第3期七番勝負第4局 Feed

2018年5月27日 (日)

高見叡王の会見をふたりの棋士が見守っていました。
以上で第3期叡王戦の中継を終わります。ご観戦ありがとうございました。
ニコ生のタイムシフト放送(こちら)もお楽しみください。

Dsc_3504 (師弟で握手)

Dsc_3534 (阿部光瑠六段は終局後に現地控室を訪れていた)

叡王獲得の記者会見が行われ、高見叡王と森内専務理事が出席しました。

Dsc_3421 (会見に臨む高見叡王)

――七番勝負を終えていまの気持ち

高見 七番勝負は挑戦者の気持ちで挑みました。気持ちを強くもって毎日練習し、ほかの棋戦も当然ながら全力で戦いつつ、七番勝負の作戦を考えていました。金井先生が強い内容で勝ち上がってきて、私も気を引き締めて臨みましたが、将棋の内容、展開ともに、中盤までに金井先生の強さを見せつけられた、そんな七番勝負でした。ただ、応援してくれている人のことを考えると、どんな将棋でも諦めるわけにはいかず……。今日も苦しいかなと弱気になる時間帯があったのですが、ここで(タイトル獲得を)決めるつもりだったので、粘りに粘りました。4局とも接戦でした。今後も精進していきたいと思います。

――タイトル獲得の喜びをまず誰に伝えたいですか

高見 それは決めていて、師匠なんですけど、終わってから連絡するつもりでした。でも、先ほど、記者の方々に交じって師匠がいることに気づいて、ぐっとくるものがありました。来てくださっているとは思わなくて。師匠にはいろいろ心配をかけてきましたが、ひとつ恩返しができたと思います。ここまで育てていただいて、ありがとうございます。

――最終盤は高見叡王の手が震えているようにも見えました

高見 (タイトル戦出場が決まってから今日までの)4ヵ月間はきつくて、読み抜けさえなければ勝ちの局面がいざ出たとき、思わず震えてしまったかもしれません。

――ファンの皆さまにひと言お願いします

高見 ご視聴ありがとうございました。叡王戦がタイトル戦になると決まったときは、ここまでこれるとは誰も想像していなかったと思うんですけど、やはり自分は棋士ですので、いちばん上を目指していました。段位別予選を抜けたときから、全力で燃え尽きたいと思った棋戦でした。
七番勝負のプロモーションビデオ(こちら)で、「この戦いで将棋界の勢力図が変わる」というフレーズがあります。いま20代の世代がもっと活躍することで、将棋界も盛り上がっていくと思いますし、同世代には自分も負けないように頑張らなくてはと……。すみません、自分の話ばかりしてしまいました。
タイトルはとても重いもので、これからもイバラの道を進んでいくのですが、もっと活躍する予定なので、皆さん応援していただけるとうれしいです。ありがとうございました。

――ご自身初めてのタイトル、石田九段門下として初のタイトルです

高見 師匠からはプレッシャーにならないように温かく見守っていただきました。兄弟弟子に「頑張れよ」とは、同じ棋士なので特に言われなかったですが、同門が活躍するのは嫌ではないはずです。石田門下として、師匠のために頑張っていきたいという思いが増しました。

――板谷一門としても悲願の初タイトルについて

高見 板谷一門として、初めてタイトル獲れたことはとてもうれしいですし、喜んでくださる方がいらっしゃるのはありがたいです。師匠に言われて印象に残っているのが、「石田一門、さらに板谷一門としてタイトル戦。出るからには獲れよ」と応援されたのは覚えていて、それを胸にしまって、ずっとタイトル戦が終わるまで持ち続けてきました。板谷一門は、私以外にもタイトル戦に出てくると思います。

――次の目標を教えてください

高見 1年前、私がタイトルを獲るというのは誰も想像していなかったと思います。1年後の自分がどうなっているかはわからないですが、この一年の自分のご褒美で大きな大きなタイトルを獲れました。二冠、三冠を狙っていきたいと思います。笑っちゃうような人もいるんでしょうけど、自分は本気で狙えばいけると思いますので、口だけと言われないように盤上で結果を出すだけだと思います。頑張っていきます。


――持ち時間の変動制について

高見 1時間を5、6局目にしたのは、私は長時間よりも早指しのほうが実力を発揮しやすいからです。第4局までに1勝でもすれば、1勝3敗でも第5局を迎えることができます。巻き返すチャンスがあり、4勝3敗でもタイトルを獲れる可能性があると思いました。(本局の)3時間は本戦と同じですが、対局開始は14時と15時で違うので、夕食休憩まで4時間あります。私は残り1時間20分、金井六段が40分なら理想的な持ち時間配分だと思いました。1時間のときの戦い方は、そのときに考える予定でした。
持ち時間の配分に加えて、局面の均衡を保つのが理想的でしたが、中盤で金井六段にリードされてしまうことが多かったので、この戦い方がよかったかは分かりません。来期までまだ時間があるので、また考えます。自分の実力をつけるのがいちばんです。



Dsc_3474 (森内専務理事=写真左)

――森内理事、今期の総括をお願いします

森内 本日の対局では、高見さんが苦しい場面もありまして、第5局にもつれ込むのかなと思っていた時間もありました。しかし、見事な勝負術、逆転劇でした。高見さんの勝ち上がりを振り返っても、新叡王にふさわしい戦いぶりでした。
金井さんもビッグネームを次々に倒しての七番勝負進出は素晴らしい活躍でした。七番勝負では残念ながら勝ち星を挙げることはできませんでしたが、4局とも素晴らしい戦いで、多くのファンの方の印象に残るシリーズだったと思います。この経験を次に生かして、さらなるご活躍を願っております。
将棋界は、叡王戦を加えた八大タイトルを7人で分けあう、大変な戦国時代になっております。高見叡王も先ほどお話しされていたように、二つめ、三つめのタイトルを目指してこられると思いますし、ほかの棋士も高見さんの活躍に刺激を受けて、ますます研鑽を積んで、熱い戦いを見せていただけると思っています。
おかげさまで最近、将棋の世界はメディアで取り上げていただく機会も増えました。大変ありがたいことだと思っております。さらに発展を続けていけるように、将棋連盟も一丸となって取り組んでまいります。

Dsc_3369 (感想戦終了後、金井六段はニコ生でファンにメッセージを送った)

――本局について

金井 作戦的にうまくいきませんでした。中盤は好転したかと思いましたが、終盤は精度を欠きました。

――シリーズ全体について

金井 ラスト1時間、勝負の分かれ目となるギリギリのところ、そこの選択が勝敗を分けたと思います。

――この番勝負は今後の棋士人生にどう影響するか

金井 これまで数々のタイトルの舞台に立った先輩方への尊敬の念が増しました。また、たくさんの方々のおかげで対局させていただけているということが体感できました。今後の棋士人生の財産になると思っています。

――ファンの方にメッセージをお願いします

金井 本来であれば敗者はすぐに去るものですが、今回は皆さまに感謝の言葉を述べる機会を与えていただきました。いつもご視聴ありがとうございます。叡王戦がここまで盛り上がったのは、将棋をドキドキしながら見てくださる皆さまのおかげです。何か皆さまの心に届くものが少しでもあればよかったと思っています。対局者として感謝しております。ありがとうございました。

2018年5月26日 (土)

Dsc_3244 (終局後に囲み取材があった)

――本局の中盤は苦しい展開でしたか

高見 端攻めが思ったよりもきつく、苦しめだと思っていました。

――どのあたりで勝ちが見えましたか

高見 最後のほうです。▲3二歩(141手目)から▲6三馬という手があるので、見落としがなければ。

――初タイトルを獲っていまの気持ち

高見 タイトル戦は初出場ですが、出るからには獲るつもりで、七番勝負出場が決まってから4ヵ月、毎日叡王戦のことを考えてきました。これから、もっともっと(叡王の名に恥じないように)毎日頑張らなければいけないなと思います。

――4ヵ月は長かったですか

高見 長い間、努力できたのは自分の糧になります。この叡王戦のために、本当にいろいろやってきました。

――シリーズを振り返って

高見 とても苦しい戦いでした。序中盤で(金井六段に)うまく指されてしまうことが多くて。でも、せっかく出させていただいているのですから、最後まで頑張らないといけないと思って指していました。

Dsc_3298 (インタビューに答える金井六段)

――後手優勢の評判もありました

金井 作戦がうまくいったかどうかは分からないまま、指し進めていました。好転したと思ったところもありますが、引き離す手を見つけられませんでした。

――シリーズを振り返って

金井 自分の実力は出たと思っています。

――高見将棋の印象

金井 ここぞという場面の勝負強さ、決断力。そういうギリギリのところの強さを感じました。

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Dsc_3335 (取材が終わると、すぐに感想戦が始まった)

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Dsc_3173 (終局直後)

Dsc_3178 (入室する報道陣のなかに石田九段の姿が。高見六段と目が合うと、さっと右手を上げた)

Dsc_3186 (石田九段が手を上げた後、高見六段の表情はぐしゃっと大きく崩れた。それを見られまいとするかのように、報道陣のいる側から顔をそむける)

Dsc_3199 (あらためて前を向く。今日から高見叡王。段位も六段から七段に上がった)

Dsc_3202 (金井六段のタイトル獲得はならなかった)

S144図の局面、後手玉は▲3一歩成から受けなしになりそうです。先手逆転です。△6三同飛が指された直後、高見六段は席を外しました。初タイトル獲得が近づいています。

1000 (高見六段は席を外している)

Dsc_3166 (控室の様子)

S137図の局面は、控室でもニコ生解説でも検討されていて、△5四香(△7九金の詰めろ)が非常に厳しいといわれていました。石田九段は「△5四香があるから後手が苦しい。なければ勝ちでもおかしくないんだけど」と話していたほどです。しかし、一分将棋の金井六段は△4三金打と自陣に駒を投入しました。△5四香の成否は分かりませんが、石田九段は「いい勝負になったか」と話しています。


S126図の△2三歩で金井六段は一分将棋に入りました。高見六段は残り39分。「電王ぽんぽこ」の評価値は後手に大きく振れていますが、後手の残り時間が少なく、まだはっきりとは勝ちの見えない局面でもあり、塚田九段は「(実戦的には)まだまだ大変」と話しています。