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2012年10月27日 (土)

終盤戦

_9115時、局面は終盤戦。伊藤四段はすでに1分将棋の秒読みに入っている。控え室では図で△5五桂が予想されていたが、伊藤四段は△9四香と角を攻めた。以下▲5三成桂△3一玉▲9四竜!△2二玉! 詰めろで香を取られてしまった伊藤四段、△2二玉と鬼の辛抱。永瀬五段はどうやって決めにいくのだろうか?
_95これに△9四同歩は▲4二金で、(1)△同金は▲同成桂△同玉▲5一角以下、(2)△2二玉は▲3二金△同玉▲4一角成以下詰み。角の利きを通すのが急所だ。
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大駒に守られた先手玉

_81二人の持ち時間が残り少なくなり、局面も佳境を迎えている。形勢は駒得の先手がよさそうだ。竜と角が攻防に利く位置で、駒の効率がいい。永瀬五段は大駒の強さを引き出している。劣勢と見られる伊藤四段だが、図から△8五歩と「焦点の歩」で切り返した。まだ勝負の行方はわからない。
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(村田智六段と里見女流四冠の大盤解説)

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(14時45分頃の控え室。船江五段と稲葉六段が関係者向けに解説をしている)

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先手よしの評判

_64伊藤四段が飛車を切って猛攻を開始した。△4九銀(図)は馬を作る狙いだ。飛車が取られそうで厳しい攻めに見えるが、船江五段は「この攻めはうまくいかなさそう」と話す。プロ的には後手が無理をしている、という見解のようだ。ここから▲6八飛△5七角成▲6七銀が一例で、最後の銀引きが駒取りを避けつつ△5八銀成を受けている。控え室では後手が攻めきるのは難しいという見解だが、伊藤四段はどう攻めをつなげるのだろうか?
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(解説中の稲葉六段と長谷川女流二段。会話が途切れ、「話がうまい方に助けていただきます」と稲葉六段が舞台袖を見る)

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(井上九段と神吉宏充七段が登場。軽妙なトークに笑いが止まらない)

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攻め駒を責める永瀬流

_59対局開始から1時間、戦型はいつの間にか相居飛車に落ち着いている。もともとダイレクト向かい飛車はこうした変化を含んでいるとはいえ、振り飛車党同士だけに驚きがある。永瀬五段は▲7六金(図)と守り駒を押し上げて前進。攻め駒を圧迫して積極的に指し進めるさまはいかにも永瀬流だ。
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(加古川青流戦のポスター。解説会場でも配布されている)

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豪華な顔ぶれ

控え室にはたくさんの棋士が姿を見せている。井上慶太九段、東和男七段、村田智弘六段、稲葉陽六段、菅井竜也五段、里見香奈女流四冠、長谷川優貴女流二段、香川愛生女流1級。そうそうたる顔ぶれだ。控え室には大盤解説の様子もモニタに映っているので、それを見て話が弾んでいる。

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(解説会場では菅井五段と香川女流1級が担当中)

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「トラウマです」

4階では大盤解説会が始まった。トップバッターは船江恒平五段と村田智穂女流二段。船江五段は加古川出身、第1期の覇者でもある。

船江 三段リーグに行ったとき、一番強いと思ったのが伊藤さんです。永瀬さんとの対局では忘れられない将棋がありまして。よく覚えてるんですよ。投了図は自分はガチガチの穴熊なんですけど、敵陣に竜が2枚あって、こっちはこれ(穴熊)以外全部永瀬さんの駒で。
村田 トラウマになるような。
船江 トラウマですよもう。

自分が出演しているBAN-BANネットワークスのセールストークも巧みに織り交ぜるなど、流れるような話で会場を沸かせていた。

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戦型はダイレクト向かい飛車

_11▲7六歩△3四歩▲2六歩の出だしで始まった本局。両者とも振り飛車党ゆえにまずは戦型が注目されたが、永瀬五段が居飛車を志向して対抗形を目指す格好になった。伊藤四段の作戦は角交換から△2二飛とダイレクトに2筋へまわる向かい飛車。これが成立するなら△4二飛の途中下車をせずにすむため、後手が得をする。▲6五角(図)は「それは許せない」ととがめる最強の手だ。これには△7四角と打ち返すのが定跡で、以下(1)▲4三角成△4二金と(2)▲7四同角△同歩▲7五歩という2つの大きな変化がある。永瀬五段が選んだのは後者。ところがそこから1歩損して角を敵陣に打ち込む大胆な順で仕掛けていった。
_27珍しい指し方だが、プロの間では知られている順だという。稲葉陽六段は「先手の指し方は『ちょっと無理』という認識だと思います」と話した。永瀬五段の研究が出るのだろうか?
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(13時過ぎの控え室)

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対局開始

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振り駒まで

先に入室したのは永瀬五段。続いて伊藤四段が入室し、一礼ののち駒を並べていく。振り駒は加古川市の樽本庄一市長が行った。1回目は1枚が立って振り直し。2回目の結果も……なんと振り直し。「珍しいですよ、これは」と淡路九段。3回目は歩が3枚出て、永瀬五段の先手に決まった。

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揮毫

検分が終わり、両対局者は隣の部屋で揮毫を始めた。写真にある色紙は、前夜祭でのプレゼントになるそうだ。伊藤四段は連盟書道部に通っていることもあり、手慣れた様子ですらすらと書き上げていく。永瀬五段の揮毫は文字通り根性が入っていそうな筆致だ。

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(揮毫の間に駒を撮影した。静山作、菱湖書。御蔵島黄楊赤柾に薄斑入り)

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