大盤解説会で振り返る
終局直後
■藤井聡太叡王
――両者一分将棋の大熱戦、お疲れさまでした。一局を振り返っていかがでしょうか。
藤井 こちらが序盤から動いていけるかという将棋だったんですけど、中盤で手の組み合わせが難しくて、本譜は少し自信のない展開になってしまったのかなと思って指していました。よくわからなかったんですけど、▲7七香(65手目)と打ったあたりから、こちらの玉が安全になって少しずつ指しやすくなったのかなと思います。
――中盤で長考して▲6五桂(37手目)と跳ねたところは激流の変化も含んでいると思うのですが、成算はどうでしたか。
藤井 ▲2四同飛だと2歩損が残って、9三の桂も△8四歩から△8五桂でさばかれてしまうので、自信がないのかなと思って。本譜か、▲2四歩を入れずに▲6五桂と跳ねるか、うーん、本譜▲2四歩(35手目)と打ってしまうと攻めが細くなるので、あまりよくない変化を選んでしまったかもしれないと思っていました。
――久しぶりの公式戦になりましたが、ブランクはどうだったでしょうか。
藤井 かなり前回の対局から期間があったので、やってみないとわからないところもあるかなと思っていたんですけど、始まってからは普段通り指すことができたのかなと思います。
――序盤から緊迫した展開で、不二家さんのおやつも出ましたが、楽しめたでしょうか。
藤井 10時の段階ですでに戦いが起こっていて、ゆっくりいただくという感じではなかったです。ただ、戦いの合間であっても一つの楽しみ、息抜きとしていただくことができました。
――名古屋で行われる第2局に向けての抱負をお願いします。
藤井 本局は途中少し時間を使ってしまったところがあったと思うので、第2局以降はそのあたりも修正して戦えればと思います。
――先ほどのお話にあった▲7七香(65手目)を一分将棋の前に指したのは巧妙だと思いましたが。
藤井 そのあたりはすでに持ち時間が少なかったので、決断よく指そうと思っていました。
■出口若武六段
――出口さんは一局を振り返っていかがでしょうか。
出口 ちょっと無理気味に動いてしまったかなという印象があって、昼休のあたりは動いてこられるのかなと思ってはいたので。でも考えても代案が浮かばないというか、結局いちばん最初に読んだ筋にいってしまったのが……何かあったかもしれないですね。1歩捨ててきているので、しっかりした手があってもいいのかなと思ってはいたんですけど。考えてもわからなかったので。やっぱりまとめるのが、歩得ですけど手損なので、大変でしたかね。
――途中で△6五飛(40手目)と桂を食いちぎったあたりは。
出口 違う展開を描いていたんですけど、そこで誤算に気づいて、本譜では苦しいかなと思っていたんですけど、いちばん息が長く指せる順が本譜かなと思って。
――かなり首を振りながら指す姿が印象的でした。
出口 (飛車を)引いてしまったら切るしかないので。引いたあたりでちょっと誤算に気づいたというか。
――初のタイトル戦で不二家さんのおやつや食事は楽しめましたか。
出口 環境もよい環境で指させていただきましたし、ご飯も泊まるところも全部ありがたいものだという認識です。将棋のほうをもっとちゃんと指したかったなというのがあるんですけど、慣れない部分がやっぱりあったかなという印象ですね。この2日間を振り返ってみると。ちょっとずつ慣れていかないといけないなと思うところがありましたね。息が長く戦えたというのは……でももう少し内容をよくして次を迎えられたらと思います。
藤井叡王が先勝
93手で藤井叡王が勝ちました。終局時刻は18時20分。消費時間は、両者4時間。第2局は5月15日(日)愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われます。