2026年4月 3日 (金)

おはようございます。いよいよ第1局の朝を迎えました。シンガポールは晴れ。今日も朝から蒸し暑いです。
本日のスケジュールは以下の通りです。時差はマイナス1時間(現地10時は日本時間の11時)で、本ブログでは現地時間での記載になります。

10:00 対局開始
10:30 午前のおやつ
12:30 昼食休憩
13:30 対局再開
15:00 午後のおやつ
??:?? 終局

Dsc_3431_2(好天に恵まれたシンガポールの朝)

両対局者の退出後にトークショーが行われました。戦型予想は伊藤叡王が先手なら相掛かり、斎藤八段が先手なら矢倉と角換わりという声が聞かれました。

Dsc_3092(シンガポール対局の参加棋士・女流棋士が登壇する)

Dsc_3155(野原女流二段が司会進行を務める)

Dsc_3258(お楽しみ抽選会の様子。木村九段はシンガポールと揮毫した)

Dsc_3347(4月1日付けで女流三段に昇段した北尾女流三段)

Dsc_3405(叡王戦ポスターの抽選)

Dsc_3426(中締めのあいさつは佐竹康峰・日本将棋連盟常務理事が務めた)

Dsc_2948_3 (伊藤叡王)

「皆様、こんばんは。本日は第11期叡王戦第1局、シンガポール対局の前夜祭にお越しいただき誠にありがとうございます。まずはじめに、叡王戦を主催していただいております不二家様、特別協賛をいただいておりますレオスキャピタルワークス様、ご協賛いただいております、中部電力様、豊田自動織機様、豊田通商様、アパグループ様に、厚く御礼申し上げます。また第1局にご協賛を頂きましたANA様、そして、この海外対局の実現に向けてご尽力いただきました多くの皆様に、心より感謝申し上げたいと思います。
シンガポールでの対局は、私にとってはおよそ半年ぶりになります。半年前に対局で訪れた際は、これが最初で最後のシンガポール対局になるのだろうなと思っておりましたが、まさか半年後にまた戻ってこられるとは思っておらず、とてもうれしく感じております。前回はセントーサ島での対局でしたが、今回は日本人会館での開催となり、対局場所も変わり、また新鮮な気持ちで臨むことができそうです。昨日の観光でも、以前訪れた時とは違った場所を巡ることができまして、シンガポールの新たな魅力に触れることができたと感じております。
さて、今期の叡王戦五番勝負は、昨年に続いて、斎藤慎太郎八段との対戦となりました。斎藤八段の最近の将棋を拝見しても、非常に充実されている印象で、今年も大変なシリーズになりそうだなと感じております。昨年の五番勝負は、内容の面では課題も残りましたが、自分なりに全力を尽くして、充実感の残るようなシリーズにすることができたのではないかと思っております。今年はさらに進化した内容の将棋を指して、より充実した番勝負にすることができればと思います。明日の対局もぜひ最後までご観戦いただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします」

Dsc_2982(斎藤八段)

「皆様こんばんは。第11期叡王戦五番勝負の挑戦者になりました斎藤慎太郎です。本日は前夜祭を開催いただきましてありがとうございます。はじめに叡王戦を主催いただいております不二家様、特別協賛をいただいておりますひふみのレオス・キャピタルワークス様、ご協賛いただいております豊田通商様、豊田自動織機様、中部電力様、アパグループ様。叡王戦の開催に携わっていただいている全ての皆様に御礼申し上げます。
私はシンガポールを訪れるのが初めてです。また海外対局も初めてで、楽しみと緊張感があります。今回はシンガポール日本人会の皆様方に大いにお世話になります。よろしくお願いいたします。昨日からシンガポールの文化や風に触れて、良い経験やリフレッシュになっています。新鮮な気持ちで明日からの対局に臨めそうです。
今期も伊藤叡王に挑戦することになりました。リターンマッチと称されそうではありますが、気負わず平常心で挑もうと思います。前期の経験をいかして、新たな熱戦を展開できるように頑張ります」

Dsc_3022(クレメント・オン・アジア文明博物館館長)

「今年は日本とシンガポールの外交関係樹立60周年の節目の年であり、今回の対局は両国の友情と文化交流の深まりを改めて感じさせてくれる誠に意義深い機会となっております。将棋は知性と美しさを兼ね備え、兼ね備えた日本の素晴らしい文化です。明日の伊藤匠叡王と斎藤慎太郎八段の対局をここシンガポールで迎えられることを光栄に存じます。
アジア文明博物館「Let's Play! The Art and Design of Asian Games」と題したアジアのポートゲームに関する展示に加え、今月4月4日今週の土曜日より将棋漫画『3月のライオン』という漫画を通じて将棋の世界をご紹介する展示も開催しております。これからもこれらの展示を通じ、多くの方々に将棋の魅力をより身近に感じいただければ幸いです。明日の対局が素晴らしいものとなり、将棋を通じた交流と友情がさらに広がっていくこととを心より願っております」

Dsc_3057(乾杯の発声はクレメント・オン館長が務めた)

前夜祭で提供された料理の一部を紹介します。

Dsc_2744(クリスプポーク。皮がカリッとしていて食感が面白い)

Dsc_2759(チキンライス)

Dsc_2704(ローストビーフ)

Dsc_2770(にぎり寿司)

Dsc_2774(フルーツの盛り合わせ)

Dsc_2791(藤野英人・レオスキャピタルワークス株式会社代表取締役社長)

「第11期叡王戦の第1局がシンガポールで開催されること、また日本シンガポール外交関係樹立60周年記念を心からお祝い申し上げます。1966年に外交関係を樹立したということになりますが、たまたま私が生まれた年でもあります。私自身、将棋を長く愛しております。AIの進歩によって、人間はAIに敵わないのではないかと言われた時期もありました。しかし、実際にはAIが進化したことで棋士の研究もさらに深まり、将棋の世界がむしろ豊かで面白いものになったというように感じております。これは私たちが携わる投資の世界にもよく似ております。投資の世界でもAIの活用が進み、人間のファンドマネージャーは必要なくなるのではないかという声がありました。しかし、実際にはAIという強力な道具を使うことで、人間が考える力、決断する力がより重要になっていると考えております。将棋と投資には共通点が多いと私は思っています。先を読む力が大事な決断の結果がはっきり現れること、そして技術だけでなくメンタルも大切であること、相手をよく知り、その先を考え抜くことが結果につながることもよく似ています。私たちは、人と人が生み出すワクワクを応援したいという思いで、第6期から叡王戦の特別協賛を続けています。AIの時代だからこそ人と人が真剣に向き合うことで生まれるドラマには大きな価値があるのではないかと考えております。今期どのような展開になるのか、どんな一手が生まれるのか、非常にワクワクしています。さらに今回は第1局がここシンガポールで開催され、将棋という文化が世界で広がっていく可能性を感じる、とても象徴的な対局でもあるのではないかと思っております」

Dsc_2813(大山雅弘・シンガポール日本人会会長)

「叡王戦は日本将棋界における八大タイトルのひとつとして、多くの将棋ファンに楽しまれている重要な地点でございます。その対局がここシンガポールにて開催されますことは誠に意義深く、ひとえに皆様のご支援の賜りものだと思います。心からの感謝を申し上げたいと思います。私ども日本シンガポール日本人会について簡単にご紹介申し上げます。当会は111年の歴史を有し、シンガポールにおける日本人コミュニティの交流と深刻を目的として活動してまいりました。現在では、世界有数の規模を誇る日本人会のひとつとして、文化活動や教育支援、各種イベントの開催を通じ、地域社会とのつながりをより強固なものとなるよう精力的に活動しております。また、本年は日本とシンガポールの外交関係樹立60周年という記念すべき年、いわゆるSJ60の節目にあたります。叡王戦もその記念事業の一環として位置づけられており、このような深い機会を頂戴しましたことを私どもとしても大変光栄に存じます。今回の対局を通じて、将棋文化の魅力が広く伝わるとともに、日本、日本とシンガポールの友好関係がより一層深まることを心より願っております」

Dsc_2874(花束贈呈後の記念撮影。左はズオルーンリム・シンガポール支部長)

Dsc_2893(花束を手に記念撮影に応じた両対局者)

18時からシンガポール日本人会で前夜祭が行われ、多くの地元ファンが駆けつける盛会になりました。

Dsc_2616(主催者あいさつ)

Dsc_2627(河村宣行・株式会社不二家代表取締役社長)

「叡王戦はペコちゃんのお菓子ボックスという箱を作り、その中にお菓子を入れて対局場に置き、棋士の皆さんに食べていただくということをずっとやってまいりました。このお菓子が棋士の皆さんに大変、好評だそうです。これは棋士の方がお菓子を好きというのももちろんあるんでしょうけれども、お菓子に含まれる糖分は頭脳の栄養になるんですね。対局に疲れた棋士の皆さんの栄養補給になっているんだなと思うと、お菓子と将棋の相性もよろしいんじゃないかなと思っております。明日の第1局につきましても、両棋士に選んでいただいた私どもの焼き菓子をご提供しますので、不二家のお菓子を召し上がっていただいて、対局に疲れた心身の癒しにしていただき、リフレッシュして、頭脳の栄養補給をして、熱戦に注ぎ込んでもらいたいという風に期待をしております」

Dsc_2645(日本将棋連盟常務理事の糸谷哲郎八段)

「本日はご多忙のところ、第11期叡王戦第1局前夜祭にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。皆様にお集まりいただいたことに心より御礼を申し上げます。本年は日本とシンガポールの外交関係樹立60周年という極めて意義深い節目の年に当たります。両国の関係は経済や外交のみならず、人と人との交流を通じて対話の文化が相互に育まれてきたものと認識しております。そうした文化交流の一環といたしまして、シンガポールのチキンライスが日本で親しまれる一方、日本のラーメンもまたシンガポールの皆様の日常に深く根付いていると伺っております。こうした食文化の話題は、両国の距離の近さと相互理解の進化を象徴するものだと思っております。将棋もまた、日本に根差しながらも、国境を超えて広がりつつある文化のひとつでございます。本対局が将棋という文化を通じた新たな交流の域となれば、これにまさる喜びはございません」

Dsc_2785(石川浩司・駐シンガポール日本国特命全権大使)

「昨年9月のシンガポールの王座戦に続きまして、叡王戦がシンガポールで行われることを大いに歓迎いたします。大使館、及び大使館の文化発信部門である『ジャパンクリエイティブセンター』としてこの対局を後援できることは非常に我々の大きな喜びでございます。ジャパンクリエイティブセンターでは、昨年来、3回に渡りまして、プロ棋士の方をお招きして教室を開催して多くのシンガポールの方々に熱心に参加いただきました。また、当地のアジア文明博物館におきましては、日本将棋連盟さまと共催で、将棋を題材にした漫画『3月のライオン』特別展、明後日4日から開催されました。日本語版に加えまして中国語版、そして英語版の読書コーナー、さらには叡王戦の紹介コーナーが設けられたと聞いております。
明日繰り広げられるであろう熱戦を契機に、シンガポールにおいて将棋がさらに存在感を高めるということを願ってやめません。今年2026年は、日本とシンガポール国交樹立60周年を『SJ60』と呼んでございますが、いろんなイベントをやってまして、122のイベントを開催してきております。また、先月にはローレンス・ウオン首相が訪日されて、両国関係を戦略的パートナーシップとしていくということにもなりました。さらに、今年11月にはSJ60のメインイベントを当地で開催する計画をしておりまして、ぜひ皆様と一緒に盛り上げてまいりたいと思っております。最後になりますが、明日行われる叡王戦が両国の文化交流をさらに深め、そしてまた盤を挟んで培われる相互理解がさらに広がっていく、そういう機会になることを願っております」

2026年4月 2日 (木)

17時からシンガポール日本人館で対局場検分が行われました。将棋盤と駒は地元シンガポール支部の岡安茂見さんが所有する逸品が使用されます。駒は3組用意され、両対局者の指定はなく、木村九段が岡安さんに希望を聞いて決まりました。駒は明日、昼食休憩の記事でお伝えします。光りの具合も確認して10分弱で終了しました。

Dsc_2470(伊藤叡王が駒を取り出す)

Dsc_2490(伊藤叡王)

Dsc_2499(斎藤八段)

Dsc_2538(駒の感触を確かめる両対局者)

Dsc_2544(果たしてどの駒が選ばれたのか)

対局前日の4月2日14時から「ジャパンクリエイティブセンター」で記者会見が行われました。両対局者の抱負をはじめ、主催者や地元関係者のあいさつや3月のライオンの特別式典やアジア文明博物館と日本将棋連盟の協力を記念したサイニングセレモニーが行われました。

Dsc_2274(記者会見の様子)

Dsc_1945(河村宣行・株式会社不二家代表取締役社長)

「本日は伊藤匠叡王、挑戦者の斎藤慎太郎八段をはじめ、立会人の木村一基(きむらかずき)九段、日本将棋連盟常務理事の糸谷哲郎(いとだにてつろう)八段、在シンガポール日本大使館の石川浩司(いしかわひろし)駐シンガポール日本国特命全権大使、アジア文明博物館のクレメント・オン館長、レオス・キャピタルワークス株式会社の藤野英人(ふじのひでと)代表取締役社長にお越しいただきまして心より御礼申し上げます。
私ども不二家は第6期叡王戦より日本将棋連盟様とともに主催させていただいております。そして、明日の五番勝負第1局は日本シンガポール外交関係樹立60周年記念事業として実施するものになりますが、今般の開催に当たり、ご尽力いただいている皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。将棋という日本の伝統文化の魅力を広く届けるとともに、両国の友好と文化交流の一層の深化につながることを願っております。
叡王戦では、『ペコちゃんお菓子ボックス』というものを対局席にご用意いたします。これは当社らしく棋士の皆様を応援させていただこうと始めたものです。ペコちゃんなどが描かれた専用のボックスに『ペコちゃんミルキードーナツクッキー』、『ペコちゃんミルキーパイ』をはじめとする不二家のお菓子を詰め合わせてご提供しております。
また、明日の対局では10時半と15時におやつとして焼菓子もご提供いたします。あらかじめ伊藤匠叡王・斎藤慎太郎八段に好みをお聞きしまして、それをお届けさせていただきます。ぜひ対局でお疲れになった頭脳に栄養補給をしていただいて、心身の癒しになればと思います。
前期の第10期叡王戦五番勝負では、最終第5局までもつれる接戦で日本中の注目を集めた伊藤叡王と斎藤八段のお二方による再戦は、さらに多くの人々の心を惹きつけるものと思いますし、今期も叡王戦の歴史の新たな1ページを飾る熱戦を期待しております」

Dsc_1975(糸谷哲郎・日本将棋連盟常務理事)

「まず、日本とシンガポールが外交関係樹立60周年という大きな節目を迎えましたことを、心よりお祝い申し上げます。日本では、60年という節目は「干支が一巡する還暦」と呼ばれ、一巡りを終えた新たな一歩の始まりとされています。これまで築かれてきた両国間の信頼と交流が一巡し、ここからまた新しい歴史が始まる年であると感じております。この節目を新たな出発点として、両国の交流がさらに深まること、そしてその文化交流の一助としてこの叡王戦対局がお役に立てればと思っております。
将棋の世界でも、一局は多くの手を積み重ねながら局面が形づくられていきます。日本とシンガポールの関係もまた、60年にわたり一手一手を重ねるように築かれてきたものだと思います。この最高峰の対局により、その築かれてきた関係がさらに素晴らしいものとなりますように。
また、この対局を実現するにあたりまして、非常に多くの御尽力を頂きました皆様に御礼を申し上げます。主催の不二家様、特別協賛のひふみ様、協賛の中部電力株式会社様、株式会社豊田自動織機様、豊田通商株式会社様、アパリゾート佳水郷様、ANA様そして対局場所をご用意いただきましたシンガポール日本人会の皆様、SJ60に関わられます日本とシンガポールの皆様、本当にありがとうございます。
結びに替えまして、改めて日本とシンガポールの外交関係樹立60周年をお祝い申し上げ、両国のさらなる発展と友好の深化を祈念いたします。ご清聴ありがとうございました」

Dsc_1997(石川浩司・駐シンガポール日本国特命全権大使)

「皆さま、こんにちは。駐シンガポール日本国特命全権大使の石川です。
昨年9月の第73期将棋王座戦に続き、この度、第11期将棋叡王戦第1局がシンガポールで開催されることを、大いに歓迎いたします。在シンガポール日本国大使館、及び、その文化発信部門であるジャパン・クリエイティブ・センターとしても、本対局を後援できることを大変嬉しく思います。
まず、大会開催に向け尽力いただいた、主催の日本将棋連盟及び株式会社不二家、その他関係者の皆様に深く敬意を表します。また、アジア文明博物館のクレメント・オン館長にも昨年に引き続いての御同席、そして将棋のプロモーションに係る日本将棋連盟及び大使館・JCCとの協力に感謝いたします。
将棋は、日本における長い歴史の中で発展し受け継がれてきた伝統文化です。シンガポールでは象棋(シャンチー)、という日本の将棋によく似た盤上競技が広く楽しまれていますが、この機会にぜひ将棋ならではの奥深い魅力を感じていただければと思います。
昨年に続き今回、2年連続で将棋のタイトル戦がシンガポールで行われることは、当地における将棋の普及の一層の促進につながるものと確信する次第です。
本年2026年は日・シンガポール外交関係樹立60周年、我々はSJ60と呼んでおりますが、二国間関係において節目の年となります。昨年のシンガポール建国60周年に続き、このSJ60という記念すべき年に本イベントを開催することで、両国の文化交流の一層の発展に繋がるものと信じております。
本大会が、日本・シンガポール両国の文化的な絆を一層強め、未来に向けた新たな友好の懸け橋となることを願い、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました」

Dsc_2047(クレメント・オン・アジア文明博物館館長。3月のライオンの単行本を手に)

「皆様、こんにちは。本日、第11期叡王戦の記者会見に出席し、この素晴らしい大会をシンガポールにお迎えできることを大変光栄に思います。
今回の開催は、シンガポールと日本の外交関係樹立60周年「SJ60」の年に行われるという点で、極めて大きな意味を持っています。両国の強固で末永い友好関係、そして文化がその絆を深め続けている多様なあり方を、改めて実感させてくれます。
日本の豊かな伝統文化の中でも、将棋は特別な地位を占めています。それは知性、戦略、規律、そして美を備えたゲームです。同時に、歴史や職人技、そして卓越した技術(極致)への深い敬意を反映した「生きた伝統」でもあります。
明日行われる伊藤匠叡王と斎藤慎太郎八段の対局は、最高峰の卓越した技を目の当たりにする貴重な機会となります。また、シンガポールの観客の皆様にとって、将棋を単なる競技スポーツとしてだけでなく、日本文化の重要な表現の一つとして体験していただく場ともなるでしょう。
アジア文明博物館(ACM)として、この瞬間に立ち会えることを特に嬉しく思っております。現在開催中の「Let’s Play! Art & Design of Asian Games(遊ぼう!アジアのゲームのアートとデザイン)」展では、アジア各地のゲームを単なる娯楽以上のものとして探求しています。ゲームは芸術性、デザイン、記憶、そして文化交流の象徴でもあるのです。こうした文脈において、将棋に関連する資料の展示は非常に意義深いものです。
現在展示されている盤駒は、昨年シンガポールで行われた伊藤叡王と藤井聡太氏の対局を記念したものです。そして今回、この叡王戦に関連した展示を行うという、またとない機会をいただきました。現代の主要なタイトル戦の物語が今まさに進行している中で、その対局に密接に関連した品々を展示できる美術館は、世界でも稀でしょう。
また、日本将棋連盟との協力により、将棋の世界を描いた羽海野チカ先生の人気漫画をテーマにした特別展示『将棋のマンガ3月のライオン展』を開催できることも大きな喜びです。現代のストーリーテリングやポップカルチャーを通じて、人々が将棋と繋がる新たな道を提供するとともに、このゲームが人間同士の結びつきを描いたものであることを思い出させてくれます。
今回の対局と博物館での展示が、シンガポールにおける日本文化への関心をさらに高め、両国の文化交流と友好を深めるさらなる機会となることを願っております。
アジア文明博物館を代表して、日本将棋連盟、在シンガポール日本国大使館、ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)、そして本プロジェクトを実現させてくださったすべてのパートナーの皆様に感謝申し上げます。
この特別な瞬間に立ち会い、将棋の不変の魅力、その「次の一手」の積み重ねを皆様とともに祝福できることを光栄に思います。ありがとうございました」

Dsc_2071(クレメント・オン館長と糸谷八段によるサイニングセレモニー)

Dsc_2117(書面にサインをする)

Dsc_2129(サイン後に書面を見せるクレメント・オン館長と糸谷八段)

Dsc_1850(藤野英人・レオスキャピタルワークス株式会社代表取締役社長)

Dsc_2188(伊藤叡王)

「皆様、こんにちは。棋士の伊藤匠です。本日はお集まり頂き誠にありがとうございます。
まずはじめに叡王戦の開幕局をシンガポールにて開催するにあたり、多大なるご尽力を賜りました関係者の皆様、そして温かく迎えてくださったシンガポールの皆様に心より御礼申し上げます。
昨年は、シンガポール建国60周年の節目に王座戦を当地で対局する機会を頂戴致しました。本年はシンガポールと日本との外交関係樹立60周年という記念すべき年に、再びシンガポールで対局の場を設けていただき心より感謝申し上げます。2年連続でタイトル戦を開催いただけることで、将棋を通じて日本文化に親しんで頂く機会となれば幸いです。
さて、今期の叡王戦は、昨年に引き続いて、斎藤慎太郎八段との対戦となりました。2期続けて挑戦権を獲得されたことから、地力の高さと安定感を改めて感じさせられます。昨年の五番勝負は見ていただいた方からは、熱戦続きのおもしろいシリーズだったという風にいっていただくことが多く、今年はさらにレベルアップして、より一層充実したシリーズにできればという思いでおります。
まずは明日、シンガポールという特別な舞台での対局ということで、昨年訪れたときは不甲斐ない対局となってしまっただけに、今回は良い内容の将棋をお見せ出来るよう全力を尽くしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」

Dsc_2245(斎藤八段)

「皆様こんにちは。第11期叡王戦の挑戦者になりました、斎藤慎太郎です。前期に続いて五番勝負に登場することができました。叡王戦の開催にご尽力いただいている各社の皆様にまたお会いできることがうれしいですし、今回もお世話になります。よろしくお願いいたします。
第1局はシンガポールでの対局ということで、対局場をご用意いただきましたシンガポール日本人会の皆様にも心より御礼申し上げます。私はシンガポールに訪れるのが初めてで、新たな文化に触れることが楽しみです。
前期の叡王戦五番勝負は伊藤叡王の強さを肌で感じたシリーズでした。今期はこちらも良い面を発揮して熱戦を展開できるように頑張ります」

Dsc_2297(質問に答える伊藤叡王)

 

――シンガポールで開催されるにあたって、国内で対局するのとは違う心構え、準備はされてきましたか。

伊藤 海外対局ということで、通常よりも2、3日前ぐらいから移動して対局に向かうということは、通常の対局とも違う点ではあります。昨日は一日、シンガポールを観光させていただいて、とてもシンガポールの魅力に触れることができました。本当に楽しい経験をいろいろさせていただきましたので、よい心の状態を保ったまま対局に臨めればいいのかなと感じています。自分としては、その海外対局だからといって、特に変わったことを何か意識して準備したということはなくて、普段通りによい心の状態で臨んでいければと思っています。

斎藤 今回、シンガポールでの第1局ということで、私自身初めてシンガポールにやってまいりましたし、海外対局は経験のないものではありますので、普段以上に緊張するだろうなという想定をしておりました。しかし、昨日からシンガポールの観光をさせていただく中で、私としては思っている以上に本当に楽しい時間、リフレッシュできる時間を用意していただきましたので、想定以上によい心境で対局に臨めますし、それを対局に生かせるように頑張りたいなとは思っています。

――日本とシンガポールの国交樹立60年の記念対局ということで、文化の交流、両国の架け橋になることが多くの方から期待されている対局だと思います。対局者のふたりは、対局の内容や向かう姿勢で、日本文化のどのような側面を伝えたいと思っていますか。また、おふたりがこれまでに感じたシンガポールの魅力について、教えてください。

伊藤 将棋の対局は、タイトル戦だと和服を着て臨みます。そういう対局風景は日本ならではのものがあると思うので、そういうところにも注目していただきたいです。シンガポールの魅力は、こちらの会場の辺りを見渡しても緑が一面に広がっていて、本当に自然が豊かな国だなというのを感じまして。シンガポールは非常に技術が進んだ国という印象もある中で、また自然にもこう触れ合うことができるというのは、過ごしていて心地よい国なのかなと感じています。
斎藤 私は明日の対局でシンガポールの皆様にお伝えできればと思うところは、やはり将棋ならではの「礼に始まり礼に終わる」です。最初は対局開始の挨拶をし、対局終了時にも挨拶をする。そして、その後に対局を戦った同士で感想戦をやるというのは、今後の課題のために高め合う行為なのかなと思います。他の競技にないところでもあるのかなと思っています。シンガポールで感じた魅力は、街並みが色鮮やかな印象で、それは元々持っていた印象でもあり、本当に明るくて気分が上がる街だなというふうに思っていました。シンガポール料理を現地で初めていただく機会にも恵まれまして、私は全部おいしいと感じ、シンガポール料理が毎日でも大丈夫かもしれないというほどです。こちらに少し日本の雰囲気を感じるところもありましたし、いままでにないというものも体験できたなというふうに思っています。

――食文化もひとつの文化です。シンガポール料理の食文化について、食べられた中でいちばんお好みのもの、もしくは食べてみたいというものがありましたら教えていただければと思います。

伊藤 私は昨年の対局でシンガポールを訪れる機会があり、その時にチキンライスをいただいたのが結構、印象に残っています。日本で食べるようなチキンライスとは、またちょっと違った味があって、お米がパラパラした感じだったりとかも、なかなか日本では味わえないようなところだったかなと思います。非常に美味しかったので、また食べてみたいなという気持ちはあります。
斎藤 「バクテー」という料理を日本でも出しているお店がありまして、今回初めてシンガポールに来るにあたって本場の味というものを体験したいなと思いましたら、観光で1食目にいただくことができました。日本のものとはまた違いまして、スパイスがよりしっかりと入っていました。こちらにお米と揚げパンがついていきまして、それらを浸したり、つけて食べるという説明をお店の方からいただきました。そのような発想は日本で食べたときはなく、スープとしていただいていましたので、そこにも違いを感じました。どちらかといえば、こちらで食べたバクテーが私はおいしいなと思いました。

――日本とシンガポール、世界中が注目するタイトル戦になると思います。おふたりが叶えたいこと、成し遂げたいことはなんでしょうか。

斎藤 この叡王戦で成し遂げたいことは、私としては恐れ多いところもありますが。自身の対局の姿や内容等で将棋の魅力が伝えられるようにとは、日頃から思っていることです。今回はシンガポールという海外での対局ですので、それがさらに多くの方々、シンガポールだけでなくいろんな世界中の人々に将棋が届くというのが、本当に理想ではあります。将棋のプロとしていつか叶えばいいなと思いますし、その一部に自身が携われたらいいなと思います。そして、この五番勝負の中では、やはり昨年も挑戦したということがありますので、昨年以上の将棋を指したいというのがまずはいちばん成し遂げたい、頑張りたいなというところです。
伊藤 私も斎藤八段と同じような回答にはなってしまうんですけど、海外で、シンガポールで対局させていただけるということで、私としては対局者として真剣に将棋に打ち込んでいる姿をお見せして、少しでも将棋というものを海外の方でも認知していただいて、面白いと思っていただければうれしいことだなと感じています。

 

Dsc_2376(石川日本国特命全権大使に駒を贈呈する木村一基九段)

Dsc_2288(会見の様子)

Dsc_2417(参加者による記念撮影)

本日最後の訪問地はガーデンバイザベイです。3月15日から1ヶ月間、さくらまつりが行われています。ドーム型で冷房完備の施設を散策しました。

Dsc_1775_2(入口の巨大なモニュメントは夜になるとライトアップされる)

Dsc_1769(ABEMAロケのオープニングを撮影する)

Dsc_1747_2(冷房による温度管理で桜が満開に。それをバックに記念撮影)

Dsc_1728(地元のメディア用に撮影が行われた)

Dsc_1760(最後にエンディングを撮影して棋士観光が終わった)

次に向かったのはスリングショットというアトラクションです。バンジージャンプの逆バージョンのような遊戯です。宮嶋四段と野原女流二段が挑戦しました。二人とも「昨日から緊張していました」と話していました。

Dsc_1471(マリーナベイ・サンズをバックに散策する)

Dsc_1484(スリングショットという名のアトラクション)

Dsc_1494(動き出して緊張が走る)

Dsc_1545(地上から80メートル上空まで一気に加速すると360度の回転が加わる)

Dsc_1623(手の震えを訴える宮嶋四段)

Dsc_1661(感想戦の様子)