2024年4月20日 (土)

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Dsc_1817 (伊藤七段の耳は感想戦の間も紅潮していた)

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Dsc_1822 (感想戦は19時17分ごろに終了した)

以上で、本局の更新は終わりとなります。ご観戦ありがとうございました。
第3局は5月2日に名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われます。第3局もご観戦のほど、よろしくお願いいたします。

両対局者は局後インタビューのあとに大盤解説会でファンにあいさつしました。

Dsc_1649 (両対局者が大盤解説会場に出る)

Dsc_1677 (対局を振り返る伊藤七段)

Dsc_1691(59手目▲3六馬の局面について見解を述べる藤井叡王)

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伊藤真六段 ▲3六馬(59手目)の局面をどういう気持ちで見ていましたか。

伊藤 はっきり自信のない順は見えていなかったのですが、よくわからないまま指していました。

伊藤真六段 藤井叡王は▲3六馬に長考していました。難しい局面でしたか。

藤井 そうですね。後手の攻め方としては持ち駒の銀の打ち方が4七、2七、4五の3カ所あって、△6六飛と切る手、△8七歩成とする手もあります。それらの組み合わせでどれか勝負できる順があればと思っていましたが、考えてみてもそういう順が発見できなかったかなというところでした。

村田 一局を振り返っていかがでしょうか。


伊藤 本局は早い段階から前例の少ない将棋になって、午前中から激しい展開になりました。午後に入ってからは一手一手が選択肢の広い局面が続いて、非常に難しい将棋だったと思います。

藤井 こちらから動いていく将棋でしたが、伊藤七段に手厚く受け止められて、最後はきっちりカウンターを合わされてしまった一局だったと思います。

村田 次局に向けての意気込みをお願いします。

伊藤 次局は2週間ほど空くと思うのですが、しっかりコンディションを整えて臨めたらと思います。

藤井 1勝1敗という形になりましたが気を取り直して、叡王戦は2週間後になるので、その間にしっかり準備をしたいと思います。

村田 お越しくださったみなさまにメッセージをお願いします。

伊藤 なんとかタイに戻すことができたので、前向きに準備していきたいと思います。本日はありがとうございました。

藤井 形勢判断の甘い部分が出たと感じています。そのあたりを修正しつつ第3局を熱戦にできたらと思います。

Dsc_1732 (両対局者が一礼して対局室に戻ると、会場からは大きな拍手がわき起こった)

Dsc_1607 (報道陣が対局室に集まる)

Dsc_1615 (局後インタビューを受ける伊藤匠七段。タイトル戦での初勝利、13局目での対藤井叡王戦の初勝利となる大きな一勝を挙げた)

―――先手で角換わりを目指す戦いでした。序盤の構想はいかがでしたか。

伊藤 早い段階で前例の少ない形になって、一手一手を手探りで指していました。

―――△3三金型の早繰り銀にということでしょうか。

伊藤 そうですね。

―――前例がない中で、どういうことに気をつけながら指していましたか。

伊藤 ▲1五歩と端歩に2手かけましたが、激しく動いてこられる展開になって、一手一手難しい将棋だと思っていました。

―――38手目△7二歩で昼食休憩になりました。どのような形勢判断でしたか。

伊藤 難しいと思っていました。

―――休憩明けは後手の飛車を追って、途中は金桂交換になりました。

伊藤 互いに選択肢が広いと思っていて、よくわからないまま指していました。

―――形勢の好点や手ごたえはどのあたりで感じましたか。

伊藤 ▲4四歩と打ったあたりはいけそうかなと思っていましたが、最後もはっきりとした順は見えていないまま指していました。

―――勝ちが見えてきたのは本当に終わりのところですか。

伊藤 そうですね。

―――叡王戦1勝ということですが、藤井叡王との対戦でも初勝利でした。その感想についてはいかがですか。

伊藤 そうですね。勝てていなかったので、一つ結果が出たのはよかったです。番勝負は続くので引き続き頑張りたいと思います。

―――5月2日に名古屋で第3局が行われます。抱負をお聞かせください。

伊藤 しっかりと準備して臨めればと思います。

Dsc_1603 (敗れた藤井叡王。タイトル戦の連勝は16でストップ)

―――10手目に△3三角と上がられて、△3三同金という形を指されました。藤井叡王にとっては初めてと思いますが、その意図をお聞かせいただけたらと思います。

藤井 予定の作戦でしたが、かなり早く想定から外れてしまったので、認識不足だったのかなという気もしています。

―――後手番が課題といわれていましたが、試行錯誤の部分もあるのでしょうか。

藤井 △3三金の形はやったことがなかったので、やってみたらどうかとは思っていました。

―――終局直後ですが、ご自身の中で手ごたえはいかがでしたか。

藤井 昼食休憩明けに▲7七桂と跳ねられた局面がすでに自信のないような気がしました。もう少し工夫が必要だった気がします。

―――午後の戦いは、ご自身ではあまり手ごたえのない展開になってしまったのでしょうか。

藤井 △3三金型の薄さが出る展開なってしまったので、失敗しているかなと思いました。

―――60手目に残り少ない時間で△6六飛と飛車を切りました。そのあたりの成算はどのように感じていましたか。

藤井 本譜は▲2四歩の突き捨てがぴったりのタイミングではっきり負けにしてしまったかと思います。基本的に苦しいと思っていましたが、違う勝負手を掘り下げるべきだったかもしれません。

―――タイトル戦の連勝が16で止まりました。ご自身ではどのように感じていますか。

藤井 仕方ないかなと思っています。

―――今後の抱負についてお願いします。

藤井 今後も名人戦含めて対局が続くことになるので、いいコンディションで対局に臨めるようにしたいと思います。

Dsc_1639 (インタビュー後、両対局者は大盤解説会場に向かった)

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藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第2局は、18時20分に87手で伊藤七段の勝ちとなりました。秒読みの攻防の中で伊藤七段が藤井叡王の玉を詰ましました。消費時間は▲伊藤4時間0分、△藤井4時間0分。
本局の結果、五番勝負は両者1勝1敗になりました。第3局は5月2日に名古屋市「名古屋東急ホテル」で指されます。

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図は75手目▲4四銀の局面。少し前に両者秒読みに入っています。
常務理事として現地を訪れている西尾明七段は、▲4四銀に代えて▲4四歩で先手勝ちだったのではないかといいます。▲4四歩に△5二玉▲3四馬△6二玉▲7四桂と進むと後手玉は詰み筋でした。
実戦は▲4四銀に△5二玉▲3四馬△5一玉と引いた形は後手玉が詰みませんが、伊藤七段は▲3五馬と桂を取って△5七飛成以下の先手玉の詰めろを解除しました。どちらが勝ちか、秒読みで判断が難しい終盤戦です。

Dsc_0905 (旅館内はさまざまなものが展示されている。その中の一つ)

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図は63手目▲2四歩の局面。8七のと金を取る前の利かしです。△2四同歩と取らせることで、後の▲2四飛から▲3四飛や、図から△2四同歩▲8七金に△4五銀▲同銀△2八角成▲3四銀(参考図)と進んだ場合に、2三に駒を打てるため先手は後手玉を攻めやすくなります。▲2四歩の利かしが、△4五銀からの直線的な攻め合いの牽制にもなるわけです。
藤井叡王は図から△2四同歩▲8七金と進んだ局面で持ち時間を使いきって秒読みに入り、△4五銀▲同銀に△同桂としました。



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Dsc_1599 (叡王戦五番勝負の見届け人は特典の一つに、「対局に使用した駒をプレゼント」があり、駒を入れる平箱には両対局者と立会人が揮毫する)
【第9期叡王戦五番勝負「見届け人」を募集します】
https://www.shogi.or.jp/news/2024/03/9_31.html

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図は58手目△3五桂の局面。手数は短いですが、両者の残り時間はすでに30分を切っています。
序盤で先攻したのは藤井叡王。途中で伊藤七段が▲4五桂(49手目)と跳ねて反撃に出ましたが、図の局面は再び後手攻勢を取りつつあります。攻守の流れに関していえば、藤井叡王が押し返しつつあります。
伊藤七段は残り10分まで考えて▲3六馬。指し手だけでなく、今後の方針の方向性も考えていたのかもしれません。藤井叡王も▲3六馬に手を止めて時間を使っています。先手からは▲4一銀△同玉▲6三馬の王手角取りの狙いもあります。

Dsc_1313 (伊藤七段は局面をまとめきれるか)

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図は50手目△6四角の局面。実戦はここから▲3三桂成△同桂▲3七銀上と進んでいます。大盤解説会で伊藤真六段は「控室では▲3七銀上とするなら、▲3三桂成としないで指すと予想していました。ただ、その場合は△4四金とかわされて▲5三桂成と成れないのが気になったのだと思います。本局は1手の比重が大きい将棋です」と話していました。
▲3三桂成は王手をかけつつ駒得する自然な手ですが、損得は微妙なようです。伊藤七段は▲3三桂成に26分考えて、残り50分を切りました。藤井叡王は残り1時間9分です。

Dsc_0975(藤井叡王の後ろ側に飾られているのは、陶芸家の北村隆氏による北前船を描いた九谷焼の作品)

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現地では14時から事前申込制による大盤解説会が開かれています。15時からは立会人の谷川十七世名人がゲスト出演していました。谷川十七世名人は「局面は先手ペースに思います。馬が弱点をカバーしているのが大きい。いないと将来△3六桂と打たれてしまうのが厳しいです。▲7六歩は△同飛▲4五桂△4四金▲5三桂成△6四角で、成桂だけでなく△4六角の銀取りも生じるので、損になる場合もあります」と話していました。

Dsc_1532 (多くの方が来場している)

Dsc_1526 (谷川十七世名人がゲスト出演)

Dsc_1540_2 (村田智穂女流二段)

Dsc_1560 (「叡王戦」の題字は、棋戦設立当時に日本将棋連盟会長だった谷川十七世名人が書いたもの。「現在まで使われているとは思わなかったです」)