2016年5月22日 (日)

感想戦のあと、別会場で共同記者会見が行われました。

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(写真左から)
・立会人の福崎文吾九段
・PONANZA開発者の下山晃さん
・PONANZA開発者の山本一成さん
・山崎隆之叡王
・日本将棋連盟会長の谷川浩司九段
・株式会社ドワンゴ代表取締役会長の川上量生さん

── 勝利したPONANZA開発者の山本さん、下山さんに現在のご感想をうかがってみようと思います。

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山本 勝ててすごいうれしいですね。いろいろと話を聞きますと、PONANZAの研究を結構されていたみたいなんですけど、直前で回避されたということを聞いてホッとしました。もう少し山崎さんが……何ていうんですかね、邪悪に来たら危なかったんじゃないかと思っています。

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下山 本局もPONANZAが力を発揮できて安心というか、よかったなと思います。途中でPONANZAに怪しい指し手があったようなので、そのあたりは今後の課題のひとつかなと思っています。

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── 山崎叡王、本局を振り返っていかがでしたか。

山崎 強いというのは知っていて。序盤からペースを握られて、辛抱して、ギリギリかなと思っていた局面で、自陣を整備するような落ち着いた指し回しをされたとき、「強い人は戦っている途中で自玉に手を入れるんだ」という先輩の教えを思い出して。まさか電王PONANZAとの対局でそれを思い出すとは、新鮮な気持ちでした。

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── 福崎九段、本局の総括をお願いします。

福崎 皆さまお疲れ様でした。両陣営とも礼儀正しく、フェアに戦っていただけたことを大変うれしく思っております。2日間という長い戦いで正座を崩すこともなく、真摯に戦っていただけた、そしてその戦いをこの目でしかと見届けることができました。無事に終わってよかったと思っています。ありがとうございました。

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── 谷川会長、本局をご覧になってのご感想をお願いします。

谷川 PONANZAは常に積極的でありまして。それに対して、1日目の段階で山崎叡王がもっと突っ張って戦えば、というのも見ていたんですけれども、局面を落ち着かせる順を選んだために作戦的に少し損をして、その差が縮まらずに進んでしまったのかなという印象を持ちました。

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── 第1期電王戦全体を通していかがでしたか。

山本 電王戦FINALで終わりかと思いきや、もう1回あるということで盛り上がりました。電王戦トーナメントでコンピューター同士の対局も楽しく戦えたんですけれども、プロ棋士同士の叡王戦ですね、普段は生で見られないようなプロ棋士の方々も見られて、結構……いや結構じゃないですね、だいぶ面白かったです。

山崎 叡王戦に参加したときは、まさか優勝して、電王戦まで出させていただけるとは思っていなかったです。なので逆に、伸び伸びと指せました。対戦相手がPONANZAに決まって、強いということは知っていたんですけれども、ソフトをお貸しいただいて対戦する中で、ここは人間がハッキリと勝っているだろうと思っていた部分がですね、だんだんなくなっていることを実感しました。本当に厳しい戦いになるだろうなと。最高の環境で戦わせていただけるので、人間の勝っている部分をですね、勝負にこだわって見せなければいけないという気持ちと、自分の選んだ手というか、納得できる勝負をしたいという気持ちとの間で揺れ動きました。私利私欲のない最善の手を指そうとしてくるPONANZAとの真剣勝負ができたということは、非常によい経験をさせていただきました。人間が勝っている部分を見せなければいけなかったかな、ということも思っていますが、そこは実力不足でした。

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谷川 まず始めに、第1期電王戦を主催していただいたドワンゴさま、ご協賛をいただきました各社さま、また素晴らしい対局場を提供していただきました中尊寺さま、延暦寺さまに改めまして厚く御礼を申し上げます。先ほど山本さんの話にもありましたが、叡王戦を通じてプロ棋士同士の対局も面白いんだ、ということを認識していただけたのではないかと思っております。電王戦ですけれども、いちばん驚いたのは第1局の将棋ですね。PONANZAが▲6五桂とタダで捨ててきた手に驚愕しましてですね、あの負け方をしたことで第2局も山崎叡王にとって厳しい戦いになることは、私も覚悟しておりました。今回に関してはプロ棋士側が完敗を認めざるをえないと思っております。

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川上 今年は囲碁の世界でもコンピューターの話題がありました。コンピューター対人間の関係、それが争いなのか、協力する関係にあるのか、というテーマが社会的にも注目を浴びた中での開催となったことは、不思議な縁を感じております。その第1期電王戦を中尊寺さま、延暦寺さまという世界遺産の素晴らしい会場で開催できました。人間とコンピューターは、長い歴史の中ではコンピューターのほうが優位であるということをおっしゃる方はたくさんいらっしゃいまして、その中で電王戦を開催したわけですが、コンピューターが優位にあるという現実はですね、だんだんとハッキリしてきたのではないかなと思います。人間がどのように戦っていけるのか、ということを示していけたのではないのかなと思っております。


(書き起こし:虹記者/写真:夏芽)

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(終局直後の様子)

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◆PONANZA開発者・山本一成さんへのインタビュー

── 序盤はいかがだったでしょうか。
山本 不安だったんですけど、何とか互角程度に収まって。36手目△5四歩が突けたので、簡単には押さえ込まれないだろうと、そのあたりは安心して見ていました。

── 2日目の進行については。
山本 69手目▲1三歩△同玉のあたりはかなり不安でした。▲6五歩と打たずに▲1五香と走られると玉が出てしまうので。人間が間違えやすい局面ですが、その点はコンピューターも同じです。本譜は玉がバックできたので、よかったかなという感じでした。

── 山崎叡王を相手に2連勝という結果でした。
山本 非常に光栄です。

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◆山崎隆之叡王へのインタビュー

── 序盤は想定どおりでしたか。
山崎 相掛かり系の将棋にしようとは思っていましたが、想定どおりではなかったです。プロなのでもう少し、工夫というか、先手番なので攻撃的に動くべきだったかなと後悔していて、守勢になったので失敗したかなと。ただそれは自分がやってしまったことなので、一気に持っていかれないように辛抱するしかないとは思っていました。

── 1日目の封じ手で長考しました。
山崎 37手目▲2四歩で▲5四同歩と取ったり、そのあとの49手目▲5五歩と打つところとか、読み筋で少し負けてしまうと脇道にすぐ入ってしまう癖が出てしまって。対人戦のとき、相手の読み筋にないような手を指してしまうのですが、普段のそういうもの、積み重ねが出てしまいました。素直に指しておけばよかったなと後悔しながらも、自分がやってしまったミスなので、いちばん耐えられそうな順で辛抱するしかないなと。

── 2日目もだいぶ時間を使っていました。
山崎 気にはなっていましたが、スキを見せてはダメですし、間違えてしまうと時間を使うところがなくなってしまうので、しょうがないかなとは思います。

── ハッキリと悪くなったところは。
山崎 82手目△7九角▲7七銀△5六歩のところで▲同銀△5七金の変化だと、後手の攻めが重たいので、どう攻めてくるのかと。意外とギリギリなんじゃないかと最初は思っていました。ただ読んでいくと、あとで反撃すると丁寧に受けられてダメということで。その細い攻めがあって、長い戦いに持ち込めないのなら、71手目▲6五歩に代えて▲1五香で勝負するしかなかったのかもしれません。

── 2連敗という結果については。
山崎 今回は先手なので、主導権を握る戦いというのは、できる人にはできたと思います。そこは人としての責務だと思いつつ、普段の弱点を露呈してしまったなと。言い訳のできないところです。そのあとは頑張ったのですけど、自分の実力のいちばん足りないところが勝負どころで出ました。的確にとがめられて、完敗だったと思います。

(書き起こし:虹記者/写真:夏芽)

第1期電王戦二番勝負第2局は、17時15分、118手でPONANZAが勝ちました。消費時間は▲山崎叡王7時間48分、△PONANZA5時間3分。

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この結果、第1期電王戦はPONANZAの2連勝となりました。

(夏芽)