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2020年11月

2020年11月20日 (金)

質疑応答

それぞれの決意表明のあと、両対局者と清水市代女流七段に対し、報道陣からの質疑応答の時間が設けられました。

質疑応答

--里見倉敷藤花は今回勝利しますと、倉敷藤花のタイトル獲得が単独で最多になります。
里見 いま伺って初めて知りました。注目していただけるのは大変光栄です。ただ平常心で対局に臨めたらと思います。

--中井女流六段は挑戦者としての倉敷です。久しぶりの対局ですが、どう感じていますか。
中井 変わったところもあり、変わらないところもありますね。以前と宿泊のホテルが変わったとか、昔、チボリ公園があったなとか……。今日も来るときにいろいろ考えながら思い出していました。あとは第1局の大阪対局で、タイトル戦の雰囲気を久しぶりに思い出しました。

--関西将棋会館での第1局を終えて、相手の印象がどう変わったかなど、それぞれお聞かせください。
里見 中井さんは本格派の居飛車党です。以前対局したのが何年か前ですし、あまり過去の情報が参考にならないところはありました。ただ変わらず、本格派の将棋を指されていると思いました。

中井 里見さんは攻めても受けてもとても強さを発揮する女流棋士です。特に受けが強いという印象が強いです。

--第1局が終わってから第2局まで、どういった準備をされてきましたか。
里見 他棋戦の対局もあったので、まずは目の前の対局の準備をしてきました。特に変わったことはしていません。第2局に集中した勉強は日程が迫ってきてからになりましたが、いいコンディションで来られたかなと思います。

中井 コロナ禍で在宅の時間が例年より多く、自宅で研究する時間は普段より取れたと思います。オンラインでの研究会や、家でコンピュータソフトを使った研究など、普段そんなに変わらなかったです。

里見倉敷藤花

--コロナ禍で制限があったかと思いますが、具体的には何か変化がありましたか。
里見 私自身は大きく生活の変化はなかったですが、ひとりで研究する時間がより増えました。東西交流の対局がストップしたとき、私の場合は2~3ヵ月、対局が全くない時期がありました。その頃は対局がいつ再開されるかわからない状況だったので、いつでもいいコンディションで指せるよう、体調には気をつけていました。

中井 仕事が見事に全てなくなって、家にいることが多かったです。私だけでなく、主人(植山悦行七段)も家にいることが増えまして、いろいろ……、家庭内のバトルとか、ありました。はい、ふふふ。

--倉敷市のイメージを教えてください。
里見 小学生倉敷王将戦に出場した頃から倉敷には来ていて、小さい頃からお世話になっている方がたくさんいらっしゃいます。今年は公開対局はないですが、遠くから応援していただいていることが力になり、皆さんに感謝しています。

中井 対局で来るときはなかなか外を歩くことができませんが、プライベートで来たときには美観地区や美術館を見学しました。あとは食べ物。食べることが好きなのですが、特に果物がおいしいですよね。あとお酒と。

--気分転換法はありますか。
里見 私も食べることが好きなので、タイトル戦に来たときは食事ですかね。あとはいまは難しいですけれども、日常的に外食に行くことが多いです。

中井 私は旅行が好きなので、国内外問わず、普段は1年に何度か旅行に行きます。いろんな風景を見て、いろいろな方とお会いして、ということが私の中ではすごく楽しみになっています。今年はそれができないので、とても残念です。

--倉敷藤花戦というタイトルはふたりにとってどのような棋戦ですか。
里見 初めて獲得したタイトルですし、女流棋戦で唯一の公開対局がある棋戦です。私にとっては自然と力の入る、思い入れのある棋戦です。

中井 私が大山十五世名人に初めてお目にかかったのが、9歳くらいのときでした。それから何度も先生にお目にかかったりお世話になったりしました。その大山先生が創設してくださったと言ってもいい棋戦ですから愛着がある、と言うと失礼になるかもしれませんが、思い入れのある棋戦です。これまで公開対局はなるべく着物で対局しようと思っていまして、その中で藤の柄の着物も作って対局に臨んだこともありました。本当は明日も着物を着たかったですが、ヘルニアの手術をしてから着物での対局がつらくなったので、今回は洋服で対局します。この棋戦に関してはいろいろな思いがあります。

中井女流六段

--中井女流六段は今回、最年長のタイトル戦挑戦者と伺っています。将棋は気力や体力が必要だと思いますが、中井女流六段の思考力はまだまだ伸びているとしたらその秘訣を教えていただけないでしょうか。

中井 挑戦者に決まってからいろんな方に年齢のことを言われています。それくらい50代になって挑戦者になるというのは大変なことなのかなと自分自身でも感じています。28年前、この棋戦が創設されたときに参加できて、28年が過ぎてまた挑戦者になることができたことは、自信になりました。だんだん年齢を重ねていくと、どうしても体力も記憶力も、いろんな面で劣っていくところが出てきますが、ある程度の年齢からは相手が誰とか全く関係なく、とにかく自分自身との戦いだと思うようにしています。

--いまがピークだと感じておられますか。
中井 いやいや、ピークはとっくに過ぎています。伸びる秘訣があったら私も教えてほしいですけれど、清水さんはどうですか。

清水 いきなり振られてもどう答えていいのやら……。中井さんはいつも攻める姿勢を持っておられます。中井さんが向上心を持って、盤に向かっているので私も勇気、元気をいただいています。守りに入っていないのが若々しさの秘訣ではないでしょうか。ピークというものは、引退するときに「あのときがピークだった」と思うもので、中井さんも里見さんもこれからピークがやってくるかと思います。

清水女流七段

(書き起こし:翔記者/写真:夏芽)

記者会見

その後、18時からは場所を倉敷国際ホテルに移し、対局前日の記者会見が行われました。

記者会見

記者会見

伊東市長

■伊東香織・倉敷市長のあいさつ

 本年はコロナウイルス感染防止の観点から、いつも行っております前夜祭や公開対局を開催することは控えさせていただき、記者会見の場を用意させていただきました。里見香奈倉敷藤花、中井広恵女流六段、倉敷にお越しいただきましてありがとうございます。みんな楽しみに、お待ち申し上げておりました。倉敷市は大山康晴十五世名人の出身地でございます。市を挙げて将棋の振興に取り組んでおります。倉敷市とともに主催していただいている日本将棋連盟より、今年も清水市代常務理事にお越しいただいております。ありがとうございます。また倉敷藤花戦は山陽新聞社、倉敷市文化振興財団で主催しております。多くの将棋ファンに支えられている倉敷藤花戦です。
 倉敷藤花戦は大山康晴十五世名人の偉業をたたえ、平成5(1993)年に開始し、いまや28期を数える歴史のある棋戦になりました。今年は倉敷藤花戦の対局をどうするか大変悩みましたが、倉敷市民の皆様から「今年は様々な行事が中止になっており、将棋を身近に感じることができない。なんとか藤花戦で女流棋士の皆様に来ていただけないだろうか」という熱い思いをいただきまして、万全の対策をして開催させていただくことになりました。
 第1局は関西将棋会館で行われ、里見倉敷藤花が115手で先勝され、大変見ごたえのある戦いでございました。明日は第2局。里見倉敷藤花は10期、倉敷藤花のタイトルを持っておられる方でいらっしゃいます。中井広恵女流六段も3期保持していらっしゃいました。そして清水市代常務理事も10期保持されており、女流棋界の第一人者の方が集まってくださいました。明日は里見倉敷藤花がその力を発揮して連勝するか、もしくは中井広恵女流六段が力を振り絞っていただくか、見ごたえのある戦いが期待されます。本来なら公開対局をご覧いただくことになっておりましたが、このたびは新型コロナウイルス感染対策で、対局と大盤解説会をYouTubeで配信いたします。芸文館での大盤解説会も人数制限をしながら万全の体制で行ってまいります。

里見倉敷藤花

■里見香奈倉敷藤花の決意表明

 本日はお集まりいただきありがとうございます。第2局を開催するにあたりまして、ご協力いただいております多くの関係者の方々に感謝申し上げます。今回は倉敷藤花戦の対局が行われるか、厳しい状況と感じておりました。コロナ禍で本当に大変なご準備をいただいたと思います。準備にあたってくださった全ての関係者の皆様、ありがとうございます。明日はいま持っている力をすべて出しきれるように、盤上に集中して頑張りたいです。よろしくお願いいたします。

中井女流六段

■中井広恵女流六段の決意表明

 今回はこのコロナ禍で例年と変わらずに倉敷市で対局できること、私自身もうれしく思います。関係者の皆様にはご尽力いただきまして感謝を申し上げます。ありがとうございます。今期は第28期ということですが、第1期が創設されたときの対局をいまでもはっきりと覚えております。女流棋士一同、この棋戦ができて本当にうれしく感じました。私自身のことで言えば、タイトル戦は13年ぶりだそうです。本当に久しぶりです。倉敷でお世話になっている皆さんには「今年こそは挑戦者として倉敷にうかがいます」と言い続けておりながら時間がたちました。正直に申し上げてもう無理かなと思っていたのですが、今年、思いがけなく挑戦者として倉敷に来ることができました。里見さんは、強い強い倉敷藤花です。せっかく挑戦者になれたので第2局で終わるのはさみしいですし、なんとか3局指したいと思っています。明日は見ていただける皆さんに「面白い将棋だった」と言っていただけるような将棋が指せるように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

清水女流七段

■日本将棋連盟常務理事・清水市代女流七段のあいさつ

 長きにわたり、将棋へのご理解、女流棋界への多大なるご尽力を賜ります倉敷市様、ありがとうございます。またいつも大会運営に東奔西走してくださっている倉敷市文化振興財団の皆様、対局の模様を1回戦から掲載していただき、またタイトル戦の模様を大きく取り上げてくださっている山陽新聞社様、ありがとうございます。
 今回の番勝負はいろいろな意味でイレギュラーなことがありました。初めて第1局が関西将棋会館で行われたこともそのひとつでございます。挑戦者の中井広恵女流六段が最年長の挑戦者記録を更新ということもあります。そして今年は、全国の皆様に楽しみにしていただいている公開対局が行われないことは残念です。これが忘れられない思い出になり、そういうこともあったねと言える日が来ることを祈っております。明日は、絶対王者の里見倉敷藤花に中井女流六段がどう挑むかが注目。中井女流六段の武器はたくさんありますが、誰にも負けない経験値からくる本筋の一着は業界内でも定評があり、私も一ファンとして注目しています。その先輩を前に里見倉敷藤花がどう戦うかも注目いただければと思います。

記念撮影
(トロフィーの前で、両対局者の記念撮影)

(書き起こし:翔記者/写真:夏芽)

情報ワイドあれスタ

検分を終えた両対局者は、伊東香織倉敷市長ともにRSK山陽放送の「情報ワイドあれスタ」に生出演。「月刊くらしき情報局」のコーナーで、明日の対局について取材を受けました。

ろくたんとアレすけ
(山陽放送のイメージキャラクター。左がろくたん、右がアレすけ)

打ち合わせ
(出演前の打ち合わせの様子)

伊東香織倉敷市長
(伊東香織倉敷市長)

本番前

放送中
(生放送中の一場面)

■情報ワイドあれスタ
https://www.rsk.co.jp/tv/aresuta/

(夏芽)

検分

両対局者を始めとした関係者一行は、16時頃、対局場の「倉敷市芸文館」に到着。すぐに対局室で検分が行われました。

検分

里見香奈倉敷藤花
(里見香奈倉敷藤花)

中井広恵女流六段
(中井広恵女流六段)

清水女流七段と藤井女流初段
(立会人の清水市代女流七段と、記録係の藤井奈々女流初段)

駒
(検分には3組の駒が用意された)

里見倉敷藤花

中井女流六段

検分
(今期はホールでの公開対局を行わないため、検分は、この1室のみで終了した)

(夏芽)

倉敷決戦

里見香奈倉敷藤花に中井広恵女流六段が挑戦する第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負(主催:倉敷市、倉敷市文化振興財団、山陽新聞社)は、第1局を里見倉敷藤花が制し、防衛まであと1勝としました。

第2局は本棋戦の聖地、岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で行われます。対局は11月21日(土)10時開始。第1局と先後を入れ替え、本局の先手は中井女流六段です。持ち時間は各2時間(チェスクロック使用)で、使いきると記録係の秒読みで1手60秒未満の着手になります。里見倉敷藤花が勝てば防衛(6連覇)が決まり、中井女流六段が勝った場合は翌日、同館で最終局を行います。

立会人は清水市代女流七段、記録係は藤井奈々女流初段。現地大盤解説は菅井竜也八段、聞き手は村田智穂女流二段がそれぞれ務めます。

【第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第2局 - 棋譜中継】
http://live.shogi.or.jp/kurashikitouka/kifu/28/kurashikitouka202011210101.html

倉敷藤花戦

インターネット中継は、棋譜コメントを翔記者、ブログは夏芽が担当します。よろしくお願いいたします。

2020年11月 5日 (木)

感想戦

Ue14

Satomi14

Nakai14

Ue16

Nakai16

Satomi16

以上で三番勝負第1局の中継を終了いたします。ご観戦いただきましてありがとうございました。第2局は11月21日(土)に岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で行われます。

(飛龍)

終局直後

Ue12(終局直後、主催紙の山陽新聞社からインタビューが行われた)

Satomi12 (幸先よく白星発進した里見倉敷藤花)

―本局について

里見 (39手目▲7八飛から)飛車を換えたあたりは少し指しやすいのかなと思っていたのですが、中終盤で間違えてしまったので、そこが反省点かなと思いました。最後、▲6四桂(97手目)と打って勝っているのかなと思いました。

―次戦に向けて

里見 次は先後が決まっているので、しっかり準備をして臨めればと思います。

Nakai12 (ウッカリがあったと中井女流六段)

―本局について

中井 飛車を打ち込んだとき(58手目△6九飛)は飛車のいき場所が狭いので、取られないように気をつけて指していたのですが(苦笑)。向こうに寄られる(73手目▲8八金。飛車に当たらないほうに寄った)のをウッカリしていて。その前に何かありそうな気がしたのですが。角を引いた(64手目△5一角)あたりがどうかなと思いました。

―久しぶりのタイトル戦について

中井 中盤の飛車をぶつけられた(39手目▲7八飛)あたりからかなり難しい将棋だったので、ちょっと時間を使いすぎたかなと思います。

―次戦までどのような準備を?

中井 いつもと変わらず。

―平常心で臨まれると?

中井 そうですね。

(飛龍)

第28期三番勝負第1局は里見倉敷藤花の先勝

Kurashikitouka202011050101115第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第1局は、115手で里見倉敷藤花の勝ちとなりました。終局時刻は15時11分。消費時間は、▲里見1時間52分、△中井2時間0分(チェスクロック使用)。里見倉敷藤花が先勝し、防衛まであと1勝としました。第2局は11月21日(土)、岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で行われます。

(武蔵)

中井女流六段、秒読みに

中井女流六段は持ち時間を使いきって△1五歩と突きました。

Kurashikitouka202011050101_74以下、▲7八竜△1六歩▲6九竜△4五歩と進んでいます。先手は飛車を取って磐石になりました。

Kurashikitouka202011050101_78Hikae02 (昼前の控室。日本将棋連盟専務理事の脇謙二八段(左)と同常務理事の井上慶太九段)

(飛龍)

飛車の生け捕り

Kurashikitouka202011050101_63里見倉敷藤花の63手目▲3九歩からの一連の構想は飛車の生け捕りでした。

Kurashikitouka202011050101_73

73手目▲8八金は7八から寄ったところ。次に▲7八竜で飛車のいき場がありません。控室でも「痛い」の声が上がっています。代えて▲6八金左でも飛車は捕まりましたが、△6八同飛成が△2八金までの詰めろ。金を渡さないのがポイントでした。

Satomi11 (里見倉敷藤花は見えづらい順で飛車の捕獲を狙う)

(飛龍)

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