両者とも18時45分頃には対局室に戻っていた。

再開からほどなくして山崎八段は▲６四歩を着手した。

図の局面で夕食休憩に入りました。消費時間は▲山崎３時間16分、△郷田３時間45分。夕食の注文は山崎八段が「おにぎりとアップルジュース」、郷田九段が「握り寿司と紅茶（ホット）」。対局は19時に再開します。

おにぎり。

握り寿司。

山崎八段は▲３五歩△同歩と突き捨てを入れてから、一転して▲８八角と引きました。この手の直接の意味は、次に▲６六歩から桂を取りにいく狙いです。では、▲３五歩△同歩を入れたのはどういう意味でしょうか。

「単に▲８八角には△９五歩の端攻めが気になるのでしょうね。以下▲６六歩と桂を取りにいったときに猛攻を受けそうです。このとき▲３五歩△同歩の突き捨てが入っていれば、▲６六歩から桂を取って▲３四桂の狙いがあるので、先手も戦えそうです」（西尾六段）
「ただ、相手に１歩渡したデメリットがあるので、▲３五歩△同歩▲８八角が、うまい組み立てなのかといえば難しいところです。▲３五歩△同歩に▲２四飛以下の攻めがうまくいかないと見て、予定変更で▲８八角と引いたのかもしれません」（阿久津八段）

控室では、▲８八角に△２三銀と飛車の走りを押さえて、以下▲６六歩には△５七桂成と成り捨てて先手の玉形を乱してから、△９五歩と端攻めに出て後手好調と見られています。

図は16時40分の局面。
山崎八段は桂頭を狙って▲３五歩と仕掛けました。ついに本格的な戦いが始まる気配です。
控室でも▲３五歩は検討されていましたが、△同歩▲２四飛△２三銀▲６四飛△６三銀▲６五飛△６四歩で、桂得でも飛車を目標にされて、うまくいかないとされていました。山崎八段はどんな組み立てを見せるのでしょうか。

山崎八段は控室では、うまくいかないと見られていた仕掛けを決行した。

上野公園といえば、不忍の池。

水深が浅く、一面にハスとアシが広がっている。

池に突き出した弁天島に弁才天が祀られている。

桜並木の枯葉はほとんど落ちた。本格的な冬の到来だ。

枝先をよく見るとつぼみができている。冬来たりなば春遠からじ。

時刻は15時半を回りました。郷田九段が長考してます。
控室には西尾明六段が来訪しました。
「進行の一例を挙げますと、△６五桂▲４七銀△２四歩▲５六銀△６四歩が考えられます。そこから持久戦に進んだ場合、先手から攻める手は難しく、後手からは△９五歩▲同歩△９七歩と攻める筋があります。そうなると後手が作戦勝ち模様なので、先手は動いていきたいところだと思います。動くとすれば、先ほどの変化の△６四歩のあと▲２四飛と走る手が見えますね。以下△２五歩▲３四飛△６三銀で、ここで何か手があるかどうか」（西尾六段）

控室で検討する西尾六段。

15時を回り、対局室におやつが運ばれました。注文は山崎八段が「どら焼き」とアップルジュース、郷田九段が「フルーツゼリー」とアイスティー。

どら焼き。

フルーツゼリー。

上野の森、上野の山などの通称もある上野恩賜公園。都民の憩いの場です。

対局場の国立科学博物館の隣には、国立西洋美術館がある。

ご存じ「考える人」（ロダン）。棋士が鬼の形相で考えている姿を銅像にすれば、凄い迫力のものができそうだ。

こちらもご存じ、上野動物園。

14時10分、対局は昼食再開の▲６五歩を見た郷田九段が長考中です。

控室では本日、振り駒の大役を務めた藤井さん（叡王戦の棋戦名発案者）が、阿久津八段に４枚落ちで指導を受けています。左奥で立っているのは、控室にを訪れた宮田敦史六段です。左手前はニコニコ生放送現地リポーターの山口恵梨子女流初段。午後からニコファーレの解説会が始まって、現地組は束の間の休息中です。

対局室に先に戻ったのは山崎八段。スペアのメガネと交換したように見えた。対局用と使い分けているのかもしれない。

続いて郷田九段が戻る。普段通りの落ち着いた表情に見えた。

立会人の阿久津八段が再開を告げた。

再開から、やや間をおいて▲６五歩。自陣の隙を恐れない、山崎八段らしい手と評判になっている。