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2025年11月16日 (日)

記者会見

就位式のあと、アイシアターで対局者の記者会見が行われました。

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(福間香奈倉敷藤花)

ーー対局を終えた今の気持ちをお聞かせください。
「昨日の将棋が逆転負けだったので気持ちの持っていき方が難しかったですが、今日は盤上に集中できていたと思います」

--昨日、すぐに気持ちの切り替えはできましたか。
「母が(島根県から)来てくれていたので一緒にご飯を食べて、ホテルに帰って、リラックスしつつ明日に備えてという過ごし方でした」

--対局について、伊藤女流四段が△7四金(36手目)と出たあたりはどう思われていましたか。
「もう少し駒組みが続くと思っていたので、△7四金は意外でした。押さえ込まれそうな反面、金が上ずったという見方もできて、判断が難しかったです。こちらも▲7八金(39手目)と上がってバランスはいいですが、玉と離れるので、お互いに玉が薄い戦いで神経を使うところがありました。定跡形とは違った形で、充実感はありました」

--△8七歩成(52手目)に▲同金と応じて金がそっぽにいったと思われましたが、そのあとに▲7六金(59手目)~▲8九飛(65手目)の活用が幸便でよくなったと言われていました。対局中はどのように見ていましたか。
「昼食休憩前後の局面はこちらも玉が薄くて変化が多かったのですが、昼食休憩のタイミングで1時間考えることができたので、局面の持っていきかたはうまくできたと思います」

--先ほど大盤解説会場での感想戦を見ていると、最後は▲4四馬(77手目)のあたりで勝ちになったと思われたということでしょうか。
「そうですね。こちらの玉が一瞬堅い分、よくなっていると思いました」

--11連覇については。
「タイトル戦を戦うことによって得られるものはたくさんあると改めて感じました。来期も戦えることが自分にとって大きなことと思います。自分の弱さと1年しっかり向き合って、来期までに力をつけられるようにがんばりたいです」

--11連覇となると相性がいい棋戦と言えると思いますが、どのあたりが要因と思いますか。
「私自身は長い持ち時間のほうが安心して考えられるので自分でもちょっとよくわからないですが、公開対局はほかの棋戦にはなく、地元から近く、見にきてくださる方も多いことが励みになっていると感じます」

--先日、棋士編入試験の受験が発表されました。心境をお聞かせいただけますか。
「いままで自分のために将棋を指していましたが、子供が生まれて成長する姿を見て、もっと真剣に将棋に向きあわないといけないなという心境と、あとは子供が生まれてからは対局すること自体が家族のサポートなしではできないこともあって決断しました」

--編入試験について周囲の反響を、差し支えなければ教えてください。
「気をつかっていただいているのか、反響はあまりないですね。タイトル戦の関係者の方とお会いすると応援していますとお声がけいただくのですが、純粋にうれしい気持ちと、しっかりやっていかないといけないという心境と、両方あります」

--伊東香織・倉敷市長からは編入試験について何か声をかけられましたか。
「市長からも、岡理事長(荘一郎・倉敷市文化振興財団理事長)からも頑張ってくださいというふうに、あと体調面も気づかっていただき、温かいことばをかけていただきました。伊東市長は数年前の災害(倉敷市真備町などに大きな被害をもたらした、平成30年7月豪雨災害)のときも、全力で取り組まれているのが本当に伝わっていました。長きに渡って倉敷藤花戦を続けていただいていることに感謝していますし、一女性としてもかっこいい市長なので、私も負けないように、ではないですが、がんばっていけたらと思っています」

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(伊藤沙恵女流四段)

--対局を終えたいまのお気持ちをお聞かせください。
「第3局まで指すことができたのはひとつうれしかったのですが、本局はもっと何かやりようがあった気がしています。終盤に見落としで急にダメにしてしまったのが残念だったと思います」

--序盤から長考される場面がありました。(30手目△6四歩に17分、36手目△7四金に14分など)
「福間さんとはたくさん対局してきましたが、本局のような進行は私とはあまりなかったです。いままでは福間さんが変則的な居飛車を選ばれることが多かったので、今日はこういう将棋なんだなと思いながら指していましたし、序盤に金を出る手(36手目△7四金)は決断のいる手に思いまして、時間を使いました」

--△7四金(36手目)の成算はいかがでしたか。
「進行に自信があって、というよりはこういう筋もあるのかなとやってみたくなったのですが、金を上がると展開が速くなりやすいというか、先手もその金を目標に手を選べるのでじっくりした進行も一局だったと思います」

--△8七歩成(52手目)と成り捨てた手が▲7六金(59手目)と上がられて逆用されたように見えましたが、そのあたりの形勢判断は。
「▲7六金~▲8九飛(65手目)の形になると有効な受けがない気がしていて、先手玉にも嫌味をつけておく必要があると思っていて、△2四角(58手目)~△3六歩(60手目)と攻め合い志向の手を選びましたが、もう少し細かい手が必要だったと感じがしています。いま思えば工夫が足りなかった気がします」

--大盤解説会で狩山幹生五段が、伊藤女流四段の最近の内容について、強気な姿勢が目立っているのが勝たれている要因ではないかと話されていました。ご自身ではどのように感じておられますか。
「自分自身では、局面ごとに一番いいと思った手を選んでいるだけですが、強気な手っていい手のときもあれば、形勢を損ねてしまう場合もあって、一長一短ではありますが、自分の指したい手を選ぶようにしています」

--今年度、王位戦予選で中村太地八段を破った結果が話題になり、衝撃が走ったというと大げさかもしれませんが、反響はありましたか。
「ありがたいことにすごく注目していただいて、終局後に周りの方々から驚いたという言葉をいただいてうれしかったです。自分でも衝撃だったというか、まさか勝てると思っていなかったです。形勢が苦しいと感じながら指していましたが、その中でも、悪いながらも複雑にする手を選べていたのかなと思います。
ここまでくるとリーグ入りも期待していただいていると思うのですが(注:あと2勝で挑戦者決定リーグ入り)、どこまでいっても強い相手ばかりですし、当然ながら一局一局、力を尽くしてがんばりたいと思います。

--倉敷藤花戦は2期連続で挑戦でした。気が早いですが、来期に向けてひとことお願いします。
「持ち時間が2時間で女流棋戦の中では短いですが、今期は持ち時間の面で苦しむ対局もあったので、そのあたりを意識しながら対局に臨みたいと思います」

第33期の中継はこれで終了いたします。第34期は来春開幕予定です。

(翔)

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