第42期決勝三番勝負第3局 Feed

2011年10月24日 (月)

「検討が当たりだしたぞ」

20111024_5014時15分頃、控室では長岡裕也五段が加わって検討が行われている。実戦が左図から▲4五歩△6二飛▲5八銀と進むと、「ほら、検討が当たりだしたぞ」と藤井九段がにやっと笑う。「三浦先生が来てから検討が当たりだした」と、実に楽しそうだ。「いや、三浦先生あんまり意見言ってないですよね」。長岡五段から冷静な指摘が入った。


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(長岡五段)

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新人王3人

13時50分頃、村山慈明五段が控室を訪れた。村山五段は第38期の新人王。続いて三浦弘行八段の姿も。三浦八段は西村門下で藤井九段の弟弟子、そして第29期の新人王。この二人で第27期から第30期まで、「藤井・藤井・三浦・藤井」と新人王の座を占めていたことになる。

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(村山五段)

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(藤井九段と三浦八段)

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秋晴れの千駄ヶ谷

きょうの東京は晴れ。空気も暖かく、眠気を誘いそうな過ごしやすい天気だ。

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守りの先手、攻めの後手

20111024_44図は13時35分頃の局面。佐藤天六段は7筋の位を取り、先手の囲いに圧力を加えた。6筋の歩も伸ばして、玉形の悪さを攻めでカバーする態勢を作っている。豊島六段は金銀3枚の銀冠を完成させた。非常に堅固な囲いだ。ただ3八の銀が取り残されてしまっているのが気がかり。藤井九段は3八の銀について次のように言う。「この銀はこれでいいんです。遊び駒は遊んでいてくれれば。中途半端に働かせようとすると、かえって邪魔になることもありますからね」


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(敵玉頭に位を取って攻勢を目指す佐藤天六段。玉形の悪さが不安の種)

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対局再開

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昼食休憩中の対局室

豊島六段の玉将には「清安(きよやす)書」と駒の書体が、佐藤天六段の王将には「影水(えいすい)作」と駒師の名が刻まれている。写真を見ると、漆がはがれているのがわかるだろう。これは長い間使い込まれた証。また両対局者の脇には、差し入れのお菓子が用意されている。

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後手、アクションを起こす

20111024_36_3図は11時50分頃の局面。佐藤天六段は△6四銀~△7五歩と軽快に仕掛けていった。このまま黙っていると先手陣のほうが良くなりそうなので、早めにアクションを起こすのは理にかなっている。控室では藤井九段が先手を、中川八段が後手を持って検討している。その内容の一部を紹介しよう、左図から▲6五歩△同銀▲5五角△9二飛▲7五歩△5四銀▲8八角△8二飛▲7七桂△6四歩▲8五歩△6三金▲8六飛△8三歩▲5八玉△3二玉▲4八玉△4二銀▲3九玉△4四歩▲7六銀△4三金▲6七銀△4五歩▲5八銀△4四角(参考図)。バラバラに見えた陣形がきれいにまとまっていく過程は、なにかの手品を見ているよう。


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12時10分、△7五歩の局面で昼食休憩に入った。昼食の注文は佐藤天六段が上にぎり(千寿司)、豊島六段が肉どうふ定食(みろく庵)。対局は13時から再開される。

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縦歩取りは昭和の香り?

11時30分頃、控室では藤井九段が自著に揮毫している。中川大輔八段の頼みのようだ。揮毫を終えると、二人は盤を挟んで検討を始めた。「昭和の香りがするなあ」「でも昭和の将棋は銀が8七に行かないよ」と談笑する声が聞こえてくる。

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(藤井九段)

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(中川八段)

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温故知新の縦歩取り

20111024_34_2図は11時10分頃の局面。豊島六段は飛車を2六から3六へ動かした。ヨコの動きで3四の歩を取る戦法は横歩取り。こちらはご存知のはず。タテの動きで3四の歩を取る戦法もあり、こちらは縦歩取りと呼ばれる。縦歩取りのほとんどはひねり飛車(7筋へ転回する形)へ派生するため、本局のようなタイプの縦歩取りは見目新しく感じる。しかし部分的には昔に指されていた形で、豊島六段はその古い形に光を当ててきた。現在はお互いに手探りのような形だが、豊島六段の作戦は目論見通りに運んでいるのだろうか。


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(対局開始前、目を閉じる豊島六段)

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戦型は「横歩取らず」の相掛かりに

20111024_15_2開始から横歩取り模様で進んでいたが、豊島六段は▲2六飛(図)と飛車を引き、横歩を取らなかった。戦型は分類上相掛かりになる。これまで第1局、第2局と続けて横歩取りの後手番が勝利している。本局で豊島六段が横歩を取らなかったのは、「横歩取りの後手番が優秀」と認識していることの表れだろうか。


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