第29期倉敷藤花戦三番勝負第3局

2021年11月21日 (日)

ご観戦ありがとうございました

本日の三番勝負第3局と就位式をもって、第29期大山名人杯倉敷藤花戦の全日程が終了いたしました。今期もご観戦いただきましてありがとうございました。

第30期は来春開幕する予定です。引き続きよろしくお願いいたします。

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(就位式で両対局者に贈られたデニム地の着物。右が里見香奈倉敷藤花へ、左が加藤桃子清麗へ贈られたもの。事前にふたりのリクエストを聞いたうえで仕立てられている)

(翔)

記者会見

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就位式のあと、記者会見が行われました。

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(7連覇、通算12期目の倉敷藤花獲得となった、里見香奈倉敷藤花。報道陣からの要望があり、マスクを外して記者会見に出席)

【里見香奈倉敷藤花 記者会見】

--今日の戦いを振り返っての感想と、どのあたりから勝ちを意識したのかを教えてください。
「本局は第1局で用いられた加藤さんの作戦と途中まで同じで、お互いちょっとずつ変化する形になってそこから力戦になりました。本当に序中盤から終盤の一手一手が難しくて、難解な形勢が続いていると思いました。勝ちになったと思ったのは最後、▲6一馬(95手目)とされたときに詰みがあると発見したので、▲6一馬と指されて詰み形になったあたりです」

--昨日は先読みしすぎてうっかりがあったということでしたが、今日はそこの反省を生かせたのでしょうか。
「先後も形も違いますが、昨日は初歩的なミスをしてしまったので、そういうことがないように気をつけながら指していました」

--加藤清麗には昨日敗れて、清麗も取られて勢いがあると思います。加藤清麗の印象は。
「加藤さんは勢いがありますし、将棋の内容としても勢いよく攻められる印象があります。研究もされていて、決断もいいので充実されているということは感じます」

--4つタイトル戦が重なっていて、3つ終わったところですが。
「女流棋士になってここまで対局させていただくのは初めてなので、まず体調管理を気をつけること、元気で将棋を指すことが目標です。対局が続いて疲労がたまりますし、自分の中で課題があると思っていました。ただこういった経験をさせていただくことはなかなかないので、がむしゃらにどれだけできるのか、楽しみでした。振り返るのはあとになると思いますが、まだひとつありますのでそこに向けて健康でいいコンディションで挑めたらと思います」

--清麗を取られ、この倉敷藤花戦でも第2局に敗れ、これほど追い詰められた里見さんを見るのは久しぶりと思っていましたが、ご自身はどんな心境でしたか。
「並行していくつもタイトル戦を戦うことが救いになりました。目先の負けよりも、対局が続く中でどれだけ自分が最後の力を振り絞って指せるのかと、自分自身が知りたかったことなので、客観的に見られました。追い詰められることが、経験としてすごく貴重だと思っていましたので、こういった状況で自分の力を出し切れるかということを意識していました。いま持っている力を出し切って負けたら仕方ないと思っていたので、意外と冷静でした。ただ今回が倉敷対局だったから救われたのもあります。周りの関係者の方々にはもう10年単位でお世話になっていますし、応援に来てくださる皆様にも昨日負けたあとに励ましの言葉をいただいたり、そういうことが今日頑張る力になっていて、周りの皆様に助けられたと思います」

--倉敷藤花戦への愛着が強いようですが、里見さんにとってどんなところが素晴らしい棋戦ですか。
「学生のときに初めて挑戦して初めて手にさせていただいたタイトルですし、個人的なことですが亡くなった祖父が唯一応援に来てくれた棋戦でもあります。苦しい状況のときに助けられてきました。周りの励ましの声で自然と気合が入る棋戦です」

--現在行われている女流王座戦五番勝負に向けての意気込みをお聞かせください。
「今週は対局続きだったのでまずはゆっくり休んで、それから対局に向けて気合を入れていこうと思っています」

--里見倉敷藤花、西山さん(朋佳女流三冠)、加藤清麗でタイトルを分け合っている状況についてはいかがでしょうか。
「自分が持たせてもらっているタイトルも、肩書があっても地力がないとついてこないので、結果よりも自分の地力をつけられるように頑張っていきたいと思っています」

--この倉敷藤花戦三番勝負を終わっての率直な気持ちをお聞かせください。
「ほっとしている気持ちがあります。なるべく早く休んで次に向かいたい」

--気の早い話ですが、清水女流七段の7連覇に並びました。次は8連覇ですね。来期、第30期に向けて意気込みを。
「清水さんには時代も人間性も及ぶことがないと思っているので、技術面はもちろん、人間性も清水さんに少しでも追いつけるようにと常々思っています。そのうえで1年間どれだけ力をつけられるか、そのことを忘れないようにしたい。倉敷藤花戦は思い入れのある棋戦なので、自分の全力、地力を尽くした将棋を皆さんに見ていただきたいと思っているので、それに向けて頑張っていきたいです」

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(加藤桃子清麗)

【加藤桃子清麗 記者会見】
--いまの率直なお気持ちと、次回の倉敷藤花戦に向けての抱負をお聞かせください。
「終わっちゃったんだなあという悲しさがあって、結果は残念でしたが、仕方がないです。力がなかったので仕方がなかったのかなと受け止めています。里見さんが強かったということで。来期ですが、またあのトーナメントをイチから勝ち上がっていかないのかという気持ちはあります。でも、誰と当たるかわからないのですごく楽しみな棋戦なんですね。今期のように一戦一戦大切に積み重ねていきたいと思いますし、ここに来て地元の皆さんが盛り上げて支えてくださっていることを実感したので、またここに来たいという気持ちが強くなりました」

--対局は▲3四馬(75手目)と引いたところが結果的によくなかったのではと指摘がありましたが。
「指していたときはいい手だと思っていて指してましたが、振り返るとひどい手だなと思います。3三にいたら自陣まで利いていていい位置でした。大盤解説会で菅井八段がおっしゃったように▲7五桂のほうが私らしかったなと反省しています」

--改めて里見倉敷藤花の印象をお聞かせください。
「里見さんはすごくハードなスケジュールで対局されている中で結果を出されていて、総合力が強いです。もちろん将棋もすごくて尊敬する先輩です。また本当にかっこいいということばが出てくるんですが、立ち居振る舞いもかっこいいし、周囲の方に感謝の気持ちを伝える方で、本当に素晴らしい方と感じています」

--加藤清麗も里見倉敷藤花とふたつのタイトル戦を戦うスケジュールでしたが、里見倉敷藤花の将棋の特徴はどういうところにあると思いますか。
「里見さんと言えば中飛車で、先手でも後手でも中飛車を指しますが、相手によって棋風を変えていると感じます。変幻自在、柔軟で局面によって最善を指され、いろいろな面があると感じました」

(翔)

就位式

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(大盤解説会会場のホールで、そのまま就位式が行われる)

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(新型コロナウイルス対策のため、主催者側は出席者を絞っている)

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(清水市代・公益社団法人日本将棋連盟常務理事から就位状が贈られる)

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(就位状を手にする里見香奈倉敷藤花)

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(伊東香織・倉敷市長と大山名人杯を挟んで記念撮影。撮影時のみマスクを外している)

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(伊東香織・倉敷市長挨拶。奥に見えるのは倉敷市から両対局者に贈られる、デニム地の着物)

「里見香奈倉敷藤花におかれましては通算12期目の獲得おめでとうございます。ふたりの素晴らしい熱戦が、多くの将棋ファンの皆さんの心を熱くしてくださったと思います。将棋のまち・倉敷として心から感謝申し上げます。また菅井八段、長谷川女流二段、村田女流二段、コロナの状況の中でも大盤解説で多くの皆様が楽しんでいただけましたのも皆様のおかげです。そしていつも温かく導いてくださる日本将棋連盟常務理事の清水女流七段、ありがとうございます。これからも倉敷市としましては将棋の振興に一生懸命務めたいと思います。
そしていまからご紹介させていただくのは、今期、倉敷市から対局者のおふたりへの記念品といたしまして倉敷市のデニムの着物をプレゼントさせていただくことといたしました。おふたりには柄を選んでいただいておりますので、またじっくり見ていただければと思います」

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(里見香奈倉敷藤花あいさつ)

「皆様、長時間ご観戦いただきましてありがとうございます。コロナ禍の中、各方面からお越しいただきましたこと、感謝申し上げます。今回は他棋戦と並行してのタイトル戦でしたが、なんとか気力を振り絞って、自分の全力を尽くすことができたと思います」

(翔)

対局者、大盤解説会に出演

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(終局後、対局者が大盤解説会に出演)

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(里見香奈倉敷藤花)

「本局は、昨日の対局と先後が替わって、また新しい将棋になったのですが、途中から力戦の将棋になって、その中でも一手一手時間を使いながら、全力は尽くせたかなと思っております。本当にありがとうございました」

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(加藤桃子清麗)

「本局は、結果は残念だったのですが、思いきって自分らしい将棋は指せたかなと思っています。ただ、やはり悔しいですね、負けるのは。倉敷藤花戦は初めての挑戦で、すごくいい経験をさせていただいたと思っております。地元の皆さまのご尽力のお陰で成り立っている棋戦だなと、ここの倉敷に来て実感いたしました。また、挑戦できるように一生懸命努力していきたいと思っています。ありがとうございました」

(翔)

終局直後

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(7連覇、里見香奈倉敷藤花)

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(敗れた加藤桃子清麗)

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(立会人の清水市代女流七段と、観戦記を担当する北村實・大山名人記念館館長が見守る)

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(駒を動かさずに、10分ほど感想戦が行われた)

(翔)

里見倉敷藤花が防衛

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第29期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第3局は、110手で里見倉敷藤花が勝ちました。終局時刻は14時59分。消費時間は▲加藤清麗2時間0分、△里見倉敷藤花1時間53分(チェスクロック使用)。

この結果、三番勝負は里見倉敷藤花が2勝1敗でタイトルを防衛しました。

(夏芽)

後手勝勢

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図は△5五銀と、5四から出たところです。馬の利きで竜取りになっています。

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図で△6三同金に▲6一馬と取れますが、△7八竜から詰むと言われています。里見倉敷藤花の防衛が近づいています。

(翔)

後手の攻めが続く

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後手の攻めが続いています。図は里見倉敷藤花が△6九金と打ったところ。竜の利きを生かしています。▲7八金と寄るのは△7九金と銀を取っていきます。このまま後手が寄せきるのでしょうか。

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(再開直後の加藤桃子清麗。受けに回る展開が続いているが、しのげるか)

(翔)

日本遺産

倉敷市は「日本遺産のまち」とも謳っていて、「一輪の綿花から始まる倉敷物語~和と洋が織りなす繊維のまち~」「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」「『桃太郎伝説』の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~」の3つのストーリーが文化庁によって日本遺産に指定されています。

繊維事業は江戸時代に綿花生産が始まり、戦後になって学生服生産、ジーンズの聖地へと発展していきました。

畳縁の生産も盛んで、その技術を応用したグッズも多く生まれています。

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(真田紐は、関ヶ原の戦いのあと九度山に蟄居していた真田昌幸・信繁親子が生計を立てるために作っていたと言われる紐。強度があり、重量のあるものを結ぶのに適している)

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(畳縁を使って作られた祝儀袋)

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(倉敷市がPR用に制作したマスキングテープ。非売品。マスキングテープは倉敷が発祥の地)

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(有森七段の差し入れの大手まんぢゅう。こちらは岡山市の銘菓)

(翔)

歩の裏をつく香打ち

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局面は終盤戦。お互いに竜を作っています。里見倉敷藤花は△6五香と、歩の裏から香車を打って攻めています。

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▲6六桂では薄いと見た加藤清麗が▲6六銀と受けたのに対し、さらに△4九角と打っていきます。△6七角成と切る狙いもあり、力をためています。

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(開始前の里見香奈倉敷藤花)

(翔)

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