2025年5月25日 (日)

歓談に移ってからは、会場に用意された日本酒を佐藤康九段が振る舞うサービスや、明日の見どころを語るトークショーで楽しいひとときになりました。

佐藤康九段は「伊藤叡王と斎藤八段はちょっと世代が違う。しかし、読みの波長が合って、終盤までどちらが勝つかわからない熱戦が続いている。戦型は相掛かりばかり出ているので、また相掛かりではないか。第3局から3週間空いたので、仕切り直しての戦いになる」、三枚堂七段は「NHKで相掛かりの講座を担当したこともあり、今回のシリーズは棋士の中でも楽しんでいるほうだと思う。斎藤八段は読みを入れて踏み込んでくるタイプ。伊藤叡王は受けが強いので、決め手を2回放たないと倒せない。棋風が全く違うのに、熱戦が続くのは珍しい。流れを変えるなら角換わり、特に(斎藤八段が得意にしている)早繰り銀は考えられる」と展望を語りました。

棋士の揮毫色紙などが景品となった抽選会があり、最後にハイアットリージェンシー東京ベイのオーナー会社、相互物産株式会社の浅賀信也・常務取締役が「皆さまが快適に過ごせるようにしっかりお手伝いをしたい。明日の対局が素晴らしいものになるよう祈念したい」と中締めの言葉を述べ、前夜祭は盛況のうちに終了しました。

20250525dsc08882

20250525dsc08885

20250525dsc08890

20250525dsc08908

20250525dsc08935

20250525dsc08948

(相互物産株式会社 浅賀信也・常務取締役)

18時からホテル1階の「ザ ガーデン ブラッスリー&バー」で前夜祭が開かれました。主催の日本将棋連盟からは佐竹康峰・常務理事が「2年間の時を経て実現したタイトル戦。熱い戦い、素晴らしい棋譜を残していただければ」とあいさつ。特別協賛のレオス・キャピタルワークス株式会社から湯浅光裕・代表取締役副社長CIOが「金融は応援。伊藤叡王、斎藤八段をはじめ棋士を応援して支えてきたい」、第4局協賛のハイアットリージェンシー東京ベイから加藤正樹・総支配人が「タイトル戦開催は初めて。最初はクエスチョンマークばかりだったが、いずれビックリマークとして皆さまに感動を持っていただけるようにできれば」と話しました。

両対局者は記念の花束を受け取り、伊藤叡王は「一人で泊まるのがもったいないような贅沢な空間で、タイトル戦の特別感を味わっている。一局を通して集中を保ってよい将棋を指せれば」、斎藤八段は「とても熱意を込めてご準備くださっている。いい対局をして恩返しになれば。まず一局を返せるように精いっぱい頑張りたい」と決意表明。対局者が明日の対局に備えて退出すると、立会人の佐藤康光九段が「熱戦が続いている。明日は注目の一局。名勝負を期待したい」と乾杯の音頭をとりました。

20250525dsc08808

20250525dsc08810

(日本将棋連盟 佐竹康峰・常務理事)

20250525dsc08811

(レオス・キャピタルワークス株式会社 湯浅光裕・代表取締役副社長CIO)

20250525dsc08820

(ハイアットリージェンシー東京ベイ 加藤正樹・総支配人)

20250525dsc08839

20250525dsc08852

(伊藤匠叡王)

20250525dsc088702

(斎藤慎太郎八段)

20250525dsc08879

(立会人 佐藤康光九段)

対局場に到着した両対局者は記念撮影に応じ、対局室の検分に臨みました。盤と駒は日本将棋連盟から運ばれたものが使われます。伊藤叡王が駒箱から駒を出し、斎藤八段とともに数枚ずつ並べて見え方に問題がないか確かめます。照明や空調も確認がなされ、問題なく数分で終了しました。

20250525dsc08652

20250525dsc08730

20250525dsc08768

20250525dsc08751

伊藤匠叡王に斎藤慎太郎八段が挑戦する第10期叡王戦五番勝負は、挑戦者が開幕局を制した後に叡王が2連勝しました。伊藤叡王が初防衛を決めるか、斎藤八段がフルセットに持ち込むか。第4局は5月26日(月)、千葉県浦安市「ハイアットリージェンシー東京ベイ」で行われます。

立会人は佐藤康光九段、記録係は吉田響太三段(所司和晴七段門下)。現地大盤解説会(事前申し込み締め切り済み)は三枚堂達也七段と和田あき女流二段が担当します。

対局開始は10時、昼食休憩は12時30分から13時30分まで。持ち時間は各4時間(チェスクロック使用)、使いきると1手60秒未満の秒読み。第4局は斎藤八段の先手番です。

中継は棋譜・コメント入力を紋蛇、ブログを文が担当します。

【主催:株式会社不二家】
https://www.fujiya-peko.co.jp/eiou/

【特別協賛:ひふみ】
https://hifumi.rheos.jp/

【協賛:中部電力株式会社】
https://www.chuden.co.jp/

【協賛:株式会社豊田自動織機】
https://www.toyota-shokki.co.jp/index.html

【協賛:豊田通商株式会社】
https://www.toyota-tsusho.com/

【協賛:AMD】
https://www.amd.com/ja.html

【協賛:アパリゾート佳水郷】
https://www.apahotel.com/resort/kasuikyo/

【第4局協賛:ハイアットリージェンシー】
https://hyattregencytokyobay.jp/top/

2025年5月 4日 (日)

Dsc_3375(大盤解説会場から戻って感想戦が行われた)

Dsc_3421(成香の活躍で激戦を制した伊藤匠叡王)

Dsc_3532(指しやすい局面があったものの生かせなかった斎藤慎八段)

Dsc_3405(検討に励む伊藤匠叡王)

Dsc_3544(一手のミスが明暗を分けた斎藤慎八段)

Dsc_3563(防衛まであと1勝とした伊藤匠叡王)

Dsc_3510(第4局で巻き返しを図りたい斎藤慎八段)

Dsc_3582(立会人の深浦九段が感想戦を見守る)

本局の中継は以上です。遅くまでご観戦いただき、ありがとうございました。第4局もお楽しみに!

Dsc_3207(終局後、両対局者はファンの待つ大盤解説会場に移動した)

Dsc_3235(勝った伊藤匠叡王。右は解説の豊島将之九段)

Dsc_3315(敗れた斎藤慎太郎八段。左は聞き手の貞升南女流二段)

Dsc_3360(激戦を繰り広げた両雄に盛大な拍手が送られた)


Dsc_3140(勝った伊藤匠叡王)

■勝った伊藤匠叡王の談話

── 相掛かりの出だしから、両方の端歩を突き捨てる展開になりました。
伊藤 後手陣が不安定なうちに▲7五歩(31手目)から動いていこうと思ったのですが、かなり指しすぎだったような気がしていました。

── ▲5八玉(57手目)に45分ほど使っています。この辺りの形勢判断は。
伊藤 △6三金(56手目)に対して何か手段がないかと思っていたのですが、考えても何も見つからなくて、その辺の見通しも甘かったと感じています。本譜は苦しい展開になったと感じていました。

── その後、▲5五香(71手目)と打って秒読みに入り、成香を引いていく展開になりました。
伊藤 駒を取らてしまいそうで結構苦しく、どれだけ粘れるかという展開だと思っていました。

── 局面が好転したと思ったのは。 
伊藤 ▲3一角(127手目)と打てたあたりは指しやすくなっていそうな気がしました。

── 勝ちを意識したのも、そのあたりですか。
伊藤 いや、まだ分からないところも結構あったのですけど、最後▲5五桂(141手目)~▲2一馬が詰めろになったので、その辺りで勝ちになったかなと思いました。

── 一局を振り返って。
伊藤 先手番ながら苦しい展開にしてしまったので、そこは課題が残ったと思うのですが、秒読みに入ってからは辛抱強く指すことができたかなと思います。

── 成香が活躍する将棋でした。
伊藤 そうですね、なかなか六段目まで成香がくるのは珍しい形かなと思ったのですけど、形勢は苦しそうなので辛抱強く指そうと思っていました。

── 防衛に王手をかけました。次局に向けての意気込みを。
伊藤 次は少し間が空くと思うので、もっと中盤戦の精度を上げられるようにやっていきたいと思います。


Dsc_3193(敗れた斎藤慎太郎八段)

■敗れた斎藤慎太郎八段の談話

── ▲7五歩(31手目)に対する△同歩に時間を使われました。この辺りの構想は。
斎藤 持久戦を目指そうかなと思っていたところで、▲7五歩を突かれてしまったので、結構激しい将棋になり、そこからはずっと分からなかったですね。ずっとまとめにくい将棋だなと思っていたので、こちらはこちらで悪くてもおかしくないのかなと思いながら指していました。

── △3四飛(48手目)~△5四飛~△3四歩の順で、角を使う目途が立ったところは。
斎藤 7四の歩を除去するのが難しいので、基本的にはよく分からない感じでした。△3五歩(58手目)で飛車の可動域を広げて、その辺りはまあまあ互角ぐらいにまとめているのかなと思っていました。

── そのあと形勢を損ねたと思った局面があれば教えてください。
斎藤 秒読みに入った直後は選択肢が多かったような気がして、△6四桂(78手目)とか△8四歩(80手目)とかで、ほかの手をやりたかったのですけど。それか、成香にすごい活躍されてしまったので、▲9三香成(73手目)に△8一歩と打っておくんだったかなと。色々と迷って悪いほうにいってしまったかなという感じでした。

── 一局を振り返って。
斎藤 主導権を取られそうな将棋とずっと思っていたのですけど、まずまず、まとめていたような気がします。ちょっと中終盤の精度を欠いてしまったのが、かなりの反省点になりますね。

── 次局に向けての意気込みを。
斎藤 少し期間も空きますし、課題を解消というか、中終盤の大事なところで間違えてしまった気がするので、次局はいい将棋が指せるように準備したいと思います。



Dsc_3124(終局直後の様子)

(書き起こし=夏芽)

投了図

第10期叡王戦五番勝負第3局は、151手で伊藤叡王が勝ちました。終局時刻は20時15分。消費時間は▲伊藤叡王4時間0分、△斎藤八段4時間0分(チェスクロック使用)。

この結果、五番勝負は伊藤叡王の2勝1敗。次戦の第4局は5月26日(月)、千葉県浦安市「ハイアットリージェンシー東京ベイ」で行われます。

20250504qついに伊藤叡王が逆転しました。図から▲6四角△同飛▲7五成香と進んでいます。成香が攻防に働いてきました。先手玉はすぐに寄りのない格好で、攻めに専念できます。