17時10分、図の直前に△8七歩を指して席を離れていた加藤九段。戻ってくると、先手が着手したものと勘違いして△5七馬を着手。二手指しの反則で終局となり、先手の勝ちとなりました。
この結果、森内俊之名人が決勝進出を決めています。
公式記録は98手にて終局。
消費時間は▲森内2時間42分、△加藤2時間50分。
森内名人は▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲1三歩と香を釣り上げてから▲3四歩と突きだしました。3三の桂取りと▲1三角成△同玉▲1四飛の両狙い。16時頃、図から加藤九段は△3四同銀と応じています。
△3四同銀以下▲1三角成△同玉▲1四飛△2二玉▲1二飛成△3一玉▲1一竜△2一桂▲2二歩(次図)と進んでいます。
本日の対局立会人を務める日浦市郎八段に見解を聞きました。
「先手が良さそうに見えます。後手は(69手目)▲1二歩とたたかれたときに△6六歩を利かせる手があったかもしれません。そのタイミングなら▲7七金と寄る一手で、金を寄らせておけばどこかで△5七馬と王手に引く味も出てきます。本譜は馬の活用が難しく、後手が苦しい印象です」
15時15分頃、森内名人が▲1八飛と回って端攻めを狙ったところで、加藤九段は△6五歩(56手目)と開戦しました。以下▲同歩△3五歩と進んで図の局面。
△3五歩は先手の角筋を止めた意味です。この手を省いて例えば△6五同桂▲6六銀△6四歩と進めるのは、▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲1三歩(参考図)が猛烈に厳しく後手敗勢におちいります。
先手の端攻めと、後手の6筋攻めの対抗。局面は一気に激しさを増しています。
14時20分過ぎ、先手は銀を引きました。△6五歩の筋を緩和し、場合によっては銀を2筋方面の攻めに使う構想も含みにしているようです。手損を気にしない森内名人の柔軟な一手。
後手は△6五歩と仕掛けるタイミングを計っていますが、△6五歩には▲7五歩(参考図)が手筋の反撃。△同角は▲7三角成、△同歩は▲7四歩があるためこの歩はとれません。以下△6三金のような展開が予想されますが、それで攻めが続くかどうか。先手にあまり駒を渡すと▲2四歩の反撃が厳しいという問題もあります。
あるいは△6五歩に▲同歩△同桂▲6六銀△6四歩(参考2図)と形を決めてしまい、続いて▲3七桂~▲2五桂~▲1四歩と端攻めを目指す構想も考えられるようです。