就位式終了後、両対局者の記者会見が行われました。
【甲斐智美倉敷藤花】
--初防衛おめでとうございます。第3局を振り返って、どのあたりが良かったと思われますか。
「経験のあまりない形になったのですが、普段通りにあまり緊張せずに対局できましたし、思い切って攻められたのが良かったと思います」
--今シリーズ3局を振り返って。
「第1局・第2局では勝負所で思い切って切り込む手が指せなくて思うように指せなかったですが、第3局は硬さが取れていい将棋が指せたと思います」
--昨日の会見で「気持ちを新た」とおっしゃられていましたが。
「昨日の段階では今回は厳しいと思っていたのですが、逆に緊張感が抜けたのかもしれません」
--今後の目標をお聞かせください。
「普段はあまりそういうことを考えないのですが、結果よりも自分が思うような将棋を指したい思ってきたので、今後もそういうところを目指したいです」
--今回は最年長挑戦者として注目された山田女流四段が相手でした。
「本当に山田さんの気迫というものを感じていましたし、一局一局すごく準備や勉強をされてきているのが伝わりまして、厳しい三番勝負だったと思います」
--先ほど「昨日の段階で今回は厳しいと思った」とおっしゃっていましたが、それでも今日勝ち切れた要因は何だと考えられますか。
「自分が指したい手をできるだけ指そうと思っていて、今後につながるようないい内容の将棋を指そうと思ううちに、第1局の頃に感じていたプレッシャーがなくなったのがよかったと思います」
--今日の将棋で心に残る一手はあれば教えてください。
「うーん、▲5九金(35手目)ですかね。昨日の将棋でも金を5一に行くか7二に行くかで迷っていまして、どちらに行くかでその後の指し方が変わるんですが、今日は昨日のことを思い出して、固めて攻める将棋を指したいと思っていました」
--優勝カップを持った感想はいかがでしたか。
「すごく重かったです。実感がわきました」
--今日で女流五段に昇段しました。
「実力はまだまだ未熟ですが、長い間積み重ねてきたことのの結果なのかなと受け止めています」
--今後倉敷でやってみたいことはありますか。
「今年も大原美術館に行くことができなかったので、次の機会に行きたいです。美観地区もゆっくり回りたいです」
【山田久美女流四段】
--お疲れ様でした。本局を振り返ってください。
「情けない将棋にしてしまって申し訳ありませんでした。勘違いをしたと言えば言い訳になるのですが、第1局、第2局のような内容にしたかったので情けなかったですね。……すみません、将棋に負けて泣くのは久しぶりなんですけれども。
ある人に『試合に負けて泣くのは、涙は嘘をつく。泣いても強くならないぞ』という言葉を言われまして。流す涙よりも流す汗が本当なんだと思ってしばらく泣かなかったのですが、この涙が嘘にならないようにまた来期も勝ち上がってこられるように頑張りたいです」
(目頭を押さえながらの記者会見になった)
--25年振りの挑戦でしたが。
「年齢のことばかり書かれているなと思っていましたが、話題にしていただいて同世代や仲間が自分も頑張ればまだまだいけると思っていただければと思っていたのですが、うっかり昨日勝っちゃったものですから欲が出たのでしょうかね。今日の敗戦がものすごく残念な気持ちです。でも、まだこれで終わったわけではないので舞い戻ってきたいと思います」
--来期に向けては?
「対局者として来られたら一番ですが、聞き手や立会人で呼んでいただければ嬉しいです」
--夢を追った倉敷での2日間だと思いますが。
「人間は欲深いもので、全然そういう気持ちはなかったのですが、前夜祭で優勝カップを目の前にするといいなぁと思いましたね。あの重さを感じてみたかったです」
--この三番勝負、いい対局になったでしょうか。
「引退するときに『生涯の好局は第22期倉敷藤花戦の第3局』と答えたかったのですが、1番情けない将棋になってしまいました。これから1番の将棋が指せるように頑張りたいです」
--大盤解説会で有吉九段から「山田さん、最後まで頑張りましたね」と言われると拍手が起こりました。
「連休の中、将棋を見に来てくださったお客様には感謝していますし、甲斐さんのファンも私のファンもいらっしゃったと思いますが、見てくださるファンがいるのでがんばることができますし、その方たちが明日(新聞で)棋譜を改めて見て『なんだ山田、情けなかったな。でも頑張ったな』と思っていただければいいなと思います。大勢の方に来ていただいて感謝しています」
--序盤で工夫され、新しい一面が見られた三番勝負でした。
「今回は甲斐さんとの対戦に絞って研究をしてきました。今まで自分が指さなかった戦型も水面下では研究していました。少しでも今後の対局に役立て、幅を広げられたらと思います」
(写真=翔、書き起こし=太郎)
第22期倉敷藤花戦三番勝負第3局は83手までで甲斐倉敷藤花が勝ちました。終局時刻は14時49分。消費時間は▲甲斐1時間45分、△山田2時間0分(持ち時間各2時間、チェスクロック使用)。甲斐倉敷藤花が2勝1敗で防衛、2連覇を決めました。山田女流四段は初タイトルまで1歩及びませんでした。
甲斐倉敷藤花はこれでタイトル獲得が通算7期となり、規定により女流五段に昇段しました。
(翔)
図の▲2三歩成が厳しく、甲斐倉敷藤花が決めに行っていると見られています。
(翔)
図の▲1四歩で先手の猛攻が始まりました。△同歩には▲1三歩があります。本譜は△1九角成ですが、▲1三歩成で端を突破できました。
(翔)
(13時から大盤解説会が始まっている)
(有吉道夫九段)
(高群佐知子女流三段)
(会場後方には複数のテレビカメラがある。中央の大きなテレビは地元・倉敷ケーブルテレビのもので現在生放送が行われている)
(2階には倉敷芸術科学大学の皆さん。こちらのカメラの映像が特設ページから配信されている)
(2010年5月、現役最後の対局を終えて花束を受け取る有吉九段。引退から4年半が経つが、解説会では現役当時を彷彿とさせる攻め筋を解説している)
(翔)