「△6ニ銀は加來さんらしい駒組み。素直に美濃囲いに組むタイプではないです。阿部四段としては▲5六銀には△5四歩で対応されてしまうので、どこで▲6六歩を突くか。ただ▲6六歩と突くと△2四歩からの逆襲の筋が生じるので、注意しておく必要があります。28手目△5二金(下図)に、▲7七角から場合によっては穴熊を目指す構想もありそうです」(西尾五段)
上図の△5二金まで、消費時間は▲阿部19分、△加來23分。
「加來さんは早指しなので、阿部四段としては時間の使い方も気を付ける必要がありそうです。終盤に持ち時間に差があると慌てますからね。私の奨励会時代に、持ち時間がなく加來さんの軍門に下った奨励会員を何人も見ています(笑)」(西尾五段)
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注目される本局の戦型は、「一手損角換わり」模様の出だしから加來アマが△3三角(図)と上がった。以下▲3三同角成△同金と進む。これは「阪田流向かい飛車」に分類されるオープニングで、後手が△2二飛と飛車を振れば作戦が明らかになる。本局の進行は△3三同金以下、▲6八玉△4四角▲8八角△2二飛(下図)。
こうして戦型は加來アマの阪田流向かい飛車に。この戦型は舗装された定跡が少なく、第1局、第2局と同じように力戦調の戦いになりそうだ。後手の狙いとして、△2四歩▲同歩△同金の飛車先逆襲がある。先手はこれに気をつけつつ、駒組みを進めることになる。
「△4四角はあまり見ないですね。▲8八角を打たすことによって先手の穴熊を牽制する意味もありそうです。先手から▲4四角と取ると△同歩で1手損になりますが、△2四歩▲同歩△同金のときに4三の地点があいていると▲2三歩△同飛▲3二角の筋が生じます。先手としては▲4六歩から▲4七銀として後手の4四角にプレッシャーを掛けていきたい。ただ、▲4七銀と上がったときに銀が飛車から離れるので、△2四歩からの逆襲を気にしておかないといけません」(西尾五段)
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