2025年7月10日 (木)

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本局は立ち上がりから駆け引きがありました。福間清麗は端の位を取ってから△3三角(10手目)と上がり、▲同角成に△同金から△2二飛として向かい飛車に振る姿勢を見せます。角交換しないと△4二銀や△2二銀で通常の角換わりに合流するため、変化の余地を与えないために▲3三同角成と交換するのが一般的ですが、渡部女流四段は▲4六歩と突いて角交換しませんでした。福間清麗は振り飛車を得意にしているため、相居飛車は歓迎という思惑がありそうです。

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実戦は福間清麗が△4二飛(12手目)と四間飛車に構えました。角道を開けたままの四間飛車はよくある指し方ですが、普通は△3二金ではなく△3二銀と組むもの。本局は振り飛車が形を決めて損になっている可能性があります。双方がどう方針を定めるか、序盤の駒組みから興味深い展開になりそうです。

対局当日の朝を迎えました。対局室には挑戦者、清麗の順に入室。福間清麗が駒箱を開けて、渡部女流四段とともに駒を並べていきます。駒を並べ終えると、立会人の飯塚八段が「振り駒です」と告げて、大成建設株式会社の北口雄一・専務執行役員が振り駒を行いました。と金が3枚出て、第1局は渡部女流四段の先手に。定刻の9時、対局が始まりました。

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2025年7月 9日 (水)

18時から関係者を集めた開幕式が開かれました。主催者として大成建設株式会社の相川善郎・代表取締役社長が「清麗戦では初めての顔合わせで熱い戦いが楽しみ。福間清麗と渡部女流四段が力を存分に発揮できるよう、万全の準備をさせていただく」、日本将棋連盟の清水市代会長が「福間清麗は公私ともに充実している無敵の王者。序盤巧者の渡部愛女流四段は『自信をしっかりつけて臨みたい』と話していた。どれぐらいの自信をつけたのか、盤上に表してくれると思う」と話しました。
福間清麗が清麗杯を返還し、両対局者が決意表明。福間清麗は「暑くなってくると清麗戦が始まるんだなと思う。また清麗戦が戦えることに喜びを感じる。充実したシリーズにできるよう、一局一局大切に指したい」、渡部女流四段は「4年ぶりのタイトル戦で心から望んでいた舞台。精いっぱい力を出しきりたい。成長できるようなシリーズにしたい」と語りました。

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(大成建設株式会社 相川善郎 代表取締役社長)

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(日本将棋連盟 清水市代会長)

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(福間香奈清麗)

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(渡部愛女流四段)

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対局場に両対局者が到着し、対局室で検分が行われました。検分では対局に使う棋具に問題がないか、照明や空調の具合を確認します。盤と駒は日本将棋連盟から運ばれたものが使われます。上座の後ろに窓があり、対局当日の天気が曇りの予報とのことで、カーテンを開けてみることに。福間清麗は「私は(景色が)見えないので」と渡部女流四段に判断を委ね、問題がなければ開けておく運びになりました。検分は滞りなく終了。両対局者は色紙に記念の揮毫を行いました。

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福間香奈清麗に渡部愛女流四段が挑戦する大成建設杯第7期清麗戦五番勝負が開幕します。福間清麗は4連覇を、渡部女流四段は清麗初戴冠を目指す戦いです。第1局は7月10日(木)、東京都千代田区「ホテルニューオータニ」で行われます。立会人は飯塚祐紀八段、記録係は宮澤紗希女流初段。現地大盤解説会(事前申し込み制)は高崎一生七段と鈴木環那女流三段が担当します。対局の模様はRチャンネルでも配信します。解説は山本博志五段、聞き手は将棋親善大使の伊藤かりんさんです。
持ち時間は各4時間(チェスクロック使用)、使いきると1手60秒未満の秒読み。対局開始は9時、昼食休憩は12時から13時。第1局のため、先後は振り駒で決定します。
中継は棋譜・コメント入力を琵琶、ブログを文が担当します。

【主催:大成建設】
https://www.taisei.co.jp/

【主催:日本将棋連盟】
https://www.shogi.or.jp/

【Rチャンネル】
https://channel.rakuten.co.jp/service/live/2507/seireisen/

2025年5月21日 (水)

大成建設杯第7期清麗戦五番勝負の対局場と日程は以下の通りです。

第1局 7月10日 東京都千代田区「ホテルニューオータニ」
第2局 7月23日 福岡県福岡市「ホテルオークラ福岡」
第3局 8月7日 神奈川県箱根町「山のホテル」
第4局 8月19日 大阪府高槻市「関西将棋会館」
第5局 8月26日 東京都渋谷区「将棋会館」

本日はご観戦ありがとうございました。福間香奈清麗と渡部愛女流四段が対戦する五番勝負は7月に開幕します。どうぞお楽しみに!

Dsc_4466(挑戦権を獲得した渡部愛女流四段にインタビューが行われた)

Dsc_4503(質問によっては笑みがこぼれた)

――感想戦を終えて、あらためて現在の感想をお聞かせ下さい。

渡部 2021年にタイトル戦に出てから4年ぐらい出られなかったので、今の気持ちとしては素直にうれしく思います。

――加藤女流四段とは予選で対戦がありました。今日はどういうお気持ちで臨まれましたか。

渡部 予選では負けているのですが、そのことを忘れていました。一局に集中して臨もうと思っていました。

――相掛かりの戦いとなり、角の使い方が見事な展開になりました。

渡部 早々から想定と外れて力戦になりました。棋風だから踏み込んだのですが、ひとつ受けがあればダメな状況ではあるので、お昼前から勝負どころだなと思っていました。

――角を捨てて香を成り込んだあたりはいかがでしたか。

渡部 ▲2七歩と打たれた局面で3つの手を考えていました。本譜の△1七角成と△3七角成▲同歩に△2四歩と突いて、▲3六銀なら△同銀▲同歩△3七桂と打つ筋。あとは△1五角と引いて▲1六歩に△2四角で角銀交換を甘受する順です。ただ、どれも自信が持てなくて。△1七角成がいちばん戦えるのではないかといった判断でした。

――あらためて本局を振り返って。

渡部 もうちょっといい受け方があったのかなと思うのですが……。本譜はかなりギリギリになっていて、追い込まれていたので、受け方を勉強しないといけないなと思いました。

――福間香奈清麗との五番勝負をどのように戦いたいですか。

渡部 福間さんは先手中飛車をメインにされていますが、いろいろな形が見られて、私も普段から勉強をさせていただいております。自分の力を出しきれるように、しっかり準備をして臨みたいと思います。

――タイトル戦から遠ざかっていた間はどのように棋力を高めてきたのでしょうか。

渡部 2021年よりもいろいろなことに挑戦してみようという気持ちが強くて。例えば横歩取りのような指したことがない戦型も公式戦で使えるようにということを日々意識して、いろいろな戦型を勉強することを重点に置いてやってきました。

――棋力向上にうまくつながったのはどのあたりですか。

渡部 棋力が向上しているのかがわからないのですが(苦笑)。いろいろな将棋を知るといろいろな手筋などが応用できることがわかったので、たくさんの手を知るというところを大事にしたいなと思っていたのが、たまたま今回の対局につながったのかなと思います。

――今回の勝ち上がりについてはどう受け止めていますか。

渡部 本戦では不戦勝(西山朋佳女流三冠戦)がありました。ファンの方にも「西山さんの分まで頑張ってほしい」と何度も言われました。私もそう思いましたので、西山さんのためにもしっかりした将棋を指さないとという気持ちでした。

――7月10日開幕の清麗戦に向けてどのような準備をされますか。

渡部 他の対局もたくさんつくと思いますが、清麗戦のタイトル戦ということで、また違った戦いになります。まずは体調を崩さないというところを第一に考えたいと思います。

――福間清麗との戦いで、現状での自信はどのぐらいですか。

渡部 正直にいうと全然ないのですが……。これから自信をつけられるように準備していけたらと思います。

――コーチである野月浩貴八段と結婚して1年が経ちました。結婚がいい影響を与えたのでしょうか。

渡部 ここ数ヶ月、対局が多めになっていて。対局に集中できる環境を野月が作ってくれていたところもあるので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――集中できる環境とは、具体的にどういったことでしょうか。

渡部 家事は分担制で、お互いの対局前は多めにやったりしています。今回は野月に家事負担が多くなっていました。もちろん私もやっていますよ(笑)。将棋に集中できるかどうかは大きいので感謝しています。

――好調の要因はご自身ではどう感じていますか。

渡部 形勢が悪くなっていることも多いので、運がいいという部分はあると思いますが、しっかり食べて寝て、純粋に将棋に集中できるのがいちばん大きいのかなと思います。

――最近の勉強方法は?

渡部 研究会でいろいろな方と将棋を指したり、AIを使っての定跡研究だったり。最近は棋譜並べをやっていますが、以前とあまり変わっていません。

――野月八段とは将棋を指されるのですか。また今日の対局に向けてどんなアドバイスがありましたか。

渡部 最近は指していなくて。口頭で譜号をいい合う感じで。アドバイスに関しては、今朝LINEで「落ち着いてしなさい」的な文章がきました。

――福間清麗との大きな勝負は久々になります。2019年の女流王位戦で対戦されてから、しばらく観戦者として福間女流の将棋を見てきたと思いますが、どのようなところに進化を感じますか。

渡部 福間女流と西山女流のタイトル戦はもちろん毎回観戦していますが、最近は力戦の将棋が多い印象がありまして。定跡形だけではなく、本当に力が試されるといいますか、将棋の局面を捉える力を上げていかないと上のステージでは戦えないかなというのが率直な感想です。ですので、いろいろな手を知ることをこれからも大事にしていきたいです。

Dsc_4478(真っ直ぐな視線でインタビューに応じる渡部女流四段)

Dsc_4385(タイトル挑戦を決めた渡部女流四段)

Dsc_4403(2期連続挑戦とならなかった加藤桃女流四段)

Dsc_4417(好局を振り返る渡部女流四段)

Dsc_4437(誤算が響いて完敗を喫した加藤桃女流四段)

Dsc_4426_2(感想戦の様子)

Dsc_4377(勝った渡部女流四段)

【勝った渡部愛女流四段の談話】
――本局を振り返って下さい。

渡部 相掛かりの力戦系になりました。昼食休憩前の△2六角(44手目)がうまくいくかどうかが勝負だと思っていて。それがうまくいかなければもうダメになっているかなと思っていました。銀香を取って少し持ち直したのかなと思っていました。

――形勢がよくなったと感じたのはどのあたりですか。

渡部 △6七銀(84手目)と絡んで寄せの形が見えてきて、いいのかなと思いました。

――勝ちを意識したのはどのあたりですか。

渡部 最後の最後までわかりませんでしたが、△8三同飛(104手目)と歩を取って、自玉が大丈夫だとわかって勝ちになったかなと思いました。

――2021年の白玲戦以来のタイトル戦登場になります。意気込みをお願いします。

渡部 せっかく出られることになったので、心身ともにしっかりと準備をして、将棋もこれまで以上に勉強したいと思っております。

Dsc_4381(敗れた加藤桃女流四段)

【敗れた加藤桃子女流四段の談話】
――本局の内容はいかがでしたか。

加藤 苦しい時間が長かったです。

――どのあたりで苦しさを感じましたか。

加藤 昼食休憩ぐらいから△2六角を軽視というか、大丈夫かなと思っていたのですが、うるさいことに気づいてからはきつかったですね。

――勝負を分けた分岐点はどのあたりだと感じましたか。

加藤 全然ダメだと思っていて。▲3八歩(43手目)がひどいのかなと。そこに尽きるのかなと今は思っています。

Dsc_4374(終局直後の様子)

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▲加藤桃-△渡部戦は112手で渡部女流四段が勝ちました。終局時刻は16時5分。消費時間は、▲加藤2時間40分、△渡部2時間43分。勝った渡部女流四段が福間香奈清麗への挑戦権を獲得しました。五番勝負第1局は7月10日(木)に東京都千代田区「ホテルニューオータニ」で行われます。