2024年4月 7日 (日)


「か茂免」がある地域「白壁」は、江戸時代に尾張徳川藩の中級武士の屋敷が集まった地域でした。明治維新以降は古屋財界人の邸宅が立ち並ぶようになり、豊田佐吉(トヨタ)など日本の製造業を支えた人々が住んでいたことでも知られています。第二次世界大戦で名古屋は何度も空襲に遭いましたが、白壁エリアは奇跡的にも戦災を免れました。現在は「文化のみち」として「町並み保存地区」に指定され、名古屋の近代化の歩みを伝えるために建築遺産の保存と活用が進められています。

Dsc_2493(周辺地図)
Dsc_2536(対局場「か茂免」の壁も白い)

Dsc_2538(白壁町筋。文字通り、白い壁の建物が多い)

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(主税町筋の「旧豊田佐助邸」。豊田佐助は、豊田佐吉の弟で佐吉を支えた実業家)

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(同じく主税町筋の堀美術館。2006年にオープンした美術館で、昭和初期にパリに留学して日本的な洋画を生み出そうと努力した藤田嗣治や梅原龍三郎、また横山大観・梅原龍三郎・加山又造・杉山寧ら日本の芸術家たちの作品を展示している)

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(看板は藤田嗣治の作品)

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(橦木町<しゅもくちょう>筋の「文化のみち橦木館」。陶磁器貿易商として活躍した井元為三郎が大正末期から昭和初期に建てた邸宅)

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(「文化のみち二葉館」。川上貞奴<日本の女優第1号>と福沢桃介<電力王>が、大正時代に居住していた和洋折衷の建物で、創建当時の姿に移築復元して2005年に開館した)

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(「カトリック主税町教会」。 1887年に設立された、名古屋で最も古いカトリック教会)

対局会場の「か茂免」は、名古屋都心にある1000坪以上の広さを誇る料亭です。創業は1928年で、1948年から現在の白壁町で営業を始めました。建物は京都の紙問屋「中井巳次郎」氏の別邸として1919年に建築され、母屋の庭は「無鄰庵」「對龍山荘」「野村碧雲荘」などを作庭した、近代日本庭園の先駆者とされる作庭家「植治」こと「七代目小川治兵衛」が作庭しました。
叡王戦は第6、8期に続いての開催です。名物はすっぽん料理で、藤井叡王と伊藤七段はともに注文しました。

Dsc_2925(か茂免の入り口)

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Dsc_2535(看板にカモメが描かれている)

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1時間11分の考慮で指された▲2二歩に対し、伊藤七段は47分考えて△2八歩とたたきました。▲同飛△8六歩▲同歩△8五歩▲2一歩成△8六歩▲7九桂△6五銀の進行です。

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2筋の桂取りに構わず継ぎ歩攻めで玉頭を狙い、先手が得した桂を自陣に受けても、銀をぶつけて攻めの継続をはかっています。▲6五同銀は△同桂で、△6六角と△6九角から△8七銀が厳しいです。

先手は銀交換に応じず、▲5五銀とかわすのが最善のようです。△7六銀で玉頭がかなり怖いものの、▲6四歩で大きな拠点ができます。以下△5三金に▲7七歩と受ければ、後手も駒を渡すと反動がきついので攻めにくいです。

Dsc_2967(対局再開前の伊藤七段。積極的に藤井玉に襲いかかっている)

15時、午後のおやつが出されました。
藤井叡王は「ペコちゃんのほっぺ(ミルキークリーム)」。ハチミツ入りのふわふわスポンジに、練乳を使ったミルキークリームをたっぷり詰めました。飲み物は「アップルジュース」。
伊藤七段は「プレミアム濃い抹茶のケーキ(鹿児島県産一番茶抹茶使用)」。午前中に藤井叡王も頼んだケーキです。飲み物は「アイスティー」。

20240407pmoyatu_1(藤井叡王のおやつ)

20240407pmoyatu_2(伊藤七段のおやつ)

14時より、現地大盤解説会(事前申し込み制)が「名古屋観光ホテル」で開始されました。開始時点で約300人が着席していたそうです。澤田七段の軽妙なトークに、冒頭から笑い声が止まりませんでした。

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Dsc_3030(解説の澤田七段)

Dsc_3038(聞き手の中澤女流二段)

2024040771藤井叡王は約1時間10分考えて、▲2二歩と攻めました。伊藤七段の誘いのスキに、慎重に読みを入れた踏み込んだ格好です。△3三桂なら▲2一歩成△2八歩▲同飛△3九角▲3八飛△4八角成▲同飛△2一飛▲2四歩でどうか。△同飛は▲2五歩△同桂▲2八飛と切り返します。

Dsc_2970(伊藤七段は再開の15分ほど前に戻って考えていた)

Dsc_2977(藤井叡王は再開直前に入室した)

Dsc_2990(再開後の一手は△5四銀)

Dsc_3004(藤井叡王の眼光が鋭くなる)

Dsc_3015(対局室は冷房がつけられて、やや寒かった)

両対局者が昼食に頼んだのは、「名物ぽんきし膳―きしめんすっぽんスープ仕立て―」。名古屋の名物「きしめん」と、「か茂免」の「スッポン料理」を一度に味わえる逸品です。スッポンは上品な味わいとコラーゲンが特徴で、「ぽんきし」には湯葉と壬生菜(みぶな)、九条ネギが乗っています。ほかに「近大マグロの太巻き」、「もち豚の柔らか角煮」もついています。

20240407chuushoku_2(藤井叡王の昼食)

20240407chuushoku_1(伊藤七段の昼食)

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20240407chuushoku_4(水菓子はフルーツ盛り合わせ、わらび餅)