カテゴリ「第28期竜王戦七番勝負第1局」の記事 Feed

2015年10月16日 (金)

20151016t106手目△8四歩の局面。ここで藤井九段は▲3二竜を予想していました。△5七銀成▲同金△同角成に▲6九金は△同金▲同飛△7八金が好手で▲9七玉△9五歩(参考2図)は詰めろ逃れの詰めろで後手勝ち筋です。そこで、参考図で▲6九飛となりますが、それだと難しいのが藤井九段の見解。
実戦は△8四歩に▲9四歩△8三玉と端歩を取り込んでから▲3二竜でした。一見先手が利かしたようですが、藤井九段はかえって先手玉が危なくなった(将来△9四香など、逆に後手から9筋を攻める筋ができた)のではないかという見解です。


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20151016_yuu1 (夕方の宇奈月温泉。山に囲まれており、低いところは日が当たらなくなった)

20151016p100手目△4八銀の局面。後手の攻めは一瞬重いです。そこで阿久津八段は控室で▲7四桂打△同歩▲同桂△9二玉▲8五桂(参考図)という順を調べています。攻防の指し方で、以下△5七銀成は▲6九飛△6七成銀▲同飛△5六角成(参考2図)に▲9三銀△同桂▲同桂成△同玉▲8五桂△8四玉▲7五銀△8五玉▲8六歩△7六玉▲7七飛(参考3図)までの詰みとなります。
実戦は△9二玉に▲9五歩でした。確実ですが、後手玉への詰み筋が少ないため、先手も怖い面があります。



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20151016_hikaesitu2 (大盤解説会から藤井九段と阿久津八段が戻ってくる。当初、▲5七香は非常手段気味といわれていたが、検討を進めると難しいことが分かってきた。「形勢不明です」と藤井九段)

20151016n▲5七香と受けた局面で糸谷竜王が長考しています。△5七同金▲同金△同角成に▲6九飛と取るのが自陣の駒を玉に近づける手になります。
次いで△5六馬で△6九角成▲同金△8九飛を狙うのは▲6七銀(参考図)が受けの好手です。参考図から△6九角成▲同金△6七馬と銀を取れば、▲7四桂打から片美濃囲いが詰んでしまいます。
糸谷竜王は51分の長考で、▲5七香に△4八銀と絡みました。確実でも時間がかかるので、受けにも自信がないと指しにくい手です。



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15時15分、糸谷竜王が△4六角と出たころ、現地では藤井九段と阿久津八段が大盤解説会を担当していました。図の△4六角は△7九角成からの詰めろをかけつつ、自陣にも利かした攻防手です。
普通は▲6八香ですが、そこで阿久津八段は△7八銀打を示しました。以下▲同金△同銀成▲同玉△5六角成▲同金△6八角成▲8八玉△7八金▲9八玉△7七馬(参考図)。こう進めて「あれれ、受けなしですね」と藤井九段。先手がたくさん駒を持っても後手玉は詰みません。
△7八銀打に▲6九金も△6七銀成▲同香△6九金(参考2図)が厳しい。6九金を取っても後手玉は詰みません。
実戦は渡辺棋王が▲5七香と受けました。「▲5七香は非常手段気味」が藤井九段と阿久津八段の見解です。

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20151016i85手目▲3一竜まで進みました。2日目の経過を藤井九段に聞きました。

「封じ手の▲9六歩は進行を見ると渡辺さんらしいですね。堅さをキープしています。△6二角はちょっと浮かばない手でしたね。
後手が決戦に出たのが意外でした。△3五歩(下図)では△2五桂と思っていましたから。ただし、現局面まで進んでみるとギリギリです。
流れは先手なのですが△8三歩と打ってみると景色が変わりますね。いないといきなり後手玉が詰んでしまう筋がありますが、これなら一瞬堅いですし、後手が攻める手番がきました。先手のはっきりした勝ちが見えません」

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20151016_fujii1 (検討する藤井九段)

20151015_unaduki32 (2001年竣工の宇奈月ダム。右下に宇奈月発電所が見える。水力発電のほか、上水道の供給や洪水調整などを担う多目的なダムだ)

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20151015_unaduki24 (宇奈月発電所)

20151015_unaduki26 (黒部川を利用した水力発電。電気は主に関西方面へ送られる)

20151015_unaduki28 (宇奈月ダムによってできた人工湖のうなづき湖。中央奥は黒部峡谷鉄道の柳橋駅)