記者会見
就位式のあと、両対局者の記者会見が行われました。
(里見香奈倉敷藤花の記者会見)
ーー今日の勝負所、ご自身で決め手になったあたりを振り返っていただけますか。
「最後のあたりですが、▲7四角(107手目)~▲6四銀(113手目)で攻めることができたあたりです」
ーーその▲7四角より少し前のあたりは、我慢する展開でしたか。
「辛抱する手が多かったですし、持ち時間も私のほうが先になくなりましたし、総合的に見て苦しいと思っていました」
ーー振り飛車党の里見倉敷藤花ですが、振った飛車を戻って対抗形を選ばれたのは、事前の準備ですか。
「最近よく指していて、ほかの対策も考えていましたが、いま自分の一番やりたいことでもありましたし、大一番で試してみたい気持ちもありました」
ーー今年タイトル戦で多く戦われた西山女王・女流王将のことを、どうお感じになられていますか。
「毎回同じ形になりやすいのですが、そこにちょっとした工夫が加わって、また少し形を変えてという対局が続いているので、少しずつ進歩していることを感じるのが自分にとって充実感がありました。西山さんは私とは棋風が真逆で、あまり読んでいない手を指されることもあって、すごく新鮮な気持ちになります」
ーー世の中にはライバルということばがあります。里見倉敷藤花にとって西山女王・女流王将はどういう存在ですか。
「毎回新たな発見があって、勝負ではありますが、それとは別に純粋に将棋の楽しさを引き出してくださる方と思っています」
ーー里見倉敷藤花にとって倉敷藤花戦は特別なタイトルとうかがっております。初めて取ったタイトルですし、地元の島根県出雲市に比較的近い会場でご家族が観戦にお越しになることもあるそうですが、その倉敷藤花戦で西山女王・女流王将に勝たれた感想をお聞かせください。
「今回は3年ぶりに公開対局があって、たくさん準備してくださって、対局者としてモチベーションも上がりました。そういった舞台で西山さんと対局できたのは貴重な経験になりました。ただ自分の中では対局していてちぐはぐな手順が続いてしまったので、自分の弱い部分を修正できるようにこれからやっていけたらと思います」
ーー先ほど西山女王・女流王将とは棋風が真逆とおっしゃっていましたが、本局ではそのような手はありましたか。
「序盤の△3二金(22手目)から△2四飛と浮かれたあたりでしょうか。構想というか、そういうところでは意外な部分もありました」
ーーご自身ならこう指すというのはありますか。
「途中の変化が多かったので、そこを決断よく指されるのは西山さんらしいと思いました」
ーー辛抱した手が多かった、ちぐはぐな手が多かったと反省が多かったようですが、そうなった理由はどのようにお考えですか。
「自分の中で難しく考えすぎていて、力みすぎたのはあると思います」
ーーその中でも勝ち切った要因は何でしょうか。
「形勢はともかく、盤上に集中できていたので、余計なことを考えなかったことが結果につながったのかなと思います」
ーーこのたびの防衛で清水市代女流七段の7連覇(第2期~第8期)を破って8連覇となりました。そこへの思いはいかがでしょうか。
「倉敷に対局者として来られることが自分の中で励みになっています。来年も対局者として来られることに喜びを感じています。連覇の記録は光栄に思うことではありますが、弱いところも見えたので日々修正できるようにがんばりたいと思います」
(西山朋佳女王・女流王将の記者会見)
ーー今日の一局を振り返ってみて、終盤に攻めておられてチャンスもあったと思います。終盤戦はどのように思われていましたか。
「途中でかなり初歩的なうっかりをしてしまって、急転直下になってしまいました」
ーー感想戦でもおっしゃられていた▲5五角(101手目)のあたりでしょうか。
「そうですね。△同馬から馬と角を交換したのは、相当成算がないと指してはいけない手だと思いました」
ーー里見倉敷藤花と今年度は多く指してこられてきて、ぎりぎりの勝負が続いていましたが、里見倉敷藤花のことはどのように思われていますか。
「独特の戦法を採用されていて、里見さんとしか指さない形の将棋が多いのですが、その中で新しい手筋が出てきて、形勢判断が必要とされる局面が多いです」
ーーうっかりということでしたが、苦しい局面が続いていたのでしょうか。
「互角と思っていたので、もう少し腰を落として考えないといけなかったと思います」
ーー△7三桂(60手目)を跳ねたあたりは積極的な西山女王・女流王将の棋風が出たと大盤解説会で菅井竜也八段が解説されていたのですが、ご自身としては積極性はどのくらい意識していましたか。
「できるだけ自然な手を選んだつもりでした。リスクのある形ではあるし本譜もとがめられた展開ではあったので、一番いい構想だったかはわからないです」
ーー2022年度のタイトル戦で5つで里見-西山戦でした。これだけたくさん戦われて感想はいかがですか。
「対局がかなりついているときは1回でも体調を崩したら終わりだなという感覚ですごしていたので、棋力だけじゃなくて精神力や体力が求められると思っていました」
ーー初めての倉敷藤花戦を振り返られて、印象をお聞かせください。
「第1局は構想の段階で問題があったので、第2局もうっかりがあって、熱戦にできなかったです」
ーー他の棋戦とは違う空気は
「公開対局は独特な空間でした。見てくださっている方の気づかいを感じました」
以上で、第30期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負の全日程が終了いたしました。今期もご観戦ありがとうございました。観戦記は山陽新聞でご覧いただけます。紙面VIEW
(26日付の山陽新聞朝刊)
(一面に歓迎会の模様が紹介されている)
(山陽新聞紙面には囲碁2棋戦、将棋2棋戦が掲載。棋王戦コナミグループ杯は藤井聡太竜王-中川大輔八段が掲載されている)
(本棋戦は3回戦の中井広恵女流六段-渡部愛女流三段戦。中島一さん執筆)
(翔)