2025年5月21日 (水)

渡部愛女流四段インタビュー

Dsc_4466(挑戦権を獲得した渡部愛女流四段にインタビューが行われた)

Dsc_4503(質問によっては笑みがこぼれた)

――感想戦を終えて、あらためて現在の感想をお聞かせ下さい。

渡部 2021年にタイトル戦に出てから4年ぐらい出られなかったので、今の気持ちとしては素直にうれしく思います。

――加藤女流四段とは予選で対戦がありました。今日はどういうお気持ちで臨まれましたか。

渡部 予選では負けているのですが、そのことを忘れていました。一局に集中して臨もうと思っていました。

――相掛かりの戦いとなり、角の使い方が見事な展開になりました。

渡部 早々から想定と外れて力戦になりました。棋風だから踏み込んだのですが、ひとつ受けがあればダメな状況ではあるので、お昼前から勝負どころだなと思っていました。

――角を捨てて香を成り込んだあたりはいかがでしたか。

渡部 ▲2七歩と打たれた局面で3つの手を考えていました。本譜の△1七角成と△3七角成▲同歩に△2四歩と突いて、▲3六銀なら△同銀▲同歩△3七桂と打つ筋。あとは△1五角と引いて▲1六歩に△2四角で角銀交換を甘受する順です。ただ、どれも自信が持てなくて。△1七角成がいちばん戦えるのではないかといった判断でした。

――あらためて本局を振り返って。

渡部 もうちょっといい受け方があったのかなと思うのですが……。本譜はかなりギリギリになっていて、追い込まれていたので、受け方を勉強しないといけないなと思いました。

――福間香奈清麗との五番勝負をどのように戦いたいですか。

渡部 福間さんは先手中飛車をメインにされていますが、いろいろな形が見られて、私も普段から勉強をさせていただいております。自分の力を出しきれるように、しっかり準備をして臨みたいと思います。

――タイトル戦から遠ざかっていた間はどのように棋力を高めてきたのでしょうか。

渡部 2021年よりもいろいろなことに挑戦してみようという気持ちが強くて。例えば横歩取りのような指したことがない戦型も公式戦で使えるようにということを日々意識して、いろいろな戦型を勉強することを重点に置いてやってきました。

――棋力向上にうまくつながったのはどのあたりですか。

渡部 棋力が向上しているのかがわからないのですが(苦笑)。いろいろな将棋を知るといろいろな手筋などが応用できることがわかったので、たくさんの手を知るというところを大事にしたいなと思っていたのが、たまたま今回の対局につながったのかなと思います。

――今回の勝ち上がりについてはどう受け止めていますか。

渡部 本戦では不戦勝(西山朋佳女流三冠戦)がありました。ファンの方にも「西山さんの分まで頑張ってほしい」と何度も言われました。私もそう思いましたので、西山さんのためにもしっかりした将棋を指さないとという気持ちでした。

――7月10日開幕の清麗戦に向けてどのような準備をされますか。

渡部 他の対局もたくさんつくと思いますが、清麗戦のタイトル戦ということで、また違った戦いになります。まずは体調を崩さないというところを第一に考えたいと思います。

――福間清麗との戦いで、現状での自信はどのぐらいですか。

渡部 正直にいうと全然ないのですが……。これから自信をつけられるように準備していけたらと思います。

――コーチである野月浩貴八段と結婚して1年が経ちました。結婚がいい影響を与えたのでしょうか。

渡部 ここ数ヶ月、対局が多めになっていて。対局に集中できる環境を野月が作ってくれていたところもあるので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――集中できる環境とは、具体的にどういったことでしょうか。

渡部 家事は分担制で、お互いの対局前は多めにやったりしています。今回は野月に家事負担が多くなっていました。もちろん私もやっていますよ(笑)。将棋に集中できるかどうかは大きいので感謝しています。

――好調の要因はご自身ではどう感じていますか。

渡部 形勢が悪くなっていることも多いので、運がいいという部分はあると思いますが、しっかり食べて寝て、純粋に将棋に集中できるのがいちばん大きいのかなと思います。

――最近の勉強方法は?

渡部 研究会でいろいろな方と将棋を指したり、AIを使っての定跡研究だったり。最近は棋譜並べをやっていますが、以前とあまり変わっていません。

――野月八段とは将棋を指されるのですか。また今日の対局に向けてどんなアドバイスがありましたか。

渡部 最近は指していなくて。口頭で譜号をいい合う感じで。アドバイスに関しては、今朝LINEで「落ち着いてしなさい」的な文章がきました。

――福間清麗との大きな勝負は久々になります。2019年の女流王位戦で対戦されてから、しばらく観戦者として福間女流の将棋を見てきたと思いますが、どのようなところに進化を感じますか。

渡部 福間女流と西山女流のタイトル戦はもちろん毎回観戦していますが、最近は力戦の将棋が多い印象がありまして。定跡形だけではなく、本当に力が試されるといいますか、将棋の局面を捉える力を上げていかないと上のステージでは戦えないかなというのが率直な感想です。ですので、いろいろな手を知ることをこれからも大事にしていきたいです。

Dsc_4478(真っ直ぐな視線でインタビューに応じる渡部女流四段)