は各3時間(チェスクロック使用)、使いきると1手60秒未満の秒読み。先後は振り駒で決定します。
インターネット中継は棋譜・コメント入力を睡蓮、ブログを文が担当します。

【主催:大成建設】
https://www.taisei.co.jp/

2022年8月 3日 (水)

Dsc_4471(大成建設株式会社建築営業本部の大屋龍一郎統括営業部長から花束の贈呈が行われた)

Dsc_4516(圧巻の強さでリターンマッチを制した)

Dsc_4620(穏やかな表情で質問に答えた)

Dsc_4799(今期は充実ぶりを示すかのような強い内容だった)

【里見香奈新清麗インタビュー】
――清麗は前期奪取されてしまったタイトルでした。1期での復位について。
里見「前期は力不足を実感しました。今期は1、2局目と課題の残る将棋ではありましたが、自分の力を出しきれたと思います」
――清麗というタイトルへの思いは。
里見「清麗というタイトル称号は個人的にかっこいいと思っていて。大成建設様にはタイトル戦を作っていただいて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」
――清麗に復位して女流五冠となりました。過半数を制したことについて。
里見「今期も課題の残る将棋はありました。次に生かせるように勉強していかないといけないという気持ちと、まだまだ実力不足が目立ちますので、安定した将棋を指せるように頑張りたいです」
――全冠制覇を期待するファンについて。
里見「相当、難しいと思いますので、目の前の対局の力を尽くせるよう頑張りたいです」
――加藤前清麗についての印象や、事前の対策はありましたか。
里見「加藤さんは勢いよく攻められると同時に、悪くなっても粘り強い印象です。研究も深くされていますので、そのあたりに気をつけながら準備をしていました」
――このシリーズに向けての準備や研究はありましたか。
里見「自分があまり指したことのない戦型選択をしましたが、難しさを感じるところもあり、そのあたりが今後の課題だと思っています。ただ、大きな舞台で挑戦できたことはよかったです」
――今後の対局に向けての抱負を教えてください。
里見「ありがたいことに対局がいい間隔でついているので、目の前の対局に力を尽くせるよう、体調を整えて頑張りたいです」
――好成績を収められ、充実しているように思います。理由は何かありますか?
里見「昨年から女流棋戦の対局数が増えたのが大きいです。やはり対局が最大の勉強で、それによって生活にハリが生まれました。また、谷川先生に4人の研究会で将棋を教えていただく貴重な時間は本当にありがたいことです」
――第1局での四間飛車の採用は珍しかったように思います。
里見「将棋の基本である矢倉と四間飛車に憧れがありました。研究勝負ではなく、力勝負をタイトル戦で指したいという気持ちがありました。清麗戦は女流棋戦最長の持ち時間で、一手一手考えて将棋を作り上げていくということに重点を置いていました。研究で終わるような将棋にはしたくありませんでしたし、加藤さんと互いに力を出して将棋を作り上げたかったので指しました」
――過密日程のなかで心がけていることはありますか。
里見「最も基本となる体調管理です。研究で行き詰まることもありますが、自分が深めたい戦型や新しい形を掘り下げていくことを、なるべく自分の中で楽しみが生まれるようにやっています」

共同記者会見より抜粋
(撮影=琵琶 書き起こし=武蔵)

Dsc_4192(投了図。里見女流四冠が清麗復位と女流五冠に)

Dsc_4200(終局直後の様子)

Dsc_4338(コメントを振り絞る両対局者)

Dsc_4342(タオルを首筋に当ててクールダウンをはかる)

Dsc_4283(3連敗と振るわなかった加藤前清麗)

Dsc_4358(感想戦は約40分で終了した)

Dsc_4222(3連勝で復位を果たした里見清麗)

【勝った里見香奈女流四冠】
――一局を振り返ってください。
里見「後手番でしたが、うまく手に乗って攻めることができたかなと思います」
――△6二玉(10手目)が工夫の一手だと思いますが、用意されていた順だったのでしょうか。
里見「作戦のひとつとして考えていました」
――先手の仕掛けに対して△3六歩(48手目)から反撃に転じました。局面をどう見ていましたか。
里見「7四銀が一瞬ですが手厚い形なので、右辺で戦いになれば少し分がいいのかなと思っていました」
――△3八飛(64手目)と敵陣に飛車を打ち込んで先手玉を寄せに行きました。このあたりはどう思われていましたか。
里見「一瞬、王手が掛かる形だったので、対局中は不安はあったんですが、攻め合い勝ちしそこねていました」
――勝ちを意識したのはどのあたりですか。
里見「△6九竜(90手目)~△7八金で勝ちになったかなと思いました」
――主催者である大成建設の豪華なホテルでの対局が続きました。振り返ってください。
里見「将棋の内容は1、2局目がちょっと反省の残る将棋ではあったのですが、3局目は立て直すことができたと思います。対局場に関してはコロナ禍ではありましたが、東京・新潟・名古屋と各地を巡らせていただきました。ホテルは普段泊まることのできないような豪華なところで、細かい部分までお気遣いをいただいて感謝しています」
――3連勝で復位、同時に五冠にも返り咲きました。今のお気持ちと今後の抱負をお聞かせください。
「課題の残る将棋もあったんですけど、今後に生かせるように頑張りたいと思います」

Dsc_4319(ストレート負けで失冠した加藤前清麗)

【敗れた加藤桃子清麗】
――一局を振り返ってください。
加藤「意外な出だしでちょっとびっくりしたんですけど。あまり無理なく行こうと思ったんですが、▲7五歩(41手目)から仕掛けて行ったところが少しやり過ぎてしまったというか。7筋の力関係がよくわかっていなかったので、形勢判断がおかしかったのかもしれないですね。昼食休憩のあたりは決断が迫られるか、もしくは悪い局面だったので、仕掛け方というか待ち方をなんとかしなくてはいけない将棋でした」
――対局中はどのように感じていましたか。
加藤「▲7五歩はこの一手だと思っていて。指したときは模様を良くできる可能性が高いかなと思ってはいたのですが、そのあとが△3六歩▲同銀(49手目)で銀が3筋にいってしまったので、そこから自信がなくなってしまったような感じでした」
――昼食休憩中はほとんど盤から離れないで考えていらしたと思いますが、△5六歩(52手目)が厳しいと考えられていたのでしょうか。
加藤「あっ、そうなんですね。△5六歩が厳しいか指されたときはわかっていなくて。どこまでリスクヘッジをするか、強気に行くかがわからなかったです」
――▲7四歩(63手目)と角取りを放置されて後手玉に迫る勝負手に思えましたが、このあたりの感触はいかがでしたか。
加藤「あまり自信がないですね」
――今期の五番勝負を対局場の印象を踏まえて振り返ってください。
加藤「どこも大成建設さんがすごく大事にされているホテルだと思います。そういった場所で対局をさせていただけたのがすごく光栄でした」
――昨年、タイトルを取ってから今日までいかがでしたか。
加藤「1年も経っていないので最短で失冠という感じになってしまって。残念というか、里見さんにもたくさん教わりたかったですし、自分の力が足りなかったのでまた立て直したいと思います」

Dsc_4255(終局直後に行われたインタビューの様子)