(西山白玲は二転三転の終盤を制した)
□西山白玲のインタビュー
―― 駒組みの印象について
方針選択が難しいので自然な手を選んでいるつもりでしたが、どこかで形勢を損ねていたかなと思います。
―― 先に端を攻められる展開だった。
気になるところではありますが、こちらからそれほど対応もないのかなというところで、本譜の順を選んでいました。
―― 昼食休憩明けから、今度は攻めていく展開となった。
△3六桂(80手目)の組み立てでしたが、▲2五角(85手目)を軽視していました。△1四歩(48手目)では、ほかの手段もあったのかもしれません。
―― 形勢の好転を意識したのは。
迫られているところも分からず、最後でした。こちらに詰みがないので、可能性があるかなと思っていました。
―― 本局の勝利で2勝目。第4局に向けての意気込みについて。
日程が決まっていますので、しっかり準備していいコンディションで臨めればと思います。
(敗れた福間女流四冠)
■福間女流四冠のインタビュー
―― 相振り飛車で端から先に攻める展開となった。
動いていった割りには、手が難しかったのかなと思っていました。
―― 昼食休憩明けからは、受けに回る展開だった。
あまり自信はなかったです。
―― 中盤、終盤でポイントの局面は。
本譜は急に崩れてしまったので、その辺りでしょうか。
―― 第4局に向けて。
力を出しきれるように頑張りたいと思います。

ヒューリック杯第6期白玲戦七番勝負第3局は、166手で西山白玲が勝ちました。終局時刻は18時23分。消費時間は▲福間女流四冠4時間0分、△西山白玲4時間0分(チェスクロック使用)。
この結果、七番勝負は西山白玲の2勝1敗。第4局は9月26日(土)、京都府京都市「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」で行われます。
後手の猛攻の間隙を縫って、福間女流四冠は後手玉に迫りました。▲6三桂と捨てて、△同金に▲4三とが、▲8一金以下の詰めろになります。しかし、谷川十七世名人はその進行で、6三の金が先手玉の詰み筋に働く懸念を示しました。双方残り10分を切り、局面は最終盤。どちらが勝つにせよ、決着は近そうです。
本局の立会人である谷川十七世名人も、羽生善治九段と100番指しを達成しています。
100局目の対局(2000年6月、第71期棋聖戦五番勝負第1局)は、節目の対局として意識していました。当時は横歩取りなども流行していたのですが、短手数で決着がつきやすい展開を避けるため、振り飛車を選択しました。第一線で活躍できる期間には限りがあります。100局に到達するにはタイトル戦で対局数を重ねることや、互いの年齢が近く、全盛期が重なることなどの条件が必要です。そういったことを考えると、大山(康晴十五世名人)先生と中原(誠十六世名人)先生のカード(162局)はふた回り年齢が離れていたにもかかわらず100局以上対局していますから、大山先生の凄さを改めて感じます。
羽生九段との対局は、当初は意識過剰になる面もありましたが、100局を超えたあたりからは盤上だけに集中した勝負ができるようになりました。数多く戦う中で、当事者同士でしか分からない共通認識や空気感が培われていきます。戦型に関しても、初期の矢倉や角換わりから横歩取り、対抗形などに流行が移り、40歳前後からは相振り飛車なども増えました。相振り飛車は序盤から自由度が高く、二日制のタイトル戦は、序盤から時間をかけて新しい戦法をふたりで作り上げていくのに最適な舞台でした。
かつては中原-米長(邦雄永世棋聖)戦の対局数(187局)を上回ることを目指していましたが、40代以降はわたしのタイトル戦への出場機会が減ったことで、168局で止まっています。今後どれだけ対局できるかは未知数ですが、現役を続けていく上での大きな目標のひとつとなっています。
本局を戦うふたりは、今回が26回目の番勝負です。男女問わず1位となる記録で、容易には破られないでしょう。今後の女流棋界も、しばらくはこのふたりを中心に展開していくと考えられます。
本局を戦う両者は、今年1月末日に指されたユニバーサル杯第52期女流名人戦五番勝負第2局で「100番指し」を達成しました。女流棋界では、清水女流七段-中井広恵女流六段戦に次ぐ2例目の大記録です。100番指しについて、清水女流七段にインタビューしました。
同じ相手との積み重ねに対して感慨深いものはありましたが、100局目を迎えてもそれは通過点でした。ただ、振り返ってみると、一局一局に思い出や様々な感情が込められています。自分だけでは絶対に達成できる記録ではなく、相手がいて、さらに番勝負でないと指す機会もなかなか増えません。そういう意味では、互いの努力の結果が数字に現れたのだと感じます。
100局近く指していると、家族と過ごす時間よりもタイトル戦で一緒にいる時間のほうが長くなり、ふたりだけで感じられる独特の雰囲気や感覚が培われていきます。相手の機微を感じ、何を考えているかが、自ずと伝わってくることがあります。同じ時間を過ごし、同じ高みを目指していいものを作り上げていこうという思いが互いに伝わっていたのではないでしょうか。
どちらも研究を重ねて工夫して臨むため、同じ指し手であっても背景にある感情や思いは全く異なります。自分が用意して指した研究に対し、それを上回る対応をされたときはショックもありますが、同時に「また頑張らなければ」といううれしさや刺激もありました。昔はタイトル数がいまよりも少なかった時代であり、その中で同じ相手と数多く戦えたのは非常にありがたく、貴重な経験です。現在、本局を戦う彼女たちが活躍し、大きなタイトル戦で100番を超えた対局を重ねていることで、過去のわたしたちの戦いにも改めて注目していただけることをうれしく思っています。
中井女流六段が、現在もトップで活躍される姿に大きな敬意を抱いています。先日の女流順位戦B級リーグで久々に対局したときは、対局までがとても楽しみでありましたし、大きな充実感を得られるものでした。さらに対局数を重ねていくためには、自分がもっと努力して追いつかなければならないと感じますので、いいモチベーションになっています。