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感想戦の前に両対局者は大盤解説会を訪れ、ファンの前で感想を述べました。
(西山白玲)
「皆さま、長時間ご観戦いただきましてありがとうございました。 本局は、二転三転の将棋だったかなと思うんですけれど、最後は幸運な面もあったのかなと思います。ここからもまだまだ長いので、しっかり準備して一局一局、大事に指せていければいいなと思いますので、ご注目いただけますと幸いです。本日はありがとうございました」
(福間女流五冠)
「長時間ご観戦いただきまして、本当にありがとうございます。本局は序盤から難しい将棋だったんですけれども、最後の方はちょっと時間がない中でミスが続いてしまったかなというふうに思います。2局目以降も気持ちを切り替えて頑張ってまいりたいと思います。本日はありがとうございました」
【西山白玲のインタビュー】
――序盤戦、少し時間を使いながらゆっくり進められているようにも見えたんですが、序盤のペースに関しては何か意識されるところはありましたか。
「そうですね。やっぱり普段の対抗形と比べると2筋の歩を突き出されていないということなので、その違いがどこで現れるかっていうのをできるだけ考えながら指していました」
-その後、△4五歩と自分から開戦される形でしたけれども、この開戦した辺りはどのように見ておられましたか。
「ちょっと▲6五歩の切り返しをずっと読んでしまっていたので、本譜はかなり予定変更でした」
――控室では後手のほうが形勢が少しいいのではないかという評判の中盤戦だったんですが、その辺りはご自身ではどう感じておられましたか。
「桂損と竜という交換で。ただ先手玉が堅いので、と金が間に合うかといったところだったんですけれど、本譜は想像以上に端と5筋の攻めが速くて結構、速度計算だったり、2筋の応酬で誤ったのかなと思っていました」
――今日は椅子とテーブルでの対局ということになりました。これで戦ってみて、どのような感想がありますか。
「そうですね。本当にたくさんご配慮いただきまして。普段通りに指せているかなと思います」
【福間女流五冠のインタビュー】
――▲6六歩と突いて、△4五歩と仕掛けられたあたりはどのように見てもらいましたか。
「本譜でどうなのかなと思っていました」
――進んで△4六桂と打たれたところで30分近く考えられたですが、あの辺りはどのように形勢を見ておられましたか。
「(桂打ちは)あんまり考えていなくて、▲4七金だったりを比較しながら考えてました」
――その後はかなり大激戦となったんですけど、この一局を振り返ってのご感想はいかがでしょうか。
「うーん、指しやすい局面もあったかなと思うんですけど、しっかり読み切らきれないまま指してしまったのが反省点ではあります」
――最後に椅子とテーブルでの対局について感想をお願いします。
「すごくいい環境を整えていただいて、集中して指すことができました」
152手まで、西山白玲が福間女流五冠を下しました。終局時刻は18時32分。消費時間は、▲福間4時間0分、△西山4時間0分。七番勝負は西山白玲が先勝。第2局は9月14日(土)、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で行われます。
図は馬取りを手抜き、1一の馬を竜取りに引いたところ。即座に羽生九段が「△7七香と打ったらどうするんですか?」と指摘しました。秒読みに突入した西山白玲、△7七香と迫っています。▲同馬は竜取りが外れ、▲7七同桂は△8九銀です。実戦は△8九銀まで進み「面白い終盤になりました」と野月八段。期待にたがわず、大激戦です。
最終盤に突入しました。図は3四の飛車が成ったところです。△3七飛成としたのが嫌みをつける勝負手で、検討陣から「気持ち悪い」(勝又七段)、「いやいや、そうか。そのほうがいいですね」(羽生九段)の声が漏れました。後手は△8六桂▲8八玉△9七銀の筋を狙っています。▲同香△9八飛、▲同桂は△8九飛▲同玉△8七竜です。
図の局面で、残り時間はともに3分。福間女流五冠は持ち時間を使いきって、▲4七金打と受けました。先手勝ちかは、まだはっきりしていません。
福間女流五冠の勝負手で、ヨリが戻ったと見られています。△3八竜でと金攻めが受かりませんが、▲3九歩△2八竜▲6五歩△3七歩成▲5九銀がよい勝負手でした。
飛車を竜にぶつけています。後手は△1九竜と交換を避けたいですが、それは▲9四桂△7一玉▲5五飛△同銀▲同角がうるさいようです。
△5三香と角を追うと、▲6四歩△5五香▲6三歩成△同銀▲6四歩の進行が予想されます。
先手玉は絶対に詰まない形で、△5九香成と銀を取られても詰めろにならないため、寄せに専念できます。「これは後手がしのげる気がしない……」と羽生九段。
西山白玲は△5八竜と飛車交換に応じましたが、これでは明らかに予定変更で後手変調です。形勢不明で終盤に突入しました。
手筋の端攻めに、西山白玲がうまい対応を見せました。▲9五歩に、△同歩は▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂があります。実戦は△3六歩と垂らしました。
▲9四歩よりも、飛車を攻める△3七歩成のほうが厳しいので、▲3八歩と受けるしかありません。それを見てから△2四角(△5七角成▲同金△4八竜の狙い)▲5八飛△9五歩が絶妙でした。
端で歩切れを解消すれば、次は△4六歩のと金攻めが厳しいです。3筋の利かしは後手の得になっており、△2四角に▲5八飛の受けを限定しています。もし3筋の利かしがないと、△2四角に▲1八飛の余地を与えるところでした。
実戦も、△9五同歩に▲9三歩△4六歩で後手の狙いが実現しています。駒の勢いを重視する西山将棋を支えるのは、中盤での繊細な指し回しです。歩を垂らすタイミング、手を戻すタイミングを間違えないからこそ、激しい攻めがつながっていきます。控室の検討を上回る押し引きのうまさでした。