(局後インタビューを受ける伊藤匠七段。タイトル戦での初勝利、13局目での対藤井叡王戦の初勝利となる大きな一勝を挙げた)
―――先手で角換わりを目指す戦いでした。序盤の構想はいかがでしたか。
伊藤 早い段階で前例の少ない形になって、一手一手を手探りで指していました。
―――△3三金型の早繰り銀にということでしょうか。
伊藤 そうですね。
―――前例がない中で、どういうことに気をつけながら指していましたか。
伊藤 ▲1五歩と端歩に2手かけましたが、激しく動いてこられる展開になって、一手一手難しい将棋だと思っていました。
―――38手目△7二歩で昼食休憩になりました。どのような形勢判断でしたか。
伊藤 難しいと思っていました。
―――休憩明けは後手の飛車を追って、途中は金桂交換になりました。
伊藤 互いに選択肢が広いと思っていて、よくわからないまま指していました。
―――形勢の好点や手ごたえはどのあたりで感じましたか。
伊藤 ▲4四歩と打ったあたりはいけそうかなと思っていましたが、最後もはっきりとした順は見えていないまま指していました。
―――勝ちが見えてきたのは本当に終わりのところですか。
伊藤 そうですね。
―――叡王戦1勝ということですが、藤井叡王との対戦でも初勝利でした。その感想についてはいかがですか。
伊藤 そうですね。勝てていなかったので、一つ結果が出たのはよかったです。番勝負は続くので引き続き頑張りたいと思います。
―――5月2日に名古屋で第3局が行われます。抱負をお聞かせください。
伊藤 しっかりと準備して臨めればと思います。
―――10手目に△3三角と上がられて、△3三同金という形を指されました。藤井叡王にとっては初めてと思いますが、その意図をお聞かせいただけたらと思います。
藤井 予定の作戦でしたが、かなり早く想定から外れてしまったので、認識不足だったのかなという気もしています。
―――後手番が課題といわれていましたが、試行錯誤の部分もあるのでしょうか。
藤井 △3三金の形はやったことがなかったので、やってみたらどうかとは思っていました。
―――終局直後ですが、ご自身の中で手ごたえはいかがでしたか。
藤井 昼食休憩明けに▲7七桂と跳ねられた局面がすでに自信のないような気がしました。もう少し工夫が必要だった気がします。
―――午後の戦いは、ご自身ではあまり手ごたえのない展開になってしまったのでしょうか。
藤井 △3三金型の薄さが出る展開なってしまったので、失敗しているかなと思いました。
―――60手目に残り少ない時間で△6六飛と飛車を切りました。そのあたりの成算はどのように感じていましたか。
藤井 本譜は▲2四歩の突き捨てがぴったりのタイミングではっきり負けにしてしまったかと思います。基本的に苦しいと思っていましたが、違う勝負手を掘り下げるべきだったかもしれません。
―――タイトル戦の連勝が16で止まりました。ご自身ではどのように感じていますか。
藤井 仕方ないかなと思っています。
―――今後の抱負についてお願いします。
藤井 今後も名人戦含めて対局が続くことになるので、いいコンディションで対局に臨めるようにしたいと思います。