囲み取材
――本日の将棋で勝ちを意識したのはどの辺りでしたか。
伊藤 ▲2五角(77手目)と桂を取ったところで、△同歩とできないのなら、かなりいいのかなと思いました。
――手応えは早い段階から感じていましたか。
伊藤 いえ、形勢がいいという感覚はなくて、一手一手、考えて指していこうという感じでした。
――2期連続での挑戦権獲得となりました。いまの率直な気持ちを聞かせてください。
伊藤 挑戦者になれたことはうれしいですが、番勝負を戦うことになったので、皆様に熱戦をお見せできるようにしなければいけないなと、気が引き締まる思いです。
――前回のタイトル戦出場である女流王位戦(今年の4月~6月)では、福間香奈女流王位を追い込む戦いができたのではないかと思いますが、そのときの経験を踏まえて、今回はどのように戦うことになるでしょうか。
伊藤 女流王位戦は、自分でもびっくりするくらい将棋に集中できて、力を出せました。倉敷藤花戦は、女流王位戦とは違って持ち時間がかなり短くて、前期の番勝負では時間切迫で苦しんだ部分もあったので、時間の面も意識して戦っていかなければいけないと思っています。
――福間香奈女流六冠と西山朋佳女流二冠でのタイトル戦が多くある状況から、中七海女流三段もタイトル戦線に加わり、女流棋界の構図が変わってくるかと思われますが、その中でどのように存在感を示していきたいとお思いですか。
伊藤 中さんが最近、女流棋士になられて、自分も対局しましたが、元奨励会三段というのは想像以上に強いなという部分もあって。その中で、自分も何とか挑戦権争いにからめるように食らいついていかなくては、という思いはあります。
――福間香奈倉敷藤花は、産休から復帰して、さらに成績がよくなっている印象を受けます。最近の福間倉敷藤花の将棋はどのように見ていますか。
伊藤 確かに、産休のブランクを感じさせない内容と結果で、さすがだなと思います。ただ、感心ばかりしていてもしょうがないので、見習って自分も前に進んでいければと思っています。
――最近は王位戦で斎藤明日斗六段を破るなど、活躍していますが、ご自身の状態についてはどのように感じていますか。
伊藤 悪くはないのかなとは思いますが、特別、絶好調という感じでもないですね。盤面に集中できている感じはあるので、それがいい方向に出たのかなと思っています。
――今期の倉敷藤花戦では、青森での対局(伊藤沙恵女流四段-田中沙紀女流1級戦を、おいらせ全国将棋祭りのプログラムの一つとして実施)もありました。
伊藤 注目される舞台で指させていただいて、ありがたかったです。2017年にも、倉敷藤花戦の対局で青森に伺ったことがありました。そのときはかなり緊張感があって、街の雰囲気も全然楽しめていないなという感覚がありましたが、今回はそのときと比べて自分の成長を感じられたというか、リラックスしていい状態で臨めているなという感覚はありました。
――最近は盤面に集中できているとのことですが、それは成長であったり、心境の変化であったり、集中できている理由は何かあるのでしょうか。
伊藤 これを勝ったら、これを負けたら、とかいうことを考えてしまっている時期もあったんですが、それは自分にとってはいいことではないなと。結果はひとまず置いておいて、いい将棋を指したいという気持ちに集中できているという感じです。
――変化のきっかけは、初タイトルである女流名人の獲得(2022年)ですか。
伊藤 そうですね、確かに。きっかけは一つではないと思うんですけど、女流名人のときは、コロナ禍だったこともあって、対局ができるということにまず感謝をして、悔いのないように臨みたいという思いがありました。最近だと、中さんが女流棋士になられて、そもそも挑戦者決定戦にも進めないということもあって。今回はせっかく挑戦者決定戦まで進むことができたので、結果はどうであれ、自分の力を出しきった将棋を指したいと思っていました。
(睡蓮)