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2009年9月16日 (水)

自宅解説棋士による総括

【北島忠雄六段】
とても難しい将棋でした。終わった今でも、はっきりとした敗着は、分かりません。印象に残った手は36手目の△2三金です。普通はノータイムで△2三歩と打つところなので、びっくりしましたが、△2三金以下、ほとんど時間を使わず羽生王座が▲2七同角まで進めたのにも驚きました。普通なら、ありえない手も、きちんと拾って読んでいるんですね。読みの厚みが、まるで違うと思いました。あと65手目の▲3五歩、普通は後手に△2五銀の選択肢を与えず▲1六角と出そうなものですが、終盤、時間のない時に有力な候補手を目の前に出されたら、思わず考えてしまいます。羽生王座の勝負術を感じさせる一着でした。

【片上大輔六段】
一局を通じて働きの悪い駒が多く、形勢判断の難しい将棋でした。山崎七段としては、一度も動かずに飛車を取られてしまったのが痛かったでしょうか。最後は▲7一角に△9二飛と逃げたほうが難しかったと思います。1局目は角が動かずに取られたので、第3局はまず大駒の活躍が期待されます。
途中羽生王座がじっと▲8八玉と入り、△2九飛にも(先に▲1六角でなく)▲3五歩と打ったのが印象に残りました。これ以降のやり取りで、結果的に先手は右辺の駒すべてをさばくことに成功しました。
後手は▲3五歩に△2五銀とかわしておく手、△6九銀で先に△6五桂とする手など有力な選択肢が多く、勝つ順があったと思うのですが私には分かりませんでした。羽生王座は正確にお互いの玉までの距離を見極めていたということだと思います。

【遠山雄亮四段】
山崎七段が36手目△2三金から積極的に将棋を組み立て、持ち味を存分に出してペースを掴んでいたでしょう。
羽生王座相手に自分から局面を動かしペースを握って戦っていける棋士はそう多くはいません。
そうした辺り、山崎七段としては実力を見せつけました。
ただ65手目▲3五歩が玄妙な一手だったと感じます。ここで山崎七段は随分と持ち時間を奪われてしまいました。
終盤戦は双方にチャンスのある展開でしたが、その中で持ち時間が切迫していたのは山崎七段としては非常に辛いところだったでしょう。
現地で深く検討されていたという68手目△6九銀で△6五桂という手や、最終盤83手目▲7一角に対して△9二飛▲5三角成△3三銀と粘る手など、持ち時間があれば深く追及出来たと思います。
しかし時間も勝負のうちです。逆に最後は勝ちを手繰り寄せる、羽生王座の強さ、懐の深さを改めて感じました。これで王座戦で羽生王座は15連勝となったわけですが、その理由が垣間見えた一局だったと思います。

第3局以降もこうして自宅解説を行っていきますので、ファンの皆様に楽しんで観戦いただければ幸いです。
またネット委員としましても、今後も将棋ファンの皆様に将棋を楽しんでいただけるよう、ネット中継をはじめとし、様々な事を打ち出していく所存であります。
どうぞ温かい声援とご支援のほど、よろしくお願い致します。

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