カテゴリ「第26期竜王戦挑決第1局」の記事 Feed

2013年8月15日 (木)

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森内名人は、これまでの竜王戦で相掛かり後手番を何度か受けている。左図は第19期(2006年)決勝トーナメント、森内俊之名人(1組2位)-松尾歩六段(3組優勝当時)戦。戦型は引き飛車棒銀に対する△8五飛。五段目の飛車は横歩取りから応用されて広がった指し方だ。
郷田九段も相掛かりを指すが、竜王戦では本局のように先手番を持つのではなく、後手番で受けていることが多かった。

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七番勝負での相掛かりといえば、あの「打ち歩の第4局」も戦型は相掛かりだった。第21期の▲羽生善治名人-△渡辺明竜王戦だ(肩書きは当時)。

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後手のひねり飛車模様に対し、先手は角道を開けない構えを敷いている。玉の安定度でいえば美濃囲いの後手がずいぶんまさるようだが、飛車の活用には苦心しそうだ。持ち時間の長い竜王戦らしくじっとした駒組みが続いているが、局面は激しい変化を内包している。
たとえば左図で先手の手番だと、▲1五歩と突く手がある。△同歩▲同香△5七角成▲同角△1五香(A図)と二枚換えをされて失敗に思えるが、よく見れば後手の飛車が取られてしまう。

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これは後手失敗だ。

また、上図の▲6八角に代えて▲6六銀と上がる手も検討されていて、以下△7九角成▲同玉△4二銀(B図)が予想されていた。

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B図で後手は△4四歩~△4三銀と組み替えるのが自然だが、仮に後手の手番で△4四歩と突くと、▲9六歩の「地獄突き」が生じる。△同歩なら▲9二歩△同香▲6五角が金香両取りになる仕組み。相掛かりは序盤から歩を手持ちにするため、盤面を広く使った技がかかりやすい。角交換になった際は、駒組みに神経を使うことになる。

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左表はここ十数年の挑戦者をまとめたもの(肩書き・段位は当時のもの、赤字はその期に竜王位奪取)。圧倒的に1組の出場者が挑戦することが多いが、それ以外の組から挑戦者になるケースもある。渡辺明竜王が挑戦したときは4組優勝での決勝トーナメント出場だった。今期は1組2位の森内名人と1組4位の郷田九段の組み合わせ。どちらが三番勝負を勝っても1組からの挑戦となる。

 

Ryuou201308150101_32図の32手目△3三桂の局面で昼食休憩に入りました。消費時間は▲郷田1時間17分、△森内43分。森内名人はひねり飛車を目指しています。対して、郷田九段は変わった駒組みを見せています。▲7六歩と角道を開けるのが序盤のセオリーですから7筋の歩を突かないのは大変珍しいです。

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序盤から郷田九段が駒組みに工夫を凝らしている。6八銀型が相掛かりでは珍しい形。銀は動かさず、角道を開けたときに備えておくのがよくある指し方だ。矢倉や角換わりのようには飛車先を受ける必要がない、駒組みの自由度が高い相掛かりならではの工夫といえるだろう。同じ形は山崎隆之八段が指しており、前期の挑戦者決定三番勝負第2局で確認することができる。

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右図が前期の挑戦者決定三番勝負第2局、▲山崎隆之七段(現八段)-△丸山忠久九段戦。ここから丸山九段が△9五歩▲同歩△9六歩▲同香△9五香と仕掛け、早い戦いに。対局開始からわずか30分ほどの出来事だった。

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森内名人は第1期から竜王戦に参加。第12期(1999年)に1組優勝、第16期(2003年)に羽生善治竜王(当時)に挑戦、4勝0敗で竜王位を奪取した。第22期(2009年)にも挑戦を果たしているが、七番勝負では渡辺明竜王に敗れている。1組以上在籍は通算16期。

郷田九段は本棋戦には第4期(1990年)から参加。2期連続優勝で1組に昇級したあとは、14期連続で1組を維持している。今期は佐藤康光九段に勝ち、初めて挑戦者決定三番勝負に進出した。