第2期七番勝負第7局 Feed

2022年10月21日 (金)

記者会見

感想戦後に、里見香奈新白玲の記者会見が開かれました。

Dsc_9767 (記者会見に臨む里見香奈新白玲)

司会 里見新白玲にシリーズを振り返って、いまの心境を語っていただきます。

里見 白玲戦は私自身、初めての七番勝負のタイトル線でした。苦しい将棋もあり、一方的に負けてしまう将棋もあり、接戦もあり、とさまざまな対局を経験することもできました。自分のいい分も悪い部分も出たタイトル戦だったと思います。その中でも気持ちを切らさずに最終局を指すことができまして、大変貴重な経験をさせていただいたと思っています。

――女流最高棋戦の白玲を獲得して、女流六冠に復帰しました。あらためて六冠に復帰したお気持ちをお聞かせください。

里見 そうした結果を残せたことは大変光栄に思っています。ただ、今シリーズを対局してみて、自分の弱い部分を新たにたくさん知れたので、そうしたところを改善しないことには厳しい戦いになると思っています。

――今回のタイトル獲得で50の大台に乗りました。最多タイトル数を更新し続けていますが、50についてどのように思いますが

里見 数字はあまり気にすることはありませんが、一つ大きな結果を出すことができて、その部分には素直にうれしい気持ちがあります。

――女流六冠となりました。女流タイトル戦は8つであと2つです。あと1つ増やす可能性もあります。将来的なことも含めて、女流七冠、女流八冠の全冠制覇についてはどのように考えていますか。

里見 私自身は結果を重視しないところがありまして、それでかえって自分の持っている力を出しきれていると思います。今後も棋力向上を目指して精進していきたいと思っています。

――いい部分も悪い部分も出たという話が出ました。里見さんが感じているいいところ、課題と思えるところを差し支えない範囲で教えていただけたらと思います。

里見 初めての七番勝負ということで、対局が長丁場になりました。そういった日程の中で、一局一局気持ちを切り替えて指すことができたので、そこはとてもよかったと思います。課題はたくさんありますが、一方的な内容になった対局もありまして、崩れない力や安定度がもっと必要と思っています。

――女流順位戦を勝ち抜いての白玲戦七番勝負の挑戦でした。女流順位戦から白玲戦の一連の戦いをどのように振り返られるでしょうか。

里見 長丁場の戦いでしたが、私自身は目の前の対局を一局一局全力で指すことを心がけていました。タイトル戦にかんしては、北から南まで各地で対局させていただき、その中でも最高の環境を整えていただきました。それが自分のモチベーションとなって力を発揮できたので、関係者のみなさまには感謝しています。

――順位戦のシステムにはどのように感じられましたか。

里見 初めての順位戦ということで、最初に聞いたときはとてもうれしかったです。公式戦なのですが、棋力向上にするにあたって最高の勉強の場を与えていただいておりましたので、かみしめながら対局していました。

Dsc_9776 (時折、笑みを浮かべる場面も)

――「いつも自分らしい将棋を指せたら」というお話しをされています。今回のシリーズは全局相振り飛車になりました。現代将棋においては定跡がまだ確立されていない種類の領域の将棋と思いますが、それを西山さんと7局指して、ある意味新しい定跡をつくった、新しい部分を見せたところがあったと思います。二人で作り上げた7局という視点では、どのようなシリーズでしたか。

里見 相振り飛車はまだまだ定跡が確立していないので、指していて自分の頭で考えるという点で、対局していて緊張感はありますがちょっとした楽しさを感じることができました。西山さんの棋風は私と正反対ですので、毎局新鮮な手が飛んでくるといいますか。そうした手に応手を考えるのは、対局中はそれどころではないんですけど、終わってみるとすごく充実感があったシリーズだったと思います。

――直前に悔しいこと(棋士編入試験が3連敗で不合格)があったのを乗り越えて新しいタイトルを獲得しました。いままでにない価値があるように思いますが、お気持ちを聞かせていただけたらと思います。

里見 私自身は新しいことに挑戦していくのがすごく楽しいというか、そういう部分があるので、今回の七番勝負もそうですが、いままでにないような貴重な経験をさせていただいて、自分自身が成長できるようなシリーズになったと思っています。

――西山さんとの対戦は本局が今年度19局目です。現状は23局が最多記録ですが、すでに23局以上が確定しており、記録更新の可能性もあります。西山さんとたくさん指したということ、記録更新の可能性があることに感想をいただけたらと思います。

里見 西山さんとの対局は多いですが、毎局毎局新しく得るものがあって、対局していて勉強になる部分があります。これからも対局する機会が多いと思いますが、棋力向上を目指して、より高みを目指していけたらと思います。

――タイトなスケジュールの中で強敵と対局している状況です。以前から囲碁界の藤沢里菜さんが同じような状況で影響を受けているという話をされていますが、同じような目標を持った仲間がいることはモチベーションにつながりますか。

里見 お隣の囲碁界では、世界戦や藤沢さんをはじめ、目覚ましい活躍を目にしていい刺激を受けています。私自身ももっともっと頑張っていこうと思える存在です。

――今後も対局が続きます。ご自身の目標についてありましたら教えてください。

里見 目標はあまり明確なものはありませんが、いまの自分よりも強くなれるように日々過ごすことが最大の目標です。

――対局ばかりで忙しいと思いますが、息抜きはありますか。

里見 うーん、そうですね。白玲戦の七番勝負で各地をめぐらせていただいて、どこも素敵なところでした。対局前後ですごくリラックスさせていただいたのが、一つの癒やしでした。

あと、最近は柔道の世界選手権があって、それをテレビで1週間観戦して癒やしになりました。

Dsc_9871 (西浦三郎・ヒューリック株式会社代表取締役会長から花束が贈られた)

Dsc_9839

Dsc_9896 (新白玲の揮毫色紙「清明」)

第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のブログ更新は以上となります。ご観戦ありがとうございました。
すでに、ヒューリック杯第3期女流順位戦はC級とD級が開幕。A級とB級も10月31日に行われます。里見香奈白玲に挑戦するのは誰か。また、激しい昇級争いも含めて、これからも熱い戦いにご注目ください。

終局直後(2)

Dsc_9708 (96手目△6七金で終局)

Dsc_9711 (里見女流五冠)

Dsc_9705_2 (西山白玲)

Dsc_9722 (インタビュー後、感想戦が行われた。常務理事の清水市代女流七段は、朝は京都市で行われている第35期竜王戦第2局の対局開始に立ち会っていた)

終局直後(1)

終局直後に両対局者にインタビューが行われました。

Dsc_9648 (終局直後の対局室)

――白玲獲得おめでとうございます。序盤は第6局まで同じ進行から、△4四銀(18手目)と手を変えました。

里見 作戦の一つとして考えていました。

――その後、先手が▲9五歩(37手目)と端攻めをされました。控室ではあまり予想されていませんでしたが、どのように感じていましたか。

里見 読んでいると、結構うるさいと思いました。その対応がよくわからなかったです。

――△8五香(46手目)から大駒を押さえ込みにいきました。そのあたりの形勢はどのように考えていましたか。

里見 (△8五香に▲9四歩と香を取って)角を取らせる順だと思ったので少し意外だと思いました。

――形勢がよくなったと思われたのはどのあたりでしょうか。

里見 △9九飛(72手目)と飛車を下ろしたところです。

――では、具体的に勝ちと意識されたところはどこでしょうか。

里見 △6八同角成(92手目)のあたりです。

――一局を通しての感想をお願いします。

里見 力戦になったと思いますけれども、難しい将棋だったと思います。

――今シリーズはすべて相振り飛車でしたが、振り返っていかがでしたか。

里見 一方的な内容で負けてしまった対局もありました。そのあたりの反省を生かして、今後に向けて頑張りたいと思います。

――これで八大タイトルすべてを経験することになります。お気持ちをお聞かせください。

里見 七番勝負は初めてでしたが、本当にいい経験をさせていただきました。それを今後の糧にしたいと思います。

――3年ぶりに女流六冠に復帰しました。それについても一言いただけますか。

里見 一方的な内容の将棋もあったので、少し何か変化していかなければと思っています。

――タイトル獲得数が50になりました。14年ほど前に初タイトル(倉敷藤花)を獲得してから積み重ねてこられましたが、それについてはいかがですか。

里見 その間に棋戦も増やしていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。

Dsc_9666 (インタビューを受ける里見香奈女流五冠の表情は厳しかった)

―――――――――――――――――――――

――序盤、▲3八金(17手目)まで同じ進行で、次の△4四銀と手が変わりました。それへの印象はいかがでしょうか。

西山 一手一手考える展開になったと思いました。

――その後に▲9五歩(37手目)から端攻めに出ました。控室で予想されていませんでしたが、それへの見解はいかがでしたか。

西山 △8五香(46手目)と打たれたときに、本譜の進行と▲7五角と▲9四歩の3つあって、どれもありそうと思ってしまって突っ込んでしまったのですが、もしかしたら無理筋だったのかなと。薄い内容にしてしまったかなと思いました。

――△8五香から大駒が押さえ込まれる展開でしたが、▲7九飛(49手目)と引いたあたりは形勢をどう判断されていましたか。

西山 当初は▲3九玉(51手目)で▲9四歩△6六銀▲同銀△同角に▲6七香の展開で、△8八角成▲7五飛がいいのかなと思ってしまいました。そのあたりの感覚がよくなかったと思いました。

――苦しいと感じたのはどのあたりでしょうか。

西山 軌道修正が多かったのですが、5五に馬を引かれたあたり(58手目)は手がない感じがしました。

――一局を通しての感想をお願いします。

西山 そうですね。攻める展開が魅力的に見えて動いてしまったのですが、もう少し長い展開にするべきだったかもしれません。

――シリーズを振り返っていかがでしょうか。

西山 七番すべて指させていただき、大変光栄なことだったと思っています。シリーズを通して相振り飛車をたくさん指して経験できて、実りのあるシリーズだったと思います。

Dsc_9697 (敗れた西山朋佳白玲。攻め将棋の持ち味を出せなかった)

里見香奈女流五冠が初の白玲獲得を果たす

20221021_96

西山朋佳白玲に里見香奈女流五冠が挑戦する第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局は、16時41分に96手で里見女流五冠の勝ちとなりました。消費時間は▲西山3時間22分、△里見3時間17分。
勝った里見女流五冠は初の白玲獲得。2019年以来となる女流六冠復帰を果たし、タイトル獲得数を通算50期と大台に乗せました。
敗れた西山白玲は初防衛が成りませんでした。

つらい辛抱

20221021_74

図は74手目△7二金の局面。西山白玲は△6八成香▲同金△5九飛成の攻め筋を防いで▲4九銀と打ちました。しかし、これでも△5六歩や△5七銀不成といった厳しい攻めが残っています。つらい辛抱です。
図の局面に限っていうと、仮に2八に先手の銀がいなければ、▲2三角△6八成香▲3二角成△5八成香▲4一馬と攻め合うことができました(実戦の場合は▲4一馬に△5九飛成の1手詰)。
西山白玲は壁銀がたたって、強く戦えないため▲4九銀と粘ったのでした。里見女流五冠の指し方が的確で、優位を広げているとみられます。

Dsc_9574_2

鳩森八幡神社

Dsc_9247 (千駄ケ谷駅と将棋会館の間にある鳩森八幡神社。1160年以上の歴史がある)

Dsc_9279 (神社内にある「将棋堂」。毎年、1月5日に将棋堂祈願祭が行われる)
https://www.hatonomori-shrine.or.jp/publics/index/96/

Dsc_9260 (鳩のおみくじ)

飛車を追い詰める

20221021_56

上図は56手目△8八角成まで。ここから▲9四歩△5五馬▲5六香△7八成香▲6七飛△8八馬と進みました(下図)。
里見女流五冠は先手の飛車をさばかせないように指しており、下図で△6六銀と打てば先手の飛車を取れます。後手が飛車を持てば、△6九飛などと打つ手が厳しいです。先手陣は2八銀の壁銀が泣きどころです。かといって、下図で▲6五飛と浮いても、△5五歩▲同香△6四銀と厚く指されて、香を取られていけません。
実戦は下図から△6六銀が実現して、里見女流五冠は飛車を取ることができました。立会人の飯野八段は「壁銀がたたりますね」。形勢は後手が優位に立ったとみられています。



20221021_62

Dsc_9550 (里見女流五冠が優位に立ったとみられている)

午後のおやつ

15時になり、対局者に午後のおやつが出されました。
おやつは「和栗のフォンダンショコラ」、「ショコラアップルパイ(紅茶)」、「スティックラスク(抹茶デコチョコレート、イチゴミルクチョコ、フラワーピンクチョコ)」。
飲み物は、西山白玲は「りんごジュース」と「アイスコーヒー」。里見女流五冠は「りんごジュース」と「アイスミルクティー」が出されました。

Dsc_9636_2 (対局者の午後のおやつ)

Dsc_9643_2 (西山白玲の飲み物)

Dsc_9647_2 (里見女流五冠の飲み物)

千駄ケ谷駅(2)

Dsc_9202 (千駄ケ谷駅からすぐのところにある東京体育館。2021年に行われた東京オリンピックでは卓球が行われた)

Dsc_9229 (東京体育館の向かいではビル建築の工事中。2024年にここに建てられるビルに将棋会館が移転する予定だ)

Dsc_9236



千駄ケ谷駅

Dsc_9214 (将棋会館最寄り駅のJR千駄ケ谷駅。地名は千駄ヶ谷、駅名は千駄ケ谷。「ケ」が小文字か大文字かで違いがある)

Dsc_9219 (駅内にある将棋会館の案内。駅から将棋会館まで徒歩6分とのこと)

Dsc_9221

Dsc_9223 (大山康晴十五世名人書による「王将」の駒のモニュメントと羽生善治九段書の「千駄ケ谷」。「王将」は1980年に作られたもの)

【JR千駄ケ谷駅「将棋コーナー」除幕セレモニーの模様】
https://www.shogi.or.jp/event/2020/08/jr.html