2025年5月

2025年5月21日 (水)

大成建設杯第7期清麗戦五番勝負の対局場と日程は以下の通りです。

第1局 7月10日 東京都千代田区「ホテルニューオータニ」
第2局 7月23日 福岡県福岡市「ホテルオークラ福岡」
第3局 8月7日 神奈川県箱根町「山のホテル」
第4局 8月19日 大阪府高槻市「関西将棋会館」
第5局 8月26日 東京都渋谷区「将棋会館」

本日はご観戦ありがとうございました。福間香奈清麗と渡部愛女流四段が対戦する五番勝負は7月に開幕します。どうぞお楽しみに!

Dsc_4466(挑戦権を獲得した渡部愛女流四段にインタビューが行われた)

Dsc_4503(質問によっては笑みがこぼれた)

――感想戦を終えて、あらためて現在の感想をお聞かせ下さい。

渡部 2021年にタイトル戦に出てから4年ぐらい出られなかったので、今の気持ちとしては素直にうれしく思います。

――加藤女流四段とは予選で対戦がありました。今日はどういうお気持ちで臨まれましたか。

渡部 予選では負けているのですが、そのことを忘れていました。一局に集中して臨もうと思っていました。

――相掛かりの戦いとなり、角の使い方が見事な展開になりました。

渡部 早々から想定と外れて力戦になりました。棋風だから踏み込んだのですが、ひとつ受けがあればダメな状況ではあるので、お昼前から勝負どころだなと思っていました。

――角を捨てて香を成り込んだあたりはいかがでしたか。

渡部 ▲2七歩と打たれた局面で3つの手を考えていました。本譜の△1七角成と△3七角成▲同歩に△2四歩と突いて、▲3六銀なら△同銀▲同歩△3七桂と打つ筋。あとは△1五角と引いて▲1六歩に△2四角で角銀交換を甘受する順です。ただ、どれも自信が持てなくて。△1七角成がいちばん戦えるのではないかといった判断でした。

――あらためて本局を振り返って。

渡部 もうちょっといい受け方があったのかなと思うのですが……。本譜はかなりギリギリになっていて、追い込まれていたので、受け方を勉強しないといけないなと思いました。

――福間香奈清麗との五番勝負をどのように戦いたいですか。

渡部 福間さんは先手中飛車をメインにされていますが、いろいろな形が見られて、私も普段から勉強をさせていただいております。自分の力を出しきれるように、しっかり準備をして臨みたいと思います。

――タイトル戦から遠ざかっていた間はどのように棋力を高めてきたのでしょうか。

渡部 2021年よりもいろいろなことに挑戦してみようという気持ちが強くて。例えば横歩取りのような指したことがない戦型も公式戦で使えるようにということを日々意識して、いろいろな戦型を勉強することを重点に置いてやってきました。

――棋力向上にうまくつながったのはどのあたりですか。

渡部 棋力が向上しているのかがわからないのですが(苦笑)。いろいろな将棋を知るといろいろな手筋などが応用できることがわかったので、たくさんの手を知るというところを大事にしたいなと思っていたのが、たまたま今回の対局につながったのかなと思います。

――今回の勝ち上がりについてはどう受け止めていますか。

渡部 本戦では不戦勝(西山朋佳女流三冠戦)がありました。ファンの方にも「西山さんの分まで頑張ってほしい」と何度も言われました。私もそう思いましたので、西山さんのためにもしっかりした将棋を指さないとという気持ちでした。

――7月10日開幕の清麗戦に向けてどのような準備をされますか。

渡部 他の対局もたくさんつくと思いますが、清麗戦のタイトル戦ということで、また違った戦いになります。まずは体調を崩さないというところを第一に考えたいと思います。

――福間清麗との戦いで、現状での自信はどのぐらいですか。

渡部 正直にいうと全然ないのですが……。これから自信をつけられるように準備していけたらと思います。

――コーチである野月浩貴八段と結婚して1年が経ちました。結婚がいい影響を与えたのでしょうか。

渡部 ここ数ヶ月、対局が多めになっていて。対局に集中できる環境を野月が作ってくれていたところもあるので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――集中できる環境とは、具体的にどういったことでしょうか。

渡部 家事は分担制で、お互いの対局前は多めにやったりしています。今回は野月に家事負担が多くなっていました。もちろん私もやっていますよ(笑)。将棋に集中できるかどうかは大きいので感謝しています。

――好調の要因はご自身ではどう感じていますか。

渡部 形勢が悪くなっていることも多いので、運がいいという部分はあると思いますが、しっかり食べて寝て、純粋に将棋に集中できるのがいちばん大きいのかなと思います。

――最近の勉強方法は?

渡部 研究会でいろいろな方と将棋を指したり、AIを使っての定跡研究だったり。最近は棋譜並べをやっていますが、以前とあまり変わっていません。

――野月八段とは将棋を指されるのですか。また今日の対局に向けてどんなアドバイスがありましたか。

渡部 最近は指していなくて。口頭で譜号をいい合う感じで。アドバイスに関しては、今朝LINEで「落ち着いてしなさい」的な文章がきました。

――福間清麗との大きな勝負は久々になります。2019年の女流王位戦で対戦されてから、しばらく観戦者として福間女流の将棋を見てきたと思いますが、どのようなところに進化を感じますか。

渡部 福間女流と西山女流のタイトル戦はもちろん毎回観戦していますが、最近は力戦の将棋が多い印象がありまして。定跡形だけではなく、本当に力が試されるといいますか、将棋の局面を捉える力を上げていかないと上のステージでは戦えないかなというのが率直な感想です。ですので、いろいろな手を知ることをこれからも大事にしていきたいです。

Dsc_4478(真っ直ぐな視線でインタビューに応じる渡部女流四段)

Dsc_4385(タイトル挑戦を決めた渡部女流四段)

Dsc_4403(2期連続挑戦とならなかった加藤桃女流四段)

Dsc_4417(好局を振り返る渡部女流四段)

Dsc_4437(誤算が響いて完敗を喫した加藤桃女流四段)

Dsc_4426_2(感想戦の様子)

Dsc_4377(勝った渡部女流四段)

【勝った渡部愛女流四段の談話】
――本局を振り返って下さい。

渡部 相掛かりの力戦系になりました。昼食休憩前の△2六角(44手目)がうまくいくかどうかが勝負だと思っていて。それがうまくいかなければもうダメになっているかなと思っていました。銀香を取って少し持ち直したのかなと思っていました。

――形勢がよくなったと感じたのはどのあたりですか。

渡部 △6七銀(84手目)と絡んで寄せの形が見えてきて、いいのかなと思いました。

――勝ちを意識したのはどのあたりですか。

渡部 最後の最後までわかりませんでしたが、△8三同飛(104手目)と歩を取って、自玉が大丈夫だとわかって勝ちになったかなと思いました。

――2021年の白玲戦以来のタイトル戦登場になります。意気込みをお願いします。

渡部 せっかく出られることになったので、心身ともにしっかりと準備をして、将棋もこれまで以上に勉強したいと思っております。

Dsc_4381(敗れた加藤桃女流四段)

【敗れた加藤桃子女流四段の談話】
――本局の内容はいかがでしたか。

加藤 苦しい時間が長かったです。

――どのあたりで苦しさを感じましたか。

加藤 昼食休憩ぐらいから△2六角を軽視というか、大丈夫かなと思っていたのですが、うるさいことに気づいてからはきつかったですね。

――勝負を分けた分岐点はどのあたりだと感じましたか。

加藤 全然ダメだと思っていて。▲3八歩(43手目)がひどいのかなと。そこに尽きるのかなと今は思っています。

Dsc_4374(終局直後の様子)

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▲加藤桃-△渡部戦は112手で渡部女流四段が勝ちました。終局時刻は16時5分。消費時間は、▲加藤2時間40分、△渡部2時間43分。勝った渡部女流四段が福間香奈清麗への挑戦権を獲得しました。五番勝負第1局は7月10日(木)に東京都千代田区「ホテルニューオータニ」で行われます。

20250521j▲加藤桃-△渡部戦は図の局面を迎えています。先手は玉を右辺に逃げ出しましたが、1八の成香が行く手を阻んでいます。△5七歩以下、▲6七金△同成銀▲5九歩△2九成香▲3九銀△8七香成と進み、渡部女流四段が勝勢になったようです。

Dsc_4084(勝勢を築いた渡部女流四段)

20250521h▲加藤桃-△渡部戦は、先手が食らいついて▲5三同歩成(1図)とと金を作りました。以下△3二玉▲1三歩△同金▲6三と△8三香▲9八銀△6七銀(2図)と進んでいます。

20250521i加藤桃女流四段が5筋を突破したものの、渡部女流四段の反撃が厳しいようです。後手が優位を維持しています。

Dsc_4295(冷静沈着な指し回しで優位を維持する渡部女流四段)

Dsc_4185(将棋会館の外観。設計・施工は大成建設株式会社が担当した)

Dsc_4194(将棋会館の石碑)

Dsc_4197(木村義雄十四世名人の書)

Dsc_4206(将棋会館の玄関)

Dsc_4219(1階に併設されている棋の音に行ってみた)

Dsc_4224(扇子や手ぬぐいが展示されている)

Dsc_4236(推し棋士や女流棋士の扇子を探そう)

Dsc_4243(扇子だけではなく、将棋盤や駒も販売されている)

Dsc_4250(お手軽に購入できるプラ駒やビニール盤、駒袋なども販売している)

新将棋会館の設計と施工は大成建設株式会社が担当しました。各所には様々な工夫が施されています。詳しくは日本将棋連盟ホームページのコラムをご参照ください。

【50余年の歴史と重み!旧から新へと受け継ぐヒューリック将棋会館の全容とこだわり、そして設計者だからこそのウラ話<前編>】
https://www.shogi.or.jp/column/2024/11/kaikan_interview_part1.html

【数々繰り広げられた名勝負の舞台!旧から新へと受け継ぐヒューリック将棋会館の全容とこだわり、そして設計者だからこそのウラ話<後編>】
https://www.shogi.or.jp/column/2024/12/kaikan_interview_part2.html



20250521f▲加藤桃-△渡部戦は▲1二角(1図)が先手の勝負手のようです。△2二金と寄られて角が捕まっていますが、以下▲6六歩△1二金▲6五歩△2三角(2図)と進みました。

20250521g▲6六歩が△7六銀に▲5六角成を見た▲1二角の後続手です。先手は中央を薄くして5筋の歩を伸ばしていくことになるでしょう。
対する後手の△2三角(2図)が遠見の角で、急所の7八金をにらみながら△5六香と打って飛車の利きを止める手を見ています。それでも加藤桃女流四段は懸命に食らいついていきます。

Dsc_4300001(勝負手を放って食らいつく加藤桃女流四段)

Dsc_4267(取り壊される旧将棋会館。建物の内部に重機を入れるために足場の一部が外されていた)

Dsc_4275(外壁のレンガが全て剥がされて、コンクリートがむき出しになっていた)

Dsc_4278(この後は再び足場が組まれるため、建物が見られるのはこれがラストのようだ)