◆PONANZA開発者・山本一成さんへのインタビュー
── 序盤はいかがだったでしょうか。
山本 不安だったんですけど、何とか互角程度に収まって。36手目△5四歩が突けたので、簡単には押さえ込まれないだろうと、そのあたりは安心して見ていました。
── 2日目の進行については。
山本 69手目▲1三歩△同玉のあたりはかなり不安でした。▲6五歩と打たずに▲1五香と走られると玉が出てしまうので。人間が間違えやすい局面ですが、その点はコンピューターも同じです。本譜は玉がバックできたので、よかったかなという感じでした。
── 山崎叡王を相手に2連勝という結果でした。
山本 非常に光栄です。
── 序盤は想定どおりでしたか。
山崎 相掛かり系の将棋にしようとは思っていましたが、想定どおりではなかったです。プロなのでもう少し、工夫というか、先手番なので攻撃的に動くべきだったかなと後悔していて、守勢になったので失敗したかなと。ただそれは自分がやってしまったことなので、一気に持っていかれないように辛抱するしかないとは思っていました。
── 1日目の封じ手で長考しました。
山崎 37手目▲2四歩で▲5四同歩と取ったり、そのあとの49手目▲5五歩と打つところとか、読み筋で少し負けてしまうと脇道にすぐ入ってしまう癖が出てしまって。対人戦のとき、相手の読み筋にないような手を指してしまうのですが、普段のそういうもの、積み重ねが出てしまいました。素直に指しておけばよかったなと後悔しながらも、自分がやってしまったミスなので、いちばん耐えられそうな順で辛抱するしかないなと。
── 2日目もだいぶ時間を使っていました。
山崎 気にはなっていましたが、スキを見せてはダメですし、間違えてしまうと時間を使うところがなくなってしまうので、しょうがないかなとは思います。
── ハッキリと悪くなったところは。
山崎 82手目△7九角▲7七銀△5六歩のところで▲同銀△5七金の変化だと、後手の攻めが重たいので、どう攻めてくるのかと。意外とギリギリなんじゃないかと最初は思っていました。ただ読んでいくと、あとで反撃すると丁寧に受けられてダメということで。その細い攻めがあって、長い戦いに持ち込めないのなら、71手目▲6五歩に代えて▲1五香で勝負するしかなかったのかもしれません。
── 2連敗という結果については。
山崎 今回は先手なので、主導権を握る戦いというのは、できる人にはできたと思います。そこは人としての責務だと思いつつ、普段の弱点を露呈してしまったなと。言い訳のできないところです。そのあとは頑張ったのですけど、自分の実力のいちばん足りないところが勝負どころで出ました。的確にとがめられて、完敗だったと思います。
(書き起こし:虹記者/写真:夏芽)