受ける後手、攻める先手
永瀬五段は長考の末に△3三桂(図)と跳ねた。王手のラインを消した手だが、この瞬間は先手に手を渡すので、好き放題を許すことになる。「やってこい」という手で、長考はこれで大丈夫と読むための時間だったようだ。「二人ともらしさが出てますよね」と、大盤解説の久保九段。「伊藤さんはさばく棋風なんですね。私もさばく棋風なんですけど、森下さん(卓九段)と将棋を指したときに、歩をたくさん突いたら全部同歩と取られて負けたことがありました。ああ、こんな指し方もあるんだなと勉強になりましたね」と話して笑いを誘っていた。そのさばく棋風の伊藤四段、図から▲6五桂と跳ねて果敢に後手陣に迫っていった。△7七角の反撃が見えるだけに決断の一手だ。
(加古川観光大使も務める久保九段)
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