2025年5月 4日 (日)


Dsc_3140(勝った伊藤匠叡王)

■勝った伊藤匠叡王の談話

── 相掛かりの出だしから、両方の端歩を突き捨てる展開になりました。
伊藤 後手陣が不安定なうちに▲7五歩(31手目)から動いていこうと思ったのですが、かなり指しすぎだったような気がしていました。

── ▲5八玉(57手目)に45分ほど使っています。この辺りの形勢判断は。
伊藤 △6三金(56手目)に対して何か手段がないかと思っていたのですが、考えても何も見つからなくて、その辺の見通しも甘かったと感じています。本譜は苦しい展開になったと感じていました。

── その後、▲5五香(71手目)と打って秒読みに入り、成香を引いていく展開になりました。
伊藤 駒を取らてしまいそうで結構苦しく、どれだけ粘れるかという展開だと思っていました。

── 局面が好転したと思ったのは。 
伊藤 ▲3一角(127手目)と打てたあたりは指しやすくなっていそうな気がしました。

── 勝ちを意識したのも、そのあたりですか。
伊藤 いや、まだ分からないところも結構あったのですけど、最後▲5五桂(141手目)~▲2一馬が詰めろになったので、その辺りで勝ちになったかなと思いました。

── 一局を振り返って。
伊藤 先手番ながら苦しい展開にしてしまったので、そこは課題が残ったと思うのですが、秒読みに入ってからは辛抱強く指すことができたかなと思います。

── 成香が活躍する将棋でした。
伊藤 そうですね、なかなか六段目まで成香がくるのは珍しい形かなと思ったのですけど、形勢は苦しそうなので辛抱強く指そうと思っていました。

── 防衛に王手をかけました。次局に向けての意気込みを。
伊藤 次は少し間が空くと思うので、もっと中盤戦の精度を上げられるようにやっていきたいと思います。


Dsc_3193(敗れた斎藤慎太郎八段)

■敗れた斎藤慎太郎八段の談話

── ▲7五歩(31手目)に対する△同歩に時間を使われました。この辺りの構想は。
斎藤 持久戦を目指そうかなと思っていたところで、▲7五歩を突かれてしまったので、結構激しい将棋になり、そこからはずっと分からなかったですね。ずっとまとめにくい将棋だなと思っていたので、こちらはこちらで悪くてもおかしくないのかなと思いながら指していました。

── △3四飛(48手目)~△5四飛~△3四歩の順で、角を使う目途が立ったところは。
斎藤 7四の歩を除去するのが難しいので、基本的にはよく分からない感じでした。△3五歩(58手目)で飛車の可動域を広げて、その辺りはまあまあ互角ぐらいにまとめているのかなと思っていました。

── そのあと形勢を損ねたと思った局面があれば教えてください。
斎藤 秒読みに入った直後は選択肢が多かったような気がして、△6四桂(78手目)とか△8四歩(80手目)とかで、ほかの手をやりたかったのですけど。それか、成香にすごい活躍されてしまったので、▲9三香成(73手目)に△8一歩と打っておくんだったかなと。色々と迷って悪いほうにいってしまったかなという感じでした。

── 一局を振り返って。
斎藤 主導権を取られそうな将棋とずっと思っていたのですけど、まずまず、まとめていたような気がします。ちょっと中終盤の精度を欠いてしまったのが、かなりの反省点になりますね。

── 次局に向けての意気込みを。
斎藤 少し期間も空きますし、課題を解消というか、中終盤の大事なところで間違えてしまった気がするので、次局はいい将棋が指せるように準備したいと思います。



Dsc_3124(終局直後の様子)

(書き起こし=夏芽)

投了図

第10期叡王戦五番勝負第3局は、151手で伊藤叡王が勝ちました。終局時刻は20時15分。消費時間は▲伊藤叡王4時間0分、△斎藤八段4時間0分(チェスクロック使用)。

この結果、五番勝負は伊藤叡王の2勝1敗。次戦の第4局は5月26日(月)、千葉県浦安市「ハイアットリージェンシー東京ベイ」で行われます。

20250504qついに伊藤叡王が逆転しました。図から▲6四角△同飛▲7五成香と進んでいます。成香が攻防に働いてきました。先手玉はすぐに寄りのない格好で、攻めに専念できます。

20250504o▲7五歩以下、△同金▲8四成香△5四歩▲8五成香△8六金▲同成香(2図)と進みました。先手は飛車を取られたものの、成香を自陣に引きつけて紛れを求めています。両者ともに秒読みになっています。

20250504n伊藤匠叡王の▲7五歩は勝負手です。自ら飛車を詰まされにいく手ですが、△7五同金に▲7三成香や▲8四成香を作りました。5五香を取られる前に飛車を犠牲に攻めを続けたいところです。

Dsc_2774(巻き返しを図りたい伊藤匠叡王)

20250504l▲9五香に対して△9四歩に、先手は▲5六飛(1図)と回りました。以下、△3四飛▲9四香△8五桂▲5五香△4二銀▲9三香成△9五歩(2図)と進んでいます。

20250504m深浦九段は2図まで進んで後手優勢と見ています。「▲5五香は△7七桂成を嫌ったものですが、△9五歩と打たれて▲9六飛の転回を消されると、先手は△5四歩▲同香△5三歩と香を取りにこられるので忙しい局面です」と話しています。

Dsc_2849(うまい立ち回りで優位を築いた斎藤慎八段)

20250504j局面が激しく動きました。伊藤匠叡王は最後の1歩を使って▲9三歩(1図)と垂らしました。以下△9三同香▲8五桂△7四金▲9三桂不成△同桂▲9五香(2図)と進んでいます。

20250504k9筋で桂香交換になりました。長かった序、中盤に別れを告げて、中、終盤に突入しようとしています。控室では後手持ちとの声も聞かれていますが、形勢はなんともいえない難しさがあるようです。

Dsc_2798001(陣形を立て直して攻勢に出た伊藤匠叡王)

20250504g

じりじりした戦いが続いています。立会人の深浦九段は1図から「斎藤さんの△3四飛▲7七桂に△5四飛(2図)がいい手順でしたね。先手の角が5五にいると後手は角を使いにくいので、飛車で角を追って△3四歩と突く構想がうまかったと思います」と感心しました。

20250504h

 2図以下、▲4六角△3四歩▲7四歩△6二金▲7六飛△6三金(3図)と進んでいます。深浦九段は「後手は角を使うことができましたので、見通しがたってきたと思います。△6三金でうまくキズを消しましたし、後手は歩得をしているので、先手の攻めさえ受け止めてしまえばというところでしょうか」と話し、後手持ちの見解を示しました。

20250504i

Dsc_3076001(控室を訪れた星野良生五段。「どちらを持っても難しい」という)

か茂免は名古屋市東区にある老舗料亭です。名古屋市の町並み保存地区に指定されている白壁エリアに位置します。敷地面積は1000坪を誇る壮観な造りです。庭園には旧皇族、陸軍軍人の賀陽宮家恒憲王氏が作った防空壕が残されています。将棋のタイトル戦は第60期王位戦第1局(豊島将之王位-木村一基九段)、第6期叡王戦第3局(豊島将之叡王-藤井聡太王位・棋聖)、第8期叡王戦第3局(藤井聡太叡王-菅井竜也八段)、第9期叡王戦第1局(藤井聡太叡王-伊藤匠七段)が行われました(肩書きはいずれも当時)。

Dsc_3016(か茂免の門)

Dsc_3041(門をくぐって玄関に)

Dsc_3055(か茂免のロビー)

Dsc_3044(棋士の色紙が飾られている)

Dsc_3046(叡王戦が初開催された第6期の色紙)

Dsc_3048(昨年は第1局が行われた)

Dsc_3056(対局室に続く長い廊下)

Dsc_3061(庭園にはいくつも池がある)

Dsc_3066(大きな鯉が気持ちよさそうに泳いでいる)