2014年1月

2014年1月31日 (金)

20140131watanabehabu76図はと金で金を取った局面。以下▲7七同金△6七歩▲8六歩△6六角成▲同金△6八銀(詰み)で渡辺王将が投了しました。あっさり終わったようですが、水面下に複雑な変化が隠れていたようです。

「▲7七同金に代えて▲7七同銀のほうが怖いです。しかし、羽生先生は△6六歩で勝ちと思われていたようで。自玉に有効な詰めろがこないという読みなんですよ。渡辺王将も観念されていて、▲7七同金から形作りをされたのでしょうね」(田中悠四段)

20140131watanabehabu1455まず、▲7七同銀に△8七飛成は▲7八角(詰めろを受けつつ、間接的に2三の地点をにらんだ攻防手)で粘られてしまいます。そこで後手は飛車を成る前に△6六歩とたたくのが手筋です。

20140131habuwatanabe1314_3
△6六歩は、(1)▲同金に△8七飛成▲7八角△7七竜と必死をかける狙い。そこから▲2二歩成とされても、△同金▲同飛成△4一玉!で後手玉は詰まないようです。

△6六歩の問題は詰めろでないこと。その瞬間が甘いので、先手にうまい詰めろをかけられたら負けです。例えば(2)▲3五桂が怖い手ですが……。

20140131watanabehabu1521「羽生三冠は7三~6四のルートで逃げられるとおっしゃっていました。予想される進行は△6七歩成▲2二歩成△4一玉▲3二と△5二玉▲4二と△6一玉▲2一飛成△7二玉です」(田中悠四段)

20140131watanabehabu1316後手は2~4筋の駒をぼろぼろ取られてしまいましたが、玉が上部に逃げだせるので詰みません。△6七歩成が利いているのはもちろんのこと、8四飛や3九角も守り駒として立派に働いてる格好です。

田中悠四段は、この順を継ぎ盤に並べてうなっていました。渡辺王将と羽生三冠の対局だったからこそ、▲7七同銀は指されなかったと言ってもいいかもしれません。

Dsc_0807 (棋譜用紙にすると十手にも満たない。だが、その背後には難解な手順が含まれていた)

2014年1月30日 (木)

Dsc_0740 (感想戦の前に大盤解説会へ)

Dsc_0742_2 (生の感想を聞ける。これぞ現地大盤解説会の醍醐味だ)

Dsc_0753_2 渡辺王将「昼のところは難しいかなと思っていたんですけど、あっという間に負けてしまったんで(苦笑)まあ、もうだめだったんで」

Dsc_0750 羽生三冠「(△3九角について聞かれると)ほかの手では自信がなかったので、仕方がないかなと」

Dsc_0724 (終局直後)

Dsc_0726 (勝った羽生三冠)

Dsc_0725 (敗れた渡辺王将)

Dsc_0730_2 (インタビューに答える羽生三冠)

--お疲れ様でした。一日目は急戦矢倉だったのですが、ある程度予定されていたのでしょうか

作戦は予定だったんですけど、▲6五歩と仕掛けてこられるとは思っていなくて。少し失敗したかなと思って指しました。

--封じ手のところはいかがですか?

ちょっと一手、手が遅れてるんじゃないかなと思いながら指していました。

--封じ手は予想通り?

えー、そうですね。歩(▲5五歩)か桂跳ばれる(▲7七桂)、どちらかかなと思ってました。

--△3九角という手が飛び出したんですが、攻め合いでいこうと?

そうですね。こっちもゆっくりできないんで。無理気味かなと思ったんですけど、勝負手のつもりで。

--昼食休憩を挟んで長考されました。

△8七歩成が入るかどうかは分岐点で、かなり大きいと思ったので慎重に読みました。

--どのあたりで優勢になったと思われましたか?

2回目の△8七歩成で、と金ができた時ですね。

--一局を振り返っていかがですか?

作戦的には問題があったと思います。そのあとはまずまず指せたかなと。

--これで1勝2敗になりました。第4局以降の意気込みは。

次の対局も張り切っていこうと思います。

Dsc_0731

Dsc_0737 (続いて、渡辺王将がインタビューに答えた)

--お疲れ様でした。一日目の進行はいかがでしたか。

2年前の将棋をなぞっていたんですが、△6二金をいかされたような……思わしい指し方もわからなかったので行ってしまったんですが、本譜の進行は玉頭にキズを抱えていたので行ったかいがなかったかなと思って指してました。

--封じ手は考えられましたが。

「とりあえずはしょうがないかな」と思いましたけどね。

--二日目は激しい戦いになりましたが、こうしておけばというものは?

▲4五銀を出た瞬間に△8五桂から攻められてしまったので、そのあたりで別の手があったかなという感じですね。

--どの辺で誤算があったことに気づかれましたか。

△3九角からの攻め合いですか。▲2四飛が角取りにならないので、△8七歩成を利かされて。(こちらに)うまい組み合わせがなかったですね。

--最後は敗戦を覚悟されて?

▲3四銀出たあたりは駄目だと思いました。

--これで2勝1敗になりました。第4局以降の意気込みを。

あいだがちょっと空くので、また準備して頑張りたいと思います。

Dsc_0738 (渡辺王将がインタビューに答える間、羽生三冠はずっとうつむいていた)

20140130b

図の局面で渡辺王将が投了を告げました。先手玉は▲8九玉△8六飛▲8八歩△同飛成▲同玉△7七金以下の詰み。終局時刻は15時49分。消費時間は▲渡辺6時間44分、△羽生6時間23分。羽生三冠が勝ってシリーズ成績を1勝2敗としました。

20140130watanabehabu75「▲2三銀成で難解」と控室は検討していましたが、▲2三歩で雰囲気が一変しました。「これは△7七とで羽生勝ちでは」と言われています。一直線の攻め合いで、先手に変化の余地がないようです。

Dsc_0715_2(大盤解説会から戻ってきた飯塚七段が検討に加わった)

Dsc_0716 (羽生三冠側から見た継ぎ盤。△7七と▲同金△6七歩で受けが難しいようだ)

Dsc_0720 (15時30分過ぎの対局室)

Dsc_0711 (霧はますます深くなっている。昨日は富士山が見えたが、今日は見えない)