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2012年5月

2012年5月 1日 (火)

感想戦

A級棋士を破り、「加藤一二三健在」をアピール。準決勝では、森内俊之名人-佐藤康光王将戦の勝者と戦う。

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終局直後

終局直後、加藤九段が席を立つ。一人残された高橋九段は厳しい表情。加藤九段が戻ってくると、一礼して静かに対局室を後にした。一人になった加藤九段は「ちょっとだけ、じゃあ、やりましょうか」と、盤側に声をかける。ほどなく立会人の高田六段がやってきて、「並べましょうか」と申し出る。「はい、じゃあ、ちょっとお願い」と加藤九段。高田六段が向かいに座り、感想戦の相手を務めることになった。

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加藤九段が熱戦制す

Tatsujin201205010101151

151手まで加藤九段が熱戦を制した。終局は17時41分、消費時間は▲加藤2時間58分、△高橋2時間36分。
△6四同歩は▲同竜で▲3二歩成で受けがない。両王手を受けるには△5一玉だが、▲3二歩成△4二金引なら▲同と以下の即詰み。▲3二歩成に△4二銀は▲4一と以下の即詰み。

迫力満点の攻め、先手盛り返す

1_127後手がリードを奪ったかに見えたが、加藤九段の怒涛の反撃が始まった。▲2五桂(図)がその第一弾で、玉頭の金に狙いをつけて厳しい。△4三金寄とよろけたが、続く▲3三飛が重戦車の主砲の如く強烈な打ち込みだ。以下△3二銀打▲3五飛成(下図)と進んだ。飛車を成り返った手が6筋の銀に当たっている。

1_1313筋をよく見ると、下段に今か今かと待ち構えていた香の姿が。次の▲2四桂が竜、馬、香をいっぺんに働かせて詰めろになり、これがおそろしく厳しい。後手はこの狙いが見えているにもかかわらず、受けが難しい。たとえば歩を補充する△5六銀は、▲2四桂ならそこで△3四歩と遮断できるが、バッサリ▲3二竜と切られるとそのまま寄せられてしまいそうだ。下段玉、歩切れといった条件が受けにくさに拍車をかけている。

最強の駒を攻めよ

1_11016時50分頃、局面が慌ただしく動き始めた。高橋九段は竜を中段に展開し、△6五銀(図)と中央一帯を制圧。盤上で最も働いている駒を攻めよ、は中終盤で間違いの少ない指針だ。ここから▲7七馬△7六歩▲9九馬△7七銀と進み、後手は前へ前へぐいぐいと押し込んでいく。馬の力が消えると、先手は急に心細くなった感がある。形勢は後手に傾いてきたようだ。

第2ラウンド

1_91加藤九段は▲3九香(図)と防壁を築き、後手の竜をシャットアウトした。互いの玉に寄り筋がなくなり、ここから再度作戦を練り直すことになりそうだ。第2ラウンドの開始である。駒割は後手の銀香得だが、歩切れであること、8筋の飛車が働いていないため、形勢は難しい。この局面で、加藤九段は持ち時間が残り6分。対する高橋九段は58分残していて、時間では後手有利だろうか。しかし加藤九段は「1分将棋の神様」の異名を持つ、早見え早指しで鳴らす棋士。今後の展開がどうなるのか、まだまだ予想がつかない。

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二枚角vs二枚飛車

1_81図は加藤九段が本日2回目の▲7三角を放った局面。5一の金と9一の香を狙う角打ちだ。先手は意外に懐が広く、角1枚なら渡してもすぐに寄ることはない。駒得しているのは後手だが、すぐ先手玉を寄せる筋がないのであればまだまだ大変だ。実戦はここから△4二金上▲5一角成△4一香▲7三馬引△6四桂と進んだ。熱のこもった押し引きが続いている。

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(空を覆っていた雲は薄くなり、晴れ間がのぞいてきた)

駒得を主張

1_73図は16時頃の局面。加藤九段が桂を打ち、次に▲4四桂~▲5一角成の攻めを見たところだ。これに攻め合うなら△3五桂▲4四桂△4二金寄が一例で、後手は先手玉を引っ張りだしたとき上部で押さえられるかが勝負になる。実戦、高橋九段の選択は△5二桂。狙いの▲4四桂を消し、息長く指そうということだ。後手は△9九竜、△1九竜で香を取る手があり、長引けば駒得が生きてくると考えているのだろう。△5二桂の局面は四枚の桂が自陣に据えられる珍形になった。今後は、後手が駒台の香を生かしてどれだけうまく手が作れるかで形勢が決まってきそうだ。決め手が出せなれば、長期戦になる可能性もある。

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飛車がものを言う将棋

1_59高橋九段は交換から手にした桂を使い、飛車を奪うことに成功した。先手の飛車が角と刺し違えるまで、どんどん指し手が進んでいく。飛車を手にするために打った△6四桂が働くかが焦点か、と思われていたが、次の△8九飛が思いのほか受けにくい。加藤九段はそれを受けるため、7七の銀を▲8八銀(図)と引いた。それまで動けなかった桂が△7六桂と動けるようになるので、苦しい選択だっただろう。逆に言えば、高橋九段はここまでの展開を見通して△6四桂を決断していたと言える。図ですぐ△7六桂なら▲7七銀△8九飛▲7九歩の底歩でひとがんばり、これが先手の狙いだ。実戦、高橋九段はじっと△7五歩。以下▲同歩△7六桂▲7七銀△8九飛(下図)と進んだ。

1_64取れる歩を取らずに歩をぶつけたのが、彼我の距離を的確にとらえた手だ。ここで手を渡しても、角角桂の持ち駒しかない先手には、後手陣に対する有効な攻めがないと見ている。飛車がものを言う将棋になっているのだ。△8九飛は次の△2九飛成~△5五桂を見て厳しい。受けも難しい局面だ。加藤九段、正念場を迎えている。

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雨上がる

午後になって雨が上がる。雲の上からぼんやりと日も差してくる。木々の葉がうるうると輝いていた。

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