大盤解説会へ
両対局者は局後インタビューのあとに大盤解説会でファンにあいさつしました。
伊藤真六段 ▲3六馬(59手目)の局面をどういう気持ちで見ていましたか。
伊藤 はっきり自信のない順は見えていなかったのですが、よくわからないまま指していました。
伊藤真六段 藤井叡王は▲3六馬に長考していました。難しい局面でしたか。
藤井 そうですね。後手の攻め方としては持ち駒の銀の打ち方が4七、2七、4五の3カ所あって、△6六飛と切る手、△8七歩成とする手もあります。それらの組み合わせでどれか勝負できる順があればと思っていましたが、考えてみてもそういう順が発見できなかったかなというところでした。
村田 一局を振り返っていかがでしょうか。
伊藤 本局は早い段階から前例の少ない将棋になって、午前中から激しい展開になりました。午後に入ってからは一手一手が選択肢の広い局面が続いて、非常に難しい将棋だったと思います。
藤井 こちらから動いていく将棋でしたが、伊藤七段に手厚く受け止められて、最後はきっちりカウンターを合わされてしまった一局だったと思います。
村田 次局に向けての意気込みをお願いします。
伊藤 次局は2週間ほど空くと思うのですが、しっかりコンディションを整えて臨めたらと思います。
藤井 1勝1敗という形になりましたが気を取り直して、叡王戦は2週間後になるので、その間にしっかり準備をしたいと思います。
村田 お越しくださったみなさまにメッセージをお願いします。
伊藤 なんとかタイに戻すことができたので、前向きに準備していきたいと思います。本日はありがとうございました。
藤井 形勢判断の甘い部分が出たと感じています。そのあたりを修正しつつ第3局を熱戦にできたらと思います。
終局直後
(局後インタビューを受ける伊藤匠七段。タイトル戦での初勝利、13局目での対藤井叡王戦の初勝利となる大きな一勝を挙げた)
―――先手で角換わりを目指す戦いでした。序盤の構想はいかがでしたか。
伊藤 早い段階で前例の少ない形になって、一手一手を手探りで指していました。
―――△3三金型の早繰り銀にということでしょうか。
伊藤 そうですね。
―――前例がない中で、どういうことに気をつけながら指していましたか。
伊藤 ▲1五歩と端歩に2手かけましたが、激しく動いてこられる展開になって、一手一手難しい将棋だと思っていました。
―――38手目△7二歩で昼食休憩になりました。どのような形勢判断でしたか。
伊藤 難しいと思っていました。
―――休憩明けは後手の飛車を追って、途中は金桂交換になりました。
伊藤 互いに選択肢が広いと思っていて、よくわからないまま指していました。
―――形勢の好点や手ごたえはどのあたりで感じましたか。
伊藤 ▲4四歩と打ったあたりはいけそうかなと思っていましたが、最後もはっきりとした順は見えていないまま指していました。
―――勝ちが見えてきたのは本当に終わりのところですか。
伊藤 そうですね。
―――叡王戦1勝ということですが、藤井叡王との対戦でも初勝利でした。その感想についてはいかがですか。
伊藤 そうですね。勝てていなかったので、一つ結果が出たのはよかったです。番勝負は続くので引き続き頑張りたいと思います。
―――5月2日に名古屋で第3局が行われます。抱負をお聞かせください。
伊藤 しっかりと準備して臨めればと思います。
―――10手目に△3三角と上がられて、△3三同金という形を指されました。藤井叡王にとっては初めてと思いますが、その意図をお聞かせいただけたらと思います。
藤井 予定の作戦でしたが、かなり早く想定から外れてしまったので、認識不足だったのかなという気もしています。
―――後手番が課題といわれていましたが、試行錯誤の部分もあるのでしょうか。
藤井 △3三金の形はやったことがなかったので、やってみたらどうかとは思っていました。
―――終局直後ですが、ご自身の中で手ごたえはいかがでしたか。
藤井 昼食休憩明けに▲7七桂と跳ねられた局面がすでに自信のないような気がしました。もう少し工夫が必要だった気がします。
―――午後の戦いは、ご自身ではあまり手ごたえのない展開になってしまったのでしょうか。
藤井 △3三金型の薄さが出る展開なってしまったので、失敗しているかなと思いました。
―――60手目に残り少ない時間で△6六飛と飛車を切りました。そのあたりの成算はどのように感じていましたか。
藤井 本譜は▲2四歩の突き捨てがぴったりのタイミングではっきり負けにしてしまったかと思います。基本的に苦しいと思っていましたが、違う勝負手を掘り下げるべきだったかもしれません。
―――タイトル戦の連勝が16で止まりました。ご自身ではどのように感じていますか。
藤井 仕方ないかなと思っています。
―――今後の抱負についてお願いします。
藤井 今後も名人戦含めて対局が続くことになるので、いいコンディションで対局に臨めるようにしたいと思います。
伊藤七段が制勝
藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第2局は、18時20分に87手で伊藤七段の勝ちとなりました。秒読みの攻防の中で伊藤七段が藤井叡王の玉を詰ましました。消費時間は▲伊藤4時間0分、△藤井4時間0分。
本局の結果、五番勝負は両者1勝1敗になりました。第3局は5月2日に名古屋市「名古屋東急ホテル」で指されます。
両者秒読み
利かし
図は63手目▲2四歩の局面。8七のと金を取る前の利かしです。△2四同歩と取らせることで、後の▲2四飛から▲3四飛や、図から△2四同歩▲8七金に△4五銀▲同銀△2八角成▲3四銀(参考図)と進んだ場合に、2三に駒を打てるため先手は後手玉を攻めやすくなります。▲2四歩の利かしが、△4五銀からの直線的な攻め合いの牽制にもなるわけです。
藤井叡王は図から△2四同歩▲8七金と進んだ局面で持ち時間を使いきって秒読みに入り、△4五銀▲同銀に△同桂としました。
(叡王戦五番勝負の見届け人は特典の一つに、「対局に使用した駒をプレゼント」があり、駒を入れる平箱には両対局者と立会人が揮毫する)
【第9期叡王戦五番勝負「見届け人」を募集します】
https://www.shogi.or.jp/news/2024/03/9_31.html
両者残り30分を切る
損得微妙な王手
16時台の大盤解説会
(指し手が止まったときに不二家の特設サイトの話題を出すなど、話が止まらない楽しい解説会)