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2009年6月 9日 (火)

【梅田望夫観戦記】 (4) 必見、新たなる急戦矢倉の展開

 対局室から戻ってきたら、渡辺竜王のブログが珍しく午前中に更新されているではないか。

 『……将棋のほうは9時32分現在18手目△5三銀右まで。例の急戦矢倉スタートの局面です。
 以下は補足情報。5月29日の王位リーグ▲渡辺-△羽生名人では△5三銀右に▲5七銀右と指しました。この手は前例が10ほどあって新手ではないのですが、僕が竜王戦で新手を指してからの、新たな急戦矢倉の歴史としては新研究のつもりでした。……』 (渡辺明ブログ「本日棋聖戦第1局、明日対局。」

 ちょっと控え室で休もうと思っていたところなのであるが、これを紹介しないわけにはいかない。

 今日の羽生さんは、竜王戦第七局の渡辺側を持って30手まで指していたが、木村さんが31手目で、竜王戦で先手を持っていた羽生さんが指した▲7九角ではなく▲5七銀上と指して、竜王戦第七局から別れを告げた。さっきは羽生さんが何だか嬉しそうにしていたが、ブログの向こうにあの将棋を思い出している渡辺さんの嬉しそうな顔が目に浮かぶ。二人にとってあの一局は、勝者・敗者の別などなく、「生涯の幸福な一局」の一つなのに違いない。

 棋士たちを見ていていつも思う。

 彼らは、手元に本などの読むものを持っていなくても、パソコンや携帯などを持っていなくても、自らの豊穣な記憶の中を遊びながら、いくらでも充実した時間を過ごすことができる。

 本当にうらやましい。

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