2021年7月14日 (水)

囲み取材

Dsc_0192(感想戦後、加藤女流三段は囲み取材に応じました)

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――あらためて現在のお気持ちをお聞かせください。

加藤「挑戦者になることができてうれしいです。女流名人戦以来で久しぶりの挑戦でうれしい気持ちが強いです」

――里見清麗への挑戦になります。

加藤「里見さんと盤を挟むのは光栄と思っていますが、最近の負けっぷりが情けないです。いつも話していると思いますが、今回こそ勝ちたいという気持ちが強いです。(里見さんに挑戦した)前回の自分よりも必死に勉強して、里見さんも必死に勉強されていると思いますが、頑張りたいです」

――清麗戦の印象はいかがでしょうか。

加藤「本戦に出るまでがすごく大変な印象です。前回は早々に負けてしまいましたし、今回も予選の1回戦で負けて、あとがない状況でした。それでも、1敗までは大丈夫ということで勝ち上がれて幸運でした。それに本戦からも強敵ぞろいで勝ち上がるのが過酷なトーナメントだと思っています。また、清麗戦は華やかなイメージがありまして、いまは大変な状況ですが、タイトル戦もいいところで開催されると思うので楽しみにしています」

――清麗戦での調子はいかがでしたか。

加藤「予選1回戦の将棋は、なぜ負けたかわからないモヤモヤした感情がありました。気持ちを切り替えて一歩ずつ積み重ねてこられたので、欲がなかったのが調子を上向かせてくれたのかなと思います」

――挑戦者決定戦の舞台で鈴木環那女流三段との対戦でした。近しい存在だと思いますが、指されてどうでしたか。

加藤「鈴木さんとは10年くらい前から島(朗九段)先生の研究会でご一緒にさせていただいていたり、仕事でもお世話になったりしています。その先輩と盤を挟めて楽しみな気持ちがありました。
そして、YouTubeチャンネルでタイトル挑戦への道をやっていて、鈴木さんがドンドン強くなっているのは目に見えてわかっていたので、乗りに乗っている強敵がきたと思っていて、今日のことを思いつめていたり、勉強しようというモチベーションになったり、とても刺激になった対戦相手でした」


――4月に女流名人戦で鈴木さんに敗れました。それが糧になった部分はありましたか。

加藤「そうですね。敗戦を喫して、そのときに課題が見えたので、早くに改善しなくてはという気持ちがありました。得意戦法の雁木への対策を必死に研究して挑みました」

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――西山さんが今年4月に転向されて、女流棋界全体が変化すると思いますが、加藤さんはどのように受け止めましたか。

加藤「4月に西山さんが女流棋士になられるということで驚きました。これから女流棋戦で戦っていくということで、実際、ほかの棋戦で対戦しました。西山さんはタイトルを取られていて、相当の実績を重ねていますが、これから対戦が増えていくと思うので楽しみにしています。西山さんが女流棋界に入ることで、頑張ろうという気持ちになったことでモチベーションが高まって倒そうという気持ちになった。私にとってはいいことと受け止めました」

――今日の将棋は互いに工夫された将棋だったと思います。加藤さんから仕掛けていったが、そういう一環だったのでしょうか。

加藤「▲3六歩(23手目)を早く突くのは前局の中井戦でもあったので、そういう将棋を指したいのだろうと想定しながら指していました。▲1六歩(25手目)が私はちゃんと調べておらず困ったのですが、鈴木さんが急戦策を取られて戦いになりそうだったので、早めの攻撃態勢を取ろうと考えました」

――作戦はうまくいきましたか。

加藤「△6五歩(30手目)と仕掛けたのがうまくいったかわからないです。1手待つ手も考えましたが、類似形と形が違うので葛藤がありました。調べてみないとわかりません。

――感想戦を踏まえて、中終盤はどのあたりがポイントでしたか。

加藤「▲8四角(35手目)△7二金▲7七桂に△4四歩が最善かどうかが気になります。△5四銀は元気がないけど、そのほうがよかったか、あるいは△6六歩と攻め合うのがよかったのか。△4四歩は中間ですが、このあたりをあらためて調べてみたいです」

――激しい短手数の将棋でした。どのあたりで手応えをつかみましたか。

加藤「難しいながらも△4五桂(44手目)と跳ねたあたりですごく忙しくなるので、決着をつけにいった手ですが、△4六歩(48手目)と突きだしたあたりで速度計算の展開になります。自分を信じていければ勝てそうかなという気持ちでいました」

――それが結実したのが△9五角(56手目)の王手あたりになるのでしょうか。単純な王手なので、確信がないと打ちにくいと思います。

加藤「その前の▲5五馬(55手目)はあまり読みにはありませんでした。△9五角を打つには時間は早かったと思いますが、相手の駒を使わせて、自玉を安全にして読みやすくなりました」

――里見さんがタイトル4つ、西山さんが3つで持ち合っています。加藤さんはこれまでタイトルを取ってきましたが、現在無冠です。タイトルへの思いはどのようなものでしょうか。

加藤「タイトルがないのはさみしいです。タイトルは持つべき人が持つものだと思いますが、いままであったものがなくなって、そのあとに取れていないのはさみしいというか悔しい状況なので、なんとか奪取したいという気持ちが強いです。里見さんといい将棋を指しつつも、欲を出して取りにいきたい気持ちがあります」

Dsc_0201(取材の最後にマスクを外して撮影に応じてくれました)

(囲み取材書き起こし=銀杏、撮影=吟)